「やるべき業務に集中できるようになった」ナビタイムジャパン開発チームの認識のズレを埋めたコミュニケーション術
乗換案内サービスで知られる株式会社ナビタイムジャパンさんが開発・提供されているヘルスケアサービス「ウォーキングNAVITIME-ALKOO-」の、具体的な開発プロセスやProttの活用方法について伺いました。
プロジェクトを効率よく進行できるコミュニケーションのポイントやツールの役割について教えていただきました。
ウォーキングアプリPJ
植竹広佑さん
デザイン部
高橋将太さん
ウォーキングアプリPJ
浅井徹さん
8名でのスクラム開発について
──開発されているサービスについて教えてください。
高橋 ウォーキングNAVITIME-ALKOO-はウォーキングをより楽しんでもらうためのアプリで、歩いた道の情報や歩数計、おすすめコースの紹介など歩くことに関する機能を搭載しています。
ユーザーに健康になって欲しいというのがサービスの目的です。ストイックに歩くことを促すのではなく、楽しくがんばらずに健康になれる状態を目指していますね。
ウォーキングNAVITIME-ALKOO- | 歩くことが楽しくなる iPhone用アプリ
──開発チームの構成について教えてください。
高橋 全部で8名います。iOSデベロッパー2人とサーバーエンジニア2名(1名は他PJ兼任)、Androidエンジニア・QAが1人ずつ、デザイナーの私とPMとして植竹がいます。
──ローンチ当時の開発体制はどのような形でしたか?
植竹 それぞれ2,3個の案件を持ちつつ、ウォーキングNAVITIMEの開発にも携わっていました。2014年10月にiOSアプリを、その後にAndroidもローンチしています。今は独立したプロジェクトとして開発を進めています。
──機能追加や改変などを起案して、実装するまでの流れを教えてください。
高橋 デザイナーもエンジニアもPMも、職種を越えてそれぞれがアイデアを出しあっていますね。出たアイデアをPMである植竹が優先度をつけ、デザイン・実装へと動きます。私が素案を出すことが多く、Prottで作ったモックアップをベースにチームで話し合い、仕様書を作成するのが流れです。
──植竹さんは開発の優先度をどのようにつけられているのでしょうか?
植竹 ユーザーに届けたい価値を重視しますね。スクラム開発なので、状況によって常に優先度を見直しています。すぐ取り掛かれ、かつ重要なものについては早めに開発します。
Sketch・Prott・Zeplinを組み合わせてプロセスを効率化!
──Prottを使う前のモックアップ作成の方法と、当時大変だったことはありますか?
高橋 当時は手描きやPhotoshopで作り始め、そのイメージを共有しながら対面でチームに共有していました。指差しで「ここからここに画面遷移します」といった形だったんです。
植竹 大きな紙に画面を印刷して、矢印をたくさん載せて画面遷移を確認していましたね。
──Prott導入のきっかけはなんでしたか?
高橋 あるデザイナーがどこかからProttの情報を見つけてきて、まずは使ってみようという話になって試したのがきっかけです。
──具体的にどのようにProttを使っていますか?
高橋 最近はSketchでモックアップの作成をして、ある程度できあがったものをProttに入れてチームに共有します。その後、デザイン指示書としてSketchからZeplinに書き出し、それをベースにエンジニアが実装を進めます。パーツの書き出しはこれまでデザイナーがやっていた作業だったので、エンジニアがZeplinからダウンロードするだけになったことで作業効率が上がりました。
デザイン修正などはProttのコメント機能で伝えています。
──Prottを使って解決された課題はありますか?
浅井 スピードが上がり、かつ実装にあたりイメージが鮮明になったことですね。今までは社内のサーバーから必要なファイルを取り出して使うフローだったのですが、時間がかかっていました。
あとは、これまでの画面は一枚絵に過ぎなかったので、どういう遷移をするかイメージがつかなかったんです。プッシュの動きひとつとっても、横から出るのかモーダルで立ち上がってくるのか確認しないと実装進められないですよね。その確認をProttで素早くできるようになったのは大きかったです。
植竹 PMという立場から見ていると、iOSとAndroidのエンジニア同士の認識の齟齬が減ったなと感じています。やはり、OSの違いによる体験の齟齬が生まれてしまうと統一感がなくなってしまいますからね。口頭ベースだったものがProttでの確認に変わったのが大きな要因だと思います。
あとは良い意味で、私が開発の細かいところまで常に見る必要がなくなったことです。エンジニア・デザイナー間のコミュニケーションがスムーズになったので、それ以外の業務に集中できる時間が増えました。
素早いコミュニケーションと情報共有がチームを加速させる
──開発を始めてから今に至るまで、プロセスが大きく変わった出来事はありましたか?
