オンボーディングをデザインするときのトレンド7つ
こんにちは!Goodpatchのゆきです。皆さんはサービスのオンボーディングについて考えたことはありますか?オンボーディングとは、新規ユーザーをサービスに適応させるプロセスです。今回はオンボーディングをデザインするときのトレンドについて書かれた、intercomの新規ユーザーのオンボーディングは想像以上に難しいという記事を翻訳して紹介します。
目次
新規ユーザーのオンボーディングは想像以上に難しい
どんなサービスについても発展するか衰退するかはサインアップ直後に何が起こるかで決まります。新規ユーザーの中にはようこそと出迎えてくれて、案内をしてくれることを期待している人もいれば、早くどいてくれ、自分で探検したいんだ!という意思のある人もいるでしょう。アクティブユーザーが1000万から1億人いるような人気サイトになると直面するのは、様々なユーザーがいることで期待が幅広くなってしまうという問題です。さらに、ユーザーは成功する為に必ずしも作り手の言う通りにしたいと思っているわけではありません。アカウント作成、ユーザー教育、データ収集などの必要なステップと手間について考え、オンボーディングでのユーザエクスペリエンスのバランスを整えることで大掛かりな作業にならないように工夫します。この記事では、効果的なオンボーディングをデザインするときの7つのトレンドを紹介します。
1. ソーシャルログイン
ソーシャルログインを使って、ユーザーは既存のFacebook、Twitter、またはGoogleのアカウントからワンクリックで新規登録をすることができます。
Janrainが行った顧客調査によると、ワンクリックでのサインアップやサインインを使えば「アカウント疲れ」に対処することができます。「ソーシャルログイン」の価値という2013年に行われた調査から、ログイン情報を忘れた92%の人がそのままWebサイトを去った経験があることが分かりました。口コミで人気を獲得することを目指しているのであれば、ソーシャルログインを取り入れることは必須ではないでしょうか。ソーシャルログインを取り入れることで、月間ユニークユーザーと月間アクティブユーザーは増え、リピーターは自らシェアをするようになるでしょう。
さらに、ソーシャルログインを使うことでユーザーのコンタクト情報にアクセスすることができるようになります。調査を受けた過半数(52%)がソーシャルログインを通してより良い、個人に合わせたオンラインエクスペリエンスを体験することができるという考えを持っていました。ソーシャルプロフィール付きのアカウントを作成できるということはネットワーク効果を生み、ユーザー数獲得と収益成長率の向上に繋がると考えられます。同じ調査によると、78%の人はソーシャルネットワークで書かれている情報からWebサイトに飛んだ経験があると答え、72%の人がオンラインで友達がオススメしているプロダクトは買おうか検討すると答えました。
Quora、Pinterest、Vimeoといった人気サイトではソーシャルログインをオプションとして設けています。平行してメールアドレスとパスワードからも登録できるような仕組みになっています。
ソーシャルログインを提供しているGigyaによると、Facebook(52%)、Google(24%)、そしてYahoo(17%)が選ばれているトップ3です。しかし、どれを選択するべきかは狙っているマーケットによると言われています。
補足:この円グラフはマーケット別に選ばれているソーシャルログイン方法を表しています。左から、消費者ブランド、旅行/ホスピタリティ、教育/非営利の順番です。
2. 必須のチュートリアル
Nir Eyalは、成功しているアプリは全て「願望創出エンジン」という達成すればする程、ユーザー自らが「引き金」を引くようになる習慣的な経験を提供していると説明しています。この願望創出エンジンを達成することでユーザーが習慣づけられ、リピーターになってくれるのならば、できる限り早く達成させたいと思うでしょう。
最も分かりやすい例として、TO-DOアプリが挙げられます。チェックリストのサンプルをユーザーに提示し、達成できたかのようにチェックを入れさせることで習慣づけるきっかけを作ります。もっと複雑な例として、Pinterestはユーザーに面白いと思った画像をピンさせることを願望創出エンジンとしています。
Pinterestのチュートリアルではユーザーが検索をして、1つ目のピンを立てるところまでガイドします。この目的はピンを立てるということを達成した感覚をユーザーに味わってもらうことで、願望創出エンジンのきっかけを作り、自らピンを立て続けるようにすることです。教育の分野では、スキャフォールディングとして知られていて、生徒が単独で達成することができないタスクをサポートします。
さらに大切なのは、Pinterestがピンを指すこと自体のコンセプトについてきちんと説明しているところです。ユーザーが画像をピンすることに成功したとしても、大元のコンセプトを理解していないと戻ってこないリスクが高まります。Pinterestのような新しくてユニークなコンセプトを持っているアプリケーションにとっては、コンセプトを理解するまでユーザーを手放さないようにすることが大切なのです。この理由でPinterestは、ユーザーを自由にさせるのはチュートリアルを完了してからにしているのではないでしょうか。
3. ゴールまでの分かりやすい道のり
