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Client
ランサーズ株式会社
Expertise
Digital Product & Service Design
Date

Overview

「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」をビジョンに掲げるランサーズ株式会社による「Lancers Enterprise」は、企業の社外人材活用を促進するサービスです。 社外人材データを企業が一元管理でき、依頼から契約、パフォーマンスの可視化などをワンストップで提供することでチームのパフォーマンス向上をサポートします。Goodpatchは「Lancers Enterprise」におけるコアの価値定義から事業ビジョン策定、α版検証、β版のUIデザインなどをデザインパートナーとしてお手伝いさせていただきました。

ビジネスとデザインの捉え方

今回、すでに大きなプラットフォームになっているLancersの新規事業を担当するにあたり、新規事業の視野だけで考えるのでは不十分だと思いました。
そのため、既存事業の理解だけではなく、それらの事業を生んだ企業のレイヤーまで深く入り込んだ企業理解をして、この新規事業で求められていることや、Lancersという会社がこれから実現しようとしていることは何かを理解し、既存事業の抱えている課題も同時に解決できるようなことができないか考え抜きました。
そして、それを考える際に足がかりになる考え方や判断のための情報を常に場にアウトプットし続けることによって、当時のプロダクトオーナーであった曽根さんをはじめとしたチームの皆さんとの議論の質や意思決定のスピードを上げることを意識しました。曽根さんはグッドパッチとの仕事で感じたことを次のように語ってくださいました。

「デザイナーはプロジェクトに入らなくても自分たちだけで大丈夫だろう」という発想はビジネスサイドであり得ることです。でも、デザイナーがユーザー体験の根幹から可視化して課題をあぶり出し、ユーザーにどんな価値を提供するのか考えていくことが当たり前だけど大事だなと改めて教えてもらいました。

あとはランサーズの世界観に強く共感してくれて、本当に楽しんでサービスに向き合っていることが伝わってきました。「このままだとむしろ僕らの方がついていけなくなるんじゃないか」ってくらいのプレッシャーがあったことは新鮮な驚きでした。すごくありがたかったのは、常に全体を俯瞰してひとつ後のプロセスまで考慮してくれていたことです。僕がイメージできていない部分に関しても「このあとのプロセスでこうなるから、こうした方がいい」というアドバイスをたくさんいただいたなと思います。

引用:デザインする文化を資産として残す。ランサーズ新規事業「Lancers Enterprise」チームとのパートナーシップ

中長期で持続するサービスへの目線

今回の新規事業の立ち上げにおいて、様々なインプットをしていく中で、どこに向かっていけばいいのかの選択肢が無数にあることがわかりました。そんな抽象度の高い戦略フェーズにおいて、チームとして同じ目的・同じ目線を持つためには、これから自分たちがどこに向かえばいいのかを揃えることが非常に重要です。この目線が揃った状態を作るために、プロジェクト開始から3週間という早いタイミングで事業ビジョンを策定することにしました。

ただ、ランサーズさんには企業として目指す一貫したビジョンがあるため、この事業のビジョンはその企業ビジョンから独立したものにすべきではありません。きちんと企業ビジョンに紐付く形で、この事業が果たす役割を定義し、企業として一貫性のある軸として事業ビジョンを定義しました。事業ビジョンがあることによって、これからこの新規事業が対フリーランサー・対企業・対市場に対してどのようなサービス・プロダクトになるべきかを共通認識にすることができました。

事業ビジョンの作り方については、以下の記事をご参照ください。
企業と事業のビジョンの関連について

曽根さん:最初は「プロダクトビジョンを決めるのがこのタイミングでいいのか」「もっと後でもいいんじゃないか」という意見もありました。でも、ワークショップ中に「競合と比べてこの機能差分が…」という話は全く出ず、一つのチームとして「ランサーや企業にどんな価値を提供したいのか」という問いに向き合う時間になったことが大きな影響を与えたと思います。

神庭さん:ワークショップの最中は「今やるべきなのかな」とも思いましたが、プロジェクトが忙しくなるに連れて、軸が決まっていることの大切さが分かりました。このプロセスを経ていたからこそ意味があるものを作ることに集中できたので、このワークはやってよかったなと思います。 作り手側のエンジニアが、プロジェクトの初期段階から参加することはなかなかありません。でも、参加していなかったら後々開発が山場を迎えた時に、立ち返るものがなく困っていたと思います。

中島さん:僕自身はワークショップに参加したことで、自分の中で「今やってることはビジョンに沿ってるのか?」と常に疑問を持てるようになりました。そう思えるようになった人たちは僕以外にも増えたと思います。新規事業立ち上げフェーズにおいてはスピードも大切ですが、ビジョンに立ち返ることができることが本質だと思うので、参加してよかったです。

引用:デザインする文化を資産として残す。ランサーズ新規事業「Lancers Enterprise」チームとのパートナーシップ

同じモノを見て同じコトに向き合う

今回のプロジェクトでは、これまでにない考え方や概念を扱うシーンが多かったため、ランサーズさんとGoodpatchが1つのチームとして同じコトに向き合うために、インプットした情報や議論の結果出てきた概念をすぐに可視化して場に出し、同じモノを見ながら意見を重ねることを常に意識していました。