高橋 1つはProttの導入で、共通認識を取るまでのスピードが明らかに早くなりました。開発の体制をスクラムにしたところも大きく、リリースの頻度が上がったのを実感しています。
あとは、私がフロアを移動してプロジェクトメンバーと同じ空間に移動したことです。これまでデザイナーはデザイン部にひとかたまりだったので、プロジェクトメンバーからは遠いところにいました。移動したことで断然コミュニケーションの流量が増えたので、進めやすくなりましたね。
植竹 以前から高橋には同じフロアでやろうと伝えていました。高橋、植竹、浅井とL字に座っていて、全員振り向けば話しかけられる距離に座っているんですよ。作りたいもののイメージはあってもそれをどう実現するか、どう見せるかはデザイナー・エンジニアと話し合いたかったんです。それが週1回の定例だと遅くて、近くにいてすぐに共有できるのは本当にやりやすくなりました。
──新しいツールを取り入れたりプロセスを変えたりすると、どうしても馴染まないこともあると思います。これだけ新しいことにチャレンジされて、それが定着している理由はなんでしょうか?
植竹 おそらくですが、デザイン部の立ち位置が理由だと思います。エンジニアの場合はプロジェクトに専属となるため、ツール・プロセスなどの意識がプロジェクトに最適化する方向に働きます。一方でデザイナーの場合は、デザイン部に所属しつつプロジェクトに参画しているので、プロジェクトへの最適化だけでなく会社組織全体にどう横展開・一般化する動きが生まれるため、プロジェクトを越えてツール・プロセスを浸透させようという流れになります。Prottの場合もデザイン部からの共有からはじまってプロジェクトごとに最適化されてることもあり、組織的な特徴が理由なのかもしれません。
──社内での情報共有がさかんにされているのですね。具体的にどのような共有のされ方があるのでしょうか?
浅井 エンジニアの間では技術に関する定例会が開かれていたり、Slackチャンネルでの情報共有がさかんに行われていたりします。
植竹 ほぼ毎週、ナビタイムカレッジという社内勉強会のような取り組みがあります。平均40名くらい参加していて、職種を越えて社内の誰でも参加できるものになっています。
ウォーキングNAVITIME自体も比較的新しいプロジェクトですし、新しいことに抵抗が少ないメンバーが集まっているので、とりあえずやってみようかという雰囲気はあります。
高橋 最近はデザイン部としてのフィロソフィーを決めるためのアクションが生まれています。CI・VI、ビジネスなどテーマを設けてチームで分かれてディスカッションを行い、それをデザイン部全体で共有し合うことでデザイン部としてのインプットやアウトプット機会につながっています。
デザイナーも、デザイン部だけでなく開発側とも話すことが多いですね。共有の場はたくさんあります。
植竹 昔は開発のためにデザイン部がデザインを納品する、といった社内外注のような時期もあったんです。今はそういう状態が全く起こっておらず、チーム全体でサービスを一緒に作っています。多くの人の試行錯誤があっての今なんだと感じていますね。
健康寿命を伸ばすサービスへ
──新機能がリリースされたそうですね!
植竹 「ウォーキングポイント」という新機能をリリースしました。
毎日の目標歩数か10,000歩を突破するとポイントが付与され、貯まったポイントに応じてお宝(豪華賞品)が当たるチャンスを得られる機能です。抽選で当たったお宝はコンビニエンスストアで実物と引き換えることができ、日々楽しみながら歩く体験を感じてもらえたらと思っています。
『ウォーキングNAVITIME-ALKOO-』にて、「ウォーキングポイント」を提供開始|ナビタイムジャパン
──Prottへのご要望はありますか?
高橋 新機能開発にあたり、アニメーションを今まで以上に活用したのですが、Prottでアニメーションを気軽に使えたらいいと思いました。
(Prottチームより補足:GIFとタイムトランジション機能を使えばアニメーションのようなものをPrott上でも表現できます、詳しくは下記をご覧ください。タイムトランジション機能をリリースしました🎉)
──ありがとうございます。では最後に、サービスが目指すビジョンを教えてください!
高橋 ゆくゆくはナビタイムジャパン発のヘルスケアサービスとして、人々の健康寿命を伸ばしたいという想いがあります。現状はまだインパクトを起こせていない状況なので、もっと多くの方々に使っていただき、社会的に影響を強められるようなサービスにしていきます。
──コミュニケーションが活発で、オープンな開発現場がサービスを支えているのだと実感しました。ナビタイムジャパンさん、ありがとうございました!