子供扱いしない:Netflixの元最高人事責任者が、最高のコンテンツを生み出すカルチャーについて語る

本記事は、1998年から2012年までNetflixでChief Talent Officer(最高人事責任者)を務められていたパティ・マッコードさんによる記事の翻訳です。マッコードさんは今年1月に「Powerful: Building a Culture of Freedom and Responsibility」という本を上梓されたばかりで、この記事はその本から一部抜粋されたものです。本記事は、著者及び記事掲載元から許可を得て、翻訳及び掲載しています。

マッコードさんはNetflixの企業カルチャーガイドの制作にも深く携わり、このガイドはかつてFacebook COOのシェリル・サンドバーグ氏に「シリコンバレーから生まれた最高の文書の一つ」と絶賛されたと言われています。
マッコードさんがNetflixに参加することになった経緯や、急速に成長する組織においてどのような戦略が取られたのかが学べるとても興味深い記事です。

元記事:Treat them like adults: Netflix’s former Chief Talent Officer on the culture that birthed shows like Orange is the New Black and the Crown
Patty McCord, February 2, 2018

子供扱いしない:最高のコンテンツを生み出すNetflixのカルチャー

1997年のこと。午前2時に電話を取った私は、それがリード・ヘイスティングスに違いないと分かった。午前2時に私に電話をかける人なんて、後にも先にも彼だけだ。

「寝てた?」と彼は言った。「ええ、当たり前でしょ。私は普通の人間なの!で、何?」と私は返した。

リードは、良いアイディアを睡眠なんかに邪魔させないタイプで、私がPure Softwareという彼が立ち上げたスタートアップで一緒に働いていた頃は、夜遅くにその多くを共有してくれた。Pure Softwareを売却した後、彼は学校に戻り、私はコンサルティング業を始めた。私達は同じ街に住んでいたし、連絡は取り続けていた。

彼は、Netflixに入社するつもりだと言った。「良い転職ね。なんで午前2時に私にそれを伝えるの?」と私は聞いた。

すると彼は、一緒にNetflixに来る気はないか、と私に聞いた。「ありえない」。Pure Softwareでは良い時間を過ごしたが、激しい浮き沈みや狂ったような労働時間はこりごりだった。それに、郵便配達でDVDをレンタルしているちっちゃな会社が成功するとも思えなかった。だって、NetflixがBlockbusterを打ち負かすなんて、ありえないでしょ?!

だけどリードは、「僕たち2人がすごく働きたくなるような会社を作れたら最高じゃない?」と言った。それには興味をそそられた。私がPure Softwareに入社したのは既にやり方が確立された後だった。発明期の会社に入社する機会には、心を惹かれた。

「もし一緒に入社したとして…」と私は聞いた。「どうやって最高だって分かるの?」

彼は答えた。「ああ、毎日仕事に来たい、この問題をこの人達と解決したいって思うんだよ」

私はその精神がすごく気に入った。リードがこの言い方で表現したことこそ、人々が仕事から最も得たいと思うことそのものだと思う。それは、職場に来て、正しい仲間 — 信頼し、尊敬できる同僚たち — とともに働き、一緒に素晴らしい仕事をすることに狂ったように集中できるということだ。

Netflixの前、私はPure Softwareでリードと一緒に働いていた。スタートアップで働くのはそれが初めてだったのだが、息絶えて天国に行ってしまったんじゃないか、という感じだった。エネルギーの高さやイノベーションに対する強烈なフォーカスは大好きだった。HRの責任者として、私はそれでもポリシーや手続きを導入していたが、社会通念に疑問を抱き始めてもいた。なぜなら、Pure Softwareは私がこれまで働いた会社よりもずっと小さく、私はビジネスについての基本的なところをもっと学び初めていて、従業員達ともっと分かり合えるようになっていたからだ。特に、ソフトウェアエンジニア達と打ち解けていき、彼らがどのように働いているのかを観察するにつれ、人が多いほど良いものが作れるというのは思い違いだということに気づいた。私はPure Softwareのチームやシリコンバレーのあらゆる場所から、小規模で係累のないチームの力を見て取ることができた。