概念や体験など無形のものについて話すとき、その議論をしている全員が同じものを頭の中で思い浮かべながら話すことは厳密にはおそらく不可能です。 ですので、ユーザーインタビューや企業インタビューなどから明らかになった体験フロー図や、サービスで扱おうとしている概念図をすぐにアウトプットして、印刷した紙やモニターに映したものを必ず一緒に同じモノを見ながら議論を行うようにしました。

そして、それらの可視化された資料をチーム内でのコミュニケーションツールとして活用していくことによって、それが新規事業チームのメンバーだけではなく、ランサーズさんの社内への共有資料にも活かされていき、結果としてランサーズさん全体を巻き込む共通言語にもなっていきました。

ユーザーの操作学習と運用をサポートするデザイン

BtoBサービスでは、前提としてユーザーのデジタルリテラシーレベルは様々であることを考慮しなければなりません。また、Lancers Enterpriseのようなプロダクトの場合、プロダクトに触れるユーザーの属性も様々であったり、長期的に見ると操作対象となる導入企業の担当ユーザーが変わる場合も少なくありません。

そのため、ユーザーがゴールに辿り着くまでに触れる必要がある要素と機能を適切に整理し、ユーザーが理解しやすいデータ構造や分かりやすいインタラクションを設計することで、導入企業における中長期での運用に耐えられるソフトウェアデザインを実現することができます。

今回は上記を考慮しながら、ユーザーの行動を落とし込んだカスタマージャーニーマップからユーザーのとるべき行動とゴールを整理し、どこで何が達成できるのか・どんなデータに触れるのかなどを構造としてまとめ、プロトタイプのデザインを進めました。 プロトタイプのデザインをベースにランサーズのエンジニアさん達と会話していくことによって、体験構造とデータ構造が適切に整理され、開発にもユーザー体験にも負担なく実現可能なデザインをすることができます。

神庭さん:僕は普段インフラを担当することが多いので、Prottを初めて使って、こんなに簡単に動的なプロトタイプが作れることに驚きました。デザイナーの米永さんと夏音さんが動くものベースで作り込む前に用意してくれたので、API設計するときにもイメージしやすく助かりました。

プロトタイプをベースに会話するプロセスを経て、「今はまだ作り込み過ぎなくていいんじゃないか」と考えることができるようになりました。今回はGoodpatchさんに全プロセス並走していただきましたが、「次はもっとうまくできるな」という実感が持てています。

引用:デザインする文化を資産として残す。ランサーズ新規事業「Lancers Enterprise」チームとのパートナーシップ

拡張性と柔軟性を考えたデザイン

Lancers EnterpriseはBtoBのSaaS型サービスであり、 改善を繰り返して成長し続けるプロダクトになることが前提にあります。だからこそ、UIデザインを考えていく上でも、プロダクト・サービスの成長を阻害しないような拡張性と柔軟性を考慮した構造やデザインシステムを資産として残すことが必要でした。

とはいえ、まだリリース前のプロダクト・サービスにおいて、リリース後の反応や影響を考慮しながら完璧な拡張性を担保することは予測が困難なことも多いため、基本的な設計思想や構造の考え方をデザインに落とし込み、ある程度の変化に耐えられる柔軟性のあるデザインをしていきました。

また、この拡張性と柔軟性を考えるにあたって、国内・海外を問わずあらゆる人材系のサービスのプロダクトデザインを研究し、どこに拡張性や柔軟性を持たせるのかという少し先のプロダクトの可能性を模索しながら耐久性のあるデザインへブラッシュアップしていきました。

デザインパートナーとして共創するチーム

デザイナーが戦略層から関わることの重要性は最近いたるところで話題に上がりますが、今回のケースもまさにそれが活きたプロジェクトでした。 GoodpatchのUIデザイナーは、表層が得意な人、骨格・構造が得意な人とタイプは様々ですが、戦略〜要件での共通認識がチーム全体で取れていれば、それぞれの得意領域で先駆けて自走することが可能であることをこのプロジェクトで証明できました。

実際このプロジェクトでは、UX/サービスデザイナーの國光が戦略〜要件を固め、 構造〜骨格が得意なUIデザイナーの夏音がプロダクトの土台となる情報構造を可視化し、表層が得意なUIデザイナー米永がコアの体験を達成するための表層部分を、と通常順序立てて固めていく工程を同時に走っています。

一見、手戻りのリスクなど効率が悪そうに聞こえますが、新規事業立ち上げにおける良いチームとは、チーム内でのあらゆるアウトプットの総量が多いチームだとGoodpatchは考えています。LancersとGoodpatchのチームメンバー全員がお互いのアウトプットをもとにコミュニケーションし、それを新しいインプットにしながら、色々な観点から事業の解像度をチーム全体で上げていくことが立ち上げの不確実性の高いフェーズにおいてはとても重要です。

そして、デザイナーがこのフェーズにおいて発揮する価値は、いかに早く形にして壊してチームとしての学びを得るというサイクルを回すことに尽きます。このサイクルを多く回すことによって、チームとして多くのことを学習しながら、判断軸を積み重ねていくことができ、プロダクトオーナーの意思決定をサポートすることができます。

このような動き方ができたのも、事業Visionとして掲げていた世界観の解像度が高く、長期視点でのチームの共通認識が取れていたためでした。 Goodpatchでは、LancersとGoodpatchのチームメンバー全員で同じ観点・同じ解像度で事業に向き合い、共創するチームとなることによって、Goodpatchがいなくなった後も受け継がれる資産としてデザインの観点を残すことを大切にしています。

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