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Client
コクヨ株式会社
Expertise
Digital Product & Service Design
Date

Overview

文具・家具の製造やオフィス空間デザインで知られるコクヨ株式会社が、2025年4月に新たな人事領域事業として、組織成長ソリューション「TEAMUS(チームアス)」をリリースしました。既存の組織サーベイや組織開発ソリューションが抱える「現場の共感が得られにくい」という課題に対し、コクヨは「現場のリーダーが自ら使いたくなるポジティブな体験」を追求。グッドパッチはこのプロジェクトの共創パートナーとして、プロダクトのMVP(実用最小限の製品)開発からユーザー体験(UX)設計、UIデザインまでをトータルで支援しました。会社を超えた「一つのチーム」として、組織開発のあり方を再定義したプロジェクトの裏側を紹介します。

Client

コクヨ株式会社

KOKUYO CO.,LTD.
「Campusノート」をはじめとする文具の製造・販売から、ワークスタイルやオフィス空間のデザイン、事務用品の流通まで、人々の「働く・学ぶ・暮らす」を幅広く支える企業です。近年は物理的な製品や空間の提供に留まらず、長期ビジョンのもとで新規事業の創出にも注力。2025年には、自社が培ってきたワークスタイルへの知見を生かし、組織・人材というソフト面にアプローチするHR事業「TEAMUS」を立ち上げ、企業の組織成長を支援するソリューションプロバイダーとしての領域を拡大しています。

Summary

支援前の課題

  • 多くの企業に導入されるエンタープライズ向けプロダクトとして、初期リリースから高い品質と信頼性が求められていた
  • 事業の成功確度を高めるために、限られた期間とリソースの中で「何を優先して開発するか(MVP)」の高度な判断が必要だった
  • 不確実な状況下でも共に最適解を考え、スピーディーに開発・改善を回せる体制構築が必要だった
     

グッドパッチの対応とご支援後の成果

  • 顧客とユーザーの期待を超える体験設計と、高い満足度の獲得
  • 困難な開発要件を乗り越え、当初の事業計画に合わせたスケジュールでのプロダクトローンチを達成
  • 自律的に改善を繰り返すスクラムチームへと成長し、デザインとエンジニアリングがシームレスに連携する体制を構築

働くを支える 未解決な課題へのチャレンジ

コクヨが長年手がけてきたオフィス空間デザインの事業では、オフィスを作った後に目を向けなければ、本当の意味で「オフィスを通じて、働くを支える」とは言えないのではないかという課題を抱えていました。   
   
「お客様の"働く"に潜む、本質的な課題の解決」をテーマに、市場調査やターゲットインタビューなどで価値の発揮が見込める領域を探索する中で、真に「働く」を支えるためには、行為の根本にある人材や組織といった領域に未解決の課題に踏み込む必要があると考えたと話します。

今の組織開発においては、経営や人事が描く理想と、現場の活動との間に、認識や意図のギャップが生じやすい構図があると考えています。結果として、やり方を含め、現場からの共感が得られづらく、組織開発が進みにくい状況にあると考えています。現場の人たちが「これはやるべきだ、やりたい」と感じて、自らサービスを使って取り組みを進め、成果を出し続けられる状態をどう作っていくかをテーマにしています。(コクヨ 尾内 健知さん)

コクヨ グローバルワークプレイス事業本部HRCAソリューション部 グループリーダー/プロダクト開発責任者 尾内 健知さん

プロトタイプによるPoCを実施後、エンタープライズ企業向けのビジネスとしてより洗練されたプロダクトに昇華させるフェーズに移行。エンタープライズ企業が持つ複雑なユーザーニーズを具体的な体験に落とし込むパートナーを探す中で、グッドパッチにお声がけいただきました。

決め手となったのは、最初にお会いしたタイミングで「なぜこの事業をやるんですか?」という問いから入ってくれたことです。今まで関わった経験のあるパートナー企業との違いを感じました。(コクヨ 酒井 希望さん)

コクヨ グローバルワークプレイス事業本部HRCAソリューション部 部長/サービスデザイナー 酒井 希望さん

「理想のチーム」を実現する体験デザイン

コクヨがTEAMUSで目指す体験をデザインするため、さまざまな問いを通じ、理想のチームやよいチームの定義を整理していきました。「どんな価値を届けられるか」という見えないテーマに対しては、抽象と具体を往復によって議論が深められるよう、早い段階で言葉やビジュアルといった見える形にすることに注力しました。

顧客体験価値の議論を行ったバリュープロポジションとエレベーターピッチの一部

「TEAMUSのらしさ」の言語化にも取り組みました。「TEAMUSが人だとしたらどんな性格か?」「どんな口調で語りかけるか?」といったサービス人格(ペルソナ)や世界観を言語化・視覚化するワークショップでは、「理想のチーム」という抽象的な概念を高い解像度のイメージに変換することで機能開発と並行して「情緒的価値」の合意形成を図りました。