ユーザーに分かりやすく構成されたステップを示すことで離脱を防ぎます。自分が達成しないといけないステップ数を把握できていれば、ユーザーがプロセスを達成する可能性が高まります。何も確定していない、説明がない状況で待つ時間は実際よりも長く感じられるので、ここで透明性を示すことで、ユーザーが忍耐強くなります。
Quora、LinkedIn、そしてFacebookはステップを番号で表示していて、ユーザーが現在いるステップを示す工夫をしています。
4. 早い段階でユーザに価値を示す
新規ユーザをアクティブユーザに変えるためには、アプリケーションの価値を感じることができる体験を早い段階でさせることが必要です。似たようなサービスに乗り換えるユーザの割合は、サインアップと利用価値の距離に比例します。この為、人気サイトはユーザー存続率のKPI(重要業績評価指標)となるステップについてフォーカスしているのです。このKPIにフォーカスすることで、プロダクトからユーザーが価値をすぐに見出せるようなオンボーディングエクスペリエンスがデザインされるようになり、ユーザーが使い続けてくれる可能性が高まります。
TwitterはKPIを元にした、新規ユーザーに価値を示すためのオンボーディングプロセスを取り入れている良い例です。Twitterでは、ユーザーが他の人をフォローするかしないかというのはユーザー存続率の指標となります。その為、Twitterを使い始める前に最低でも10人をフォローすることが指定されています。新規ユーザーには人気のツイッタープロフィールが提示され、その中から5人フォローさせています。その次に、トピックから選んだ5つをフォローさせています。興味に沿った人やトピックをフォローしている新規ユーザーは、Twitterを使い続ける可能性が高いことから、Twitterはオンボーディングの段階からフォローするように誘導しているのです。
Facebookは友達と繋がるためのサービスであり、こういった繋がりを作ることがユーザーにとってのFacebookの価値です。これは「友達は今何をしているんだろう?」という問いに対して、すぐに答えを知りたいという願望を満たすための願望創出エンジンです。Facebookのオンボーディングプロセスでは、この価値を示すためのステップを最初と真ん中の位置に置いています。簡単に言ってしまえば、友達がいるユーザーは依存度が高く、リピーターになりやすく、Facebookの広告収入を増やしてくれる存在でしょう。
LinkedInが最近フォーカスしているのはコンテンツシェアの機能です。新規ユーザーにこの機能を使ってもらうために、オンボードの段階で取り入れる工夫をしています。LinkedInでは、Twitterと同じように人気のプロフィールや影響力のある人をフォローするように誘導します。オンボーディングのステップに取り入れていることから、LinkedInはコンテンツシェアが将来的な成長に繋がると認識していることが分かります。
Dropboxのオンボーディングでは、新規ユーザーにDropbox同期ソフトウェアをインストールするように誘導しています。Dropboxにとっては、ユーザーにアカウントを作ってもらうことよりも、同期ソフトウェアをインストールしてもらうことの方が優先度が高いのです。Dropboxはウェブアプリからも使うことができますが、最も便利なのはパソコンとクラウド間でファイルの同期が自動的に行われるところです。Dropboxはインストールが完了し、新しくアカウントが作成されるまでプロダクトのツアーのことは気にしません。新規ユーザーの中でソフトウェアのインストールに失敗する人は、Dropboxの便利さを最大限味わうことができないからです。インストールしなければ、アップロードするファイル数と使用する容量は少なくなり、容量を追加するための課金をする可能性は低くなります。Dropboxはユーザーを動かし収益成長に繋げるため、インストールに重点を置いているのです。
5. 進行型プロファイリング
アカウント作成時の手間を省くことでオンボーディングをさらに成功させることができます。実現するためにJanrainが提案するのは、ユーザーが徐々にプロフィールを作れるようにすることです。登録の時には、ユーザーの本当に必要な情報だけを集めるようにします。バランスが重要で、新規ユーザーに情報を求めすぎるとプロセスを完了させずに離脱してしまうこともあるでしょう。けれど少ない情報からでは、ユーザーがプロダクトの魅力を見出すのに必要な価値が提供できずに他の類似サービスに移ってしまうことが考えられます。丁度いい分量の質問をユーザーにすることが必要であり、そうすることでユーザーがそのプロダクトに残ってくれる可能性が高まります。
丁度いいというのは必ずしも最も完成度の高い経験をするために必要な度合いという意味ではありません。LinkedIn、Facebook、Tumblerがプロフィールを徐々に作っていけるようにしているところからも、これが戦略的に行われていることが分かります。
LinkedInはプロフィールの強さを示すことで、進行型プロファイリングを促しています。ユーザープロフィールには強さのレートが表示され、「プロフィールを強化しましょう」と行動を促しています。このCTA(Call to Action)をクリックすることで、ユーザーはオンボーディングの段階で途中まで記入していたプロフィールの続きを記入して完成させることができるようになっています。ステップごとに記入していくことができるので、ユーザーは徐々にプロフィールを完成させていくことができます。ステップを達成する度にプロフィールの強さがレートとして表示され、ユーザーは達成感を得ることができます。
