SlowNews
- Client
- スローニュース株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design
- Date
- Client
- スローニュース株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design
- Date
Overview
スローニュース株式会社が運営する「SlowNews」は、調査報道やノンフィクションを中心としたサブスクリプション型のウェブサービスです。本が好きな方や、「信頼できる良質な情報を集めたい方」という方におすすめのコンテンツが、月額制の読み放題で楽しめます。
フルリモートデザインチームの Goodpatch Anywhere(以下、Anywhere)は、SlowNewsのサービス立ち上げ前である2020年5月よりプロジェクトに参画し、ブランディングとサービスサイトの設計をお手伝いしました。SlowNewsとAnywhereはどのように併走してサービスを作っていったのか。そのプロセスをご紹介します。
デザイナー不在の開発チームに並走する
当時のSlowNewsは、少人数でサービス立ち上げをされている最中。デザイナーが不在の状況でした。プロダクトマネージャーの武市さんは、「プロダクトをゼロから理解し、並走する」ようなデザインチームを探していたそうです。
フルリモートの環境下で、どのようにディスカッションし、プロジェクトを進めていくのか不思議だったものの、結果的に大成功でした。新型コロナウイルスの流行により緊急事態宣言が発令され、オフラインでの集まりが難しくなったときも、何も問題なかったんです。海外から参加するメンバーもいて、リモートだからこそ、場所を選ばずにいいデザイナーと仕事ができるんだと実感しました。プロジェクトの期間は最初から最後までコロナ禍でしたが、学び多い時間を過ごさせていただきました。
「調査報道やノンフィクションを通じて社会問題にフォーカスする」理念の具体化
プロジェクト開始前、SlowNewsには大きく2つの課題がありました。
・サービスの「狙い」や「実現したいこと」を具体化できてない
・「どんなユーザーがSlowNewsを使うのか」が仮説にとどまっている
それぞれの課題に対する打ち手を、以下に紹介します。
発散と収束を見計らいつつサービスを具体化
これまでにAnywhereが携わってきたプロジェクトでは、Anywhereメンバーからチームの議論を呼び起こすようなアクションから始まるケースがほとんどでした。しかし、今回はすでに議論が白熱していたため、時間内に着地点を見つけ、収束させるようなファシリテーションを意識し、まとめ役に徹しました。振り返って、大堀はこう話します。
SlowNewsのメンバーは、凄腕のエンジニアや出版社の元編集者、メディア関係者の方など、経験と知識が豊富な方々の集まりでした。武市さんも日経新聞社でウェブサービスの立ち上げに関わった方です。皆さんの熱量と経験値をうまく活かすことができれば、絶対に良いサービスができると確信しました。「ネットニュースに代表されるような即時性の高いゴシップ的なニュースが多いなかで、地に足をつけて取材をし、知り得なかったような社会課題を明らかにしていく」という理念にも、深く共感しました。
書籍でもウェブ記事でもない、サービスの不明確な立ち位置をどう表現していくのか。まずは一緒に「誰のために作るのか」を知ることから始まりました。
グループインタビューでわかった「ペルソナの不在」
SlowNewsのペルソナを明確にするため、グループインタビューとユーザビリティテストを2回ずつ実施しました。当初は「ノンフィクションが好きでもっと読みたい人」をペルソナとしていたものの、初回のグループインタビューで大きな気づきが得られます。読書体験について掘り下げた当インタビューでは、「ノンフィクションに特化して読書をする人」という想定ペルソナが、そもそも見つからなかったのです。実際にノンフィクションを楽しんでいた人たちは、複数のサブスクリプションサービスに加入していたり、幅広い分野にわたって読書をしているような「好奇心の強い人々」でした。これらを踏まえ、ノンフィクションに限定しないサービスの打ち出し方へ、方針を転換することになりました。
2回目のグループインタビューでは、幅広い分野の読書をしている層の方々にプロトタイプを操作していただきながら価値検証を行いました。無料登録に進むまでの障壁や、サービスのわかりづらさといった課題が明確になりました。
武市さんはグループインタビューを振り返り、「意見を聞くことの大切さ」について語ってくれました。
ユーザーがどんな人たちなのかを把握していないところからスタートしたので、こういった基礎固めは、ありがたかったです。ユーザーインタビューは大変な作業ですし、自分たちだけでは取り組めなかったため、巻き取ってくださり助かりました。タイトなスケジュールのなかでも、ステップを省略せずにすんだので、その後の迷いがありませんでした。常に俯瞰できる状況を作っていただいたおかげで、「ユーザーの意見を聞く」という視点は、今でもチームに根づいています。
「熱心なユーザーに読んでもらえるサービス」が実現
ペルソナが決まってからは、サービスのトンマナを議論し、コンテンツの見せ方からリーダー(Reader)まであらゆるデザインを進めます。コンテンツが好きで紙の本も普段から楽しんでいるユーザーを取りこぼさないためにも、リーダーは縦書きに対応することが決まっていました。また、綺麗な縦書きがブラウザで実装され、一冊単位ではないコンテンツの一覧を見た際に、コンテンツの楽しみ方が変わるんだなと直感しました。
大堀は「コンテンツの質がいい」ことがポイントだったと言います。
正直、最初に「読み放題のサービス」だと聞いたときには、競合が多い分野だろうなと思っていました。でも実際にコンテンツをみると「これなら勝てそうだ」と確信できるくらい、引き込まれる作品が多かったんです。コンテンツサイトは、UI/UXがどんなによくても、中身が面白くないとファンがつきません。熱心なユーザーに読んでいただけているのは、元々のコンテンツが持つ質のよさも大きく関わっています。
サービスを通じて、新しい本の楽しみ方を提唱したい
現在も人気を伸ばし続けるSlowNewsですが、今後はオリジナルコンテンツやレコメンド機能も充実させていくそうです。その理由には、「もっと読書を自由にしたい」という武市さんの想いがありました。
みんな「本は最初から読んで、最後まで読み切らなきゃいけない」という先入観があるんです。私たちのサービスはウェブなので、本の途中から読むのも、途中で離脱するのも、何冊もつまみ食いするのも、自由に楽しんでいただきたいと思っています。もっと気楽に本を楽しんでほしいので、私たちもそれをいまの課題として、改善していきます。
最後に武市さんに、Anywhereとのプロジェクトを振り返っていただきました。
Anywhereとのプロジェクトを通して「デザイン会社がここまでしてくれるの?」という驚きや発見がたくさんありました。現在も、アイデアをたくさん出し合ったり、インプット・アウトプットのバランス感をチームで意識したりできています。グループディスカッションなど、周りの意見を聞くことも継続していきたいです。