ビジネスをグロースさせるための典型的なアプローチは、人や構造をさらに追加し、より融通の効かない予算目標と制限を押し付けることだ。しかし、急速に成長してスケールすることに成功した企業での私の経験は、限りなく無駄のないプロセスと強力な規律の文化の方が、スピードだけを理由としても、はるかに優勢だということを示していた。

ほとんどの技術者達が、少数精鋭のエンジニアチームの方が頑張り屋を揃えた大きなチームより良い仕事をする、と言うだろう。私はこう考え始めた。これがなぜエンジニア達だけに当てはまるというのだろうか?彼らがそれほど特別でスマートだから?その当時、私はエンジニア達のことが大好きだったが、同時に彼らが特別でスマートな人達として扱われていることにうんざりしていた。私には、どんな分野のどんな機能を担っている人達も、自分達が最短の時間で最良の結果を出せると信じる方法でプロジェクトに取り組める自由以上に求めるものなどないだろう、と思えた。しかし、非常に多くの場合、彼らは後知恵で批判してくる経営陣や、非効率的なシステムに妨害される。私は考えた。もしマーケティングやファイナンス、そして私自身も所属するHRの人達が、全力を解放することを許されたらどうなるのだろう?彼らはハイパフォーマンスなエンジニアチームのように行動するだろう。思い返してみると、私が慣例的なHRを手放し、カルチャーのCOOとしての新しい役割を引き受け、人材のチーフ・プロダクト・マネージャーとなったのはその時だった。

私は自分の会社の組織構造や、それがどのようにデザインされているのかをくまなく調査し始めた。その時点で部門群は設置されていたが、リードと私はできる限り経営陣をフラットに保ちたいということで意見が一致した。なぜなら、その方がずっとスピードが上がるからだ。大規模なレイオフでたくさんのミドルマネージャーを解雇しなければならなかったあと、あらゆる階層の意見や承認がなくなって、全員の動きがすごく速くなったことに私達は気づいた。そこで私達は、もしかしたらポリシーや手続き無しで業務を行うことで、彼らはもっと速く動くことができ、もっと多くの仕事を終わらせるようになるかもしれない、と心を決めた。リードが削減を提案する時は大体すごく狂気じみてて、私は一晩眠る必要があった。だが、私達がトライし続けるほど、良い結果が手に入っていった。例えば、無限有給休暇制度はメディアからかなりの注目を集めた。私達が従業員に伝えたのは、適切だと思う休みを取り、何が必要かは自分のマネージャーと相談するように、ということだった。そしたら何が起こったか?社員達は1〜2週間の夏休みや数日間の休暇を取ったり、子供の野球の試合のために時々休みを取ったりと、以前とまったく変わらなかった。時間に責任を持つことについて彼らを信用することが、彼らに力を与え直す最初のステップの1つだった。

私は、自分が社会的慣習を放り投げることをすごく気に入っていることに気づいた。私にとって素晴らしかった日々の1つは、社員達の前に立って「経費のポリシーも旅費のポリシーも無くすから、会社のお金をどう使うか自分で良く判断してほしい。もし法律家達が言っているように滅茶苦茶なことになったら、古いシステムに戻す」と言った時だった。ここでも彼らは自由を悪用しなかった。私達は、自分達が彼らを大人として扱うことができ、彼らもそれを大いに気に入っているということを確認した。

私達は、不要な規律や承認からチームを解放するために思いつく全ての方法を実験した。何が上手く行っているのか、そして彼らをもっとクリエイティブでプロダクティブかつハッピーにするために、いかにして自由でいさせ続けられるかを入念に分析し続けるにつれ、私達はこの新しい働き方を自由と責任の文化と呼ぶようになった。これを発展させるために、