6. アップグレードの機会を設ける
新規ユーザーは積極的な姿勢のある人たちです。これはオンボーディングが無料ユーザーを課金ユーザーに変化させるチャンスであることを意味します。ユーザーがアカウントを作成してソフトウェアをインストールするのに時間を掛けることは、ユーザーがそのツールを通して何かのメリットがあると考えているという証です。無料プランを提供しているDropboxやVimeoといった人気サイトがオンボーディング中にアップグレードの機会を設けていることにも頷けます。
既に述べた通り、Dropboxはオンボーディングで新規ユーザーに同期ソフトウェアをインストールしてもらうことに重点を置いています。Dropboxのユーザーは、パソコンとクラウド間でデータの同期が自動で行われるところに最大限の価値を見い出すことができるのです。Dropboxにとっては、データの同期を行うことができるユーザが特に大切なのでしょう。データの同期を行うということは、容量の上限に達する可能性が高まり、有料アカウントにアップグレードする可能性が高まります。
面白いことに、このページではあまり強くCTAをしていません。これは不思議ですが、2GBのストーレージは少ない容量だと理解していない人でも、このアップグレード画面を見て推測できるのではないでしょうか。
Dropboxのようなシンプルなサービスであれば、アップグレードするメリットを説明するには3種類の箱の絵を用意すれば充分かもしれません。下記の画像から分かるように、Vimeoはもう少し説明を加えています。ただ、背景にある動機は同じで、ユーザーが積極的な間に課金ユーザーに変えるためです。
7. 自動登録
アプリケーションを使う前に、登録が必要なかったらどうでしょうか?自動登録を信じることはできますか?珍しいケースですが、100%自動でアカウントを作ることができる方法をTripitとSquare Cashは使っています。
TripItは旅行プランをまとめた旅行計画表を作ることができるサービスです。ユーザーがしないといけないのは、旅行情報が記載されているメールをplans@tripit.comに転送することだけです。このメールの情報を元に、TripItは自動でユーザーのアカウントとオンライン旅行計画書を作り、ログイン情報が記載された確認メールを返します。
自動登録を疑う人に向けても、TripItは一般的なメールアドレスとパスワードで登録する方法を用意しています。
Square Cashについては、使う前、使っている間、使った後のどの段階にもアカウント登録は存在しません。ユーザーがこのサービスを利用するには、新規メールの宛先に送信したい相手のメールアドレスを指定してから、CCにcash@square.comを加え、件名に「$」と金額、本文にメッセージを記入します。
送信すると、Squareはユーザーにリンクを返信します。そこに支払い先となるカード情報を記入する仕組みです。完了してから、受け取る側にも同じようにリンクが届くようになっています。こうすることでSquare Cashは2つのアカウントの間のやりとりを無料で実現しています。
しかし、メールを通してお金のやりとりができてしまうことに対してセキュリティを保つことは乗り越えないといけないハードルです。お金のこととなると、ログインの時にパスワードが必要な方がユーザーは安心感を得られるのかもしれません。
ユーザをオンボードさせる正しい方法
サイトのオンボーディングに最適な方法は、ビジネスモデルと以下の問いに対する答えによると言えます。
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- ユーザーに最高のエクスペリエンスを提供するためには、どのような情報が必要ですか?
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- ステップを完了させるためにユーザーに何をしてもらいますか?
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- オンボードプロセスに手間を付加することのコストとメリットは何ですか?ステップを完了してもらうためにユーザーをどう動かしますか?
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- ユーザーのライフサイクルの中で、オンボーディングが完了されるべきタイミングはいつですか?
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- 会社にとっての利益を生むために、ユーザーはどのようなアクションを取る必要がありますか?
これらの問いに対する答えにたどり着くには、時間と経験が必要です。この記事の中で紹介した人気サイトの例から、とっかかりのヒントを見つけて貰えたら幸いです。効果的なオンボーディングエクスペリエンスを作るには、何が必要ですか?
現在使われているのオンボーディング方法について、どう思いますか?
記事の翻訳は以上です。いかがでしたでしょうか?オンボーディングのトレンドについて理解できると、今度は様々なサービスが取り入れているプロセスについて気になると思います。このサイトにもオンボーディングの例がたくさん載っているので、ぜひ参考にしてみてください!