TEAMUSの「らしさ」を考えるワークショップの一部

MVP機能を決めるためのユーザーストーリーマッピング

MVPでは成長に向けた動機付けの観点から「サーベイの結果やグラフをユーザーにどう見せるか」に最もこだわりました。事業者側の狙いと人間工学的な要素のバランスが重要となるプロダクト開発において、グッドパッチはユーザー視点のプロフェッショナルとして仕様や機能を厳選。ワイヤーフレームを用いた可視化を素早く繰り返し、UIデザインへと落とし込んでいきました。

実際、MVPを使っていただいた企業の方からは「なんでそこまで分かったんですか」とか「人事としてなんとなく感じていたところが本当に全部言語化されてます」といった言葉をいただいて、すごくありがたかったですし自信になりました。(コクヨ 尾内 健知さん)

不確実性に備えたスピーディな開発体制の構築

コクヨ、グッドパッチ、開発パートナーの3社からなるスクラムチームを組成。グッドパッチはエンジニア10名以上の体制をリードしながら、事業フェーズの変化に合わせた最適な開発プロセスを設計しました。

コクヨ、グッドパッチ、開発パートナーの3社からなるスクラムチーム

ローンチ前は、事業計画に沿った戦略的な開発を行うため、工数とビジネス優先度を可視化した「試算シート」を用いて厳密なスコープ管理を徹底。「要件定義の完了条件」の明文化やデザインシステムの構築により、手戻りを防ぎながら品質とスピードを両立させました。
 
アジャイルな思考へとシフトしたローンチ後は、1週間単位のスプリントで高速に改善を回す体制へ移行。3社合同スクラムチームのバリュー「Tiny Action(早く見せて早く育てる小さく作って見せる)」のもとで、受発注の関係を超えてエンジニアとデザイナーが密に連携し、ユーザーからのフィードバックを即座にプロダクトへ反映し続ける進化する開発チームを確立しています。

各ステークホルダーの業務フローを整理

チームの想いが反映されたプロダクトのリリース

本プロジェクトにおいて最も工夫したのは、サーベイの結果を「評価」ではなく「成長の示唆」として提示する体験設計です。世の中にある多くのサーベイが評価や点数の低さで改善のための行動を示唆するのに対し、TEAMUSではチームの数だけ成長の仕方があり、決まった正解はない、という思想から診断結果に基づく提案も余白を持たせる設計が採用されています。「あなたのチームタイプ」という診断結果は、チームの特徴を自分ごととして捉え次の行動につなげるような体験を目指して生まれた施策の1つです。
 
ローンチ後、「チームという視点は今までになく、こういうのを求めていた」「過去いくつものサービスを試していて、従来のサービスだといい状態のように見えているのに離職が続いている部署があった。TEAMUSを試してみて、今までのサービスではわからなかったことや原因らしき点が明らかになった」という評価をいただくなど、組織開発の第一歩を踏み出しています。
 
また、プロジェクトでグッドパッチとの議論を重ねる中で、建設的な批判や本質的な問いかけなど、社内のカルチャーにも変化が起きています。

今はチームの人数も増えましたが、まだ人数がそれほど多くなかったころ、皆さんと議論していたころの経験がそのまま生きています。これがまさしく、皆さんと作ったカルチャーなんだなと思っていて、チームの黎明期に皆さんと立ち上げができたっていうのは、すごく大きな財産になっているなと感じています。(コクヨ 酒井 希望さん)

まさに「会社は違えど、チームである」って話なのかなと。今、僕らがTEAMUSで目指している「理想のチーム」というのを、社内だけではなく、社外の人も含めてのチームという形で体現していただけている。それは僕らがTEAMUSという事業を進める上でも、いい体験を一緒にできていてありがたいなと思っています。(コクヨ 尾内 健知さん)

今後の展望

最後に、TEAMUSの今後の展望を伺いました。

まだまだ走り始めたばかりではありますが、リリースして初めて分かる期待であったりとか、僕らだからこそやるべきこと、やれることってたくさんあるなと改めて感じているところで、より人事や現場の方々の期待に添えるようなサービスをどんどん創っていきたいと思っています。
 
僕らは「働く全ての人に人生で最高のチーム体験を」という言葉をモットーとして掲げているのですが、僕ら自身がその最高のチーム体験の象徴である必要があると思いますし、その価値を届けていきたいですね。(コクヨ 尾内 健知さん)

コロナ禍を経て「働き方」というものがとても身近になったと思うんですよね。会社から与えられるものではなく、自分でコントロールできるものだという認識になったというか。それに近いことがチームでできたらとても面白いなと思っています。
 
「チーム」という言葉は、みんなが当たり前に使っていますが、まだ会社の部署というか、自分ごとになりにくいものなのだろうなと感じています。それがリーダーだけでなく、メンバーも含めて「どんなチームにしたいんだっけ」「どんな環境で働きたいんだっけ」という意識が、働く人の手元に戻ってくる。TEAMUSを通じて、そんな世界にできたらいいなと考えています。(コクヨ 酒井 希望さん)

Credit

プロデューサー:木下 隆博
プロジェクトマネージャー:田邉 美冬
プロダクトマネージャー:佐久間 一生
プロダクトマネージャー:石田 健二
プロダクトデザイナー:宮地 さおり
プロダクトデザイナー:有末 海
プロダクトデザイナー:平尾 帆野佳

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