UXデザイナーのKatsukiです。
以前、ストーリーテリングの重要性、及びストーリーボードとしてストーリーを可視化する利点を記事にしました。

プロジェクトを推進する役割を持つUXデザイナーにとって、『可視化すること』はプロジェクトをファシリテートするための重要なスキルです。今回はビジネスのデザインという文脈で、今話題のビジネスモデルの図解に挑戦しました。

なぜビジネスモデルの図解に挑戦したか

UXデザイナーである私が第一に期待されているのは、もちろんユーザーにとっての良い体験をデザインすることです。
そしてそのデザインがビジネスにインパクトを与えることもUXデザイナーの重要な役割です。
もはやその時点でUXデザイナーではなく、デザインストラテジストや、ビジネスデザイナーと呼べるのではないか?とも捉えられますが、それらの役割の呼称の議論は今回は割愛します。
更に具体的に言うと、新規事業を立ち上げるプロジェクトに携わるすべてのビジネスパーソンは、そのビジネスを伸ばすキモがどこであるのかを明確に定義し、説明できる必要があります。ビジネスとして注力すべきポイントを明らかにすることは、チームの士気を上げることにもつながります。
そこで役立つのが、ビジネスモデル図解だと私は解釈しました(本来の役割とは少し離れているかもしれません)。ステークホルダーのリレーションを可視化し、お金や価値の動きを繋ぎ合わせることで作成出来るため、絵が苦手でも問題ありません。

ビジネスモデルをまとめる時のポイント

図解にトライした結果、まとめる際の前提条件が非常に大切であると感じました。まとめると以下3点でしょうか。

  1. どの粒度でビジネスモデルをまとめるのかを決めること
  2. 誰が見ても同じ解釈になること
  3. 誰が書いても同じ表現になること

以下の項目では、それぞれ説明していきます。

①どの粒度でビジネスモデルをまとめるのか決める

経営者の目線で世の中のサービスがどう儲かっているのかを理解する目的で、荒い粒度で俯瞰したい場合。また、サービスの運営者としてサービスのコスト構造や、具体的なステークホルダーも踏まえた細かい粒度で俯瞰し、改善に活かすことを目的とする場合。など、目的に応じてアウトプットの具体度が大きく変わってきます。新規参入する市場の競合サービスを分析して新しいアイデアの種としたいのか?自社のチームにとって、フォーカスするポイントの認識を合わせるためなのか?等、目的に合わせた具体度の調整をすると、効果的に図解を活用できるように思います。

②誰が見ても同じ解釈になること

自分の理解のために行う場面もあるかとは思いますが、UXデザイナーの私が図解を行うのは多くの場合チームを推進するためです。正しくチームのメンバーと意識を揃えるために、人によって解釈が異ならないよう図解するのもポイントです。関係性や、会社やユーザーのシェイプを用いて、何を表現しているのか?の定義を図解に明示しておくと、スムーズな理解に繋がるでしょう。

③誰が書いても同じ表現になること

ビジネスモデル、つまりお金と価値の流れは主観に依らず普遍です。誰が書いても同じ流れになるのが、ビジネスモデルです。何の流れをどのように表すのか?を適切に定義し、その枠組みにはめた図解を各人がすることで、更に理解が進むのではと感じました。

おまけ:Sketch Templateを作ってみた

前項の②③から、フォーマット化と再現性が大切だと感じました。次回からスピーディに作成出来るよう、Sketchで必要なコンポーネントをSymbol化したテンプレートを作成しましたので、是非皆さんにもお使い頂けたらと思います。SketchプラグインのRunnerと組み合わせることでサクサク作成できます。

  • サービス
  • 会社
  • ユーザー
  • お金
  • モノ等の要素
  • 説明用吹き出し
  • 矢印(種類がいくつかあります。お金の流れ、価値の流れ、などルールを指定して使い分けて下さい)

以上のコンポーネントをSymbol化したもので成り立っています。逆に言うとこれ以上コンポーネントを増やすと図解した結果かえって複雑になってしまうので、よほどのことがない限り以上の要素のみを使用して作るのがわかりやすいのではないでしょうか?

ファイル置き場

こちらからダウンロードください。

作成例:Prottのビジネスモデル

例として、Goodpatchが提供するプロトタイピングツールのProttのビジネスモデルを図解してみました。ユーザーが手書きのワイヤーフレームや、デザインの画像ファイルをアップロードし、遷移を付けることでプロトタイピングが可能になるサービスです。チームメンバーへの共有の際や、上長への提案、ユーザビリティテストなどを高速で行い、コラボレーションを加速させます。受け渡しされるProttの価値を緑の丸で表しています。また、お金の流れは、お金アイコンで表現しました。矢印にも二種類用意し、丸付き矢印がお金の流れ、丸なしの矢印が価値の流れになっています。
個人契約のみならず、法人での契約も存在するため、そちらの二点を明確に分けて定義しました。
コストとしては、人件費等もありますが、ステークホルダーとのリレーションを明らかにするための図解として、インフラコストを載せました。

さいごに

UXデザイナーとしてプロジェクトを推進し、サービスやビジネスをデザインするためには、どこにフォーカスするとビジネスを成長させられるか明らかにすることが大切です。ビジネス構造を可視化して、理解することが、ビジネスモデル図解に挑戦するきっかけとなりましたが、実際のところ、図解の用途はかなり応用編のように感じました。

新規事業を立ち上げる際は、ビジネスモデルを『理解』しているだけではなく、『0から作り上げる』ことが必要とされます。
そこで、まずは既存のビジネスモデルにどんな形があるのか。どのように価値が流れているのかを知り、理解を深めた上で新規ビジネスを考えてみると、初めてビジネスモデル図解が応用出来るのではないでしょうか。どのような新規事業にも同じことが言えますが、既存の競合がどんなビジネスモデルで、どんな独自価値を持っているのか?を可視化したインプットを大量にするのが良いスタートだと言えるでしょう。
ビジネスモデルの図解を初心者が始める際には、先述の『理解』することから始めることが、ビジネスというお金と価値の流れを理解する礎となるので、私も定期的に様々なビジネスモデルを図解してみます。

今回、ビジネスの基本的な構造を理解するために図解を用いたように、思考をまとめるためのツールとして、図解はとても役に立ちます。以下の記事では、そんな思考ツールとしての図の書き方、使い方をご紹介しています。

改めてになりますが、ビジネスモデル図解は、可視化することが目的になってしまわないように、アウトプットをどう活用するかまで考えると、価値のある図解になるはずです。

是非、挑戦してみてください!(Templateも使って頂けると嬉しいです!)

参考文献

ビジネスモデル図解をするにあたり、チャーリーさんの記事を参考にさせていただきました。ありがとうございます!

2017年後半に感動したビジネスモデルまとめ10個 #ビジネスモデル図解シリーズ
大人気「ビジネスモデル図解シリーズ」チャーリーさん直伝、仕事に役立つクリエイティブ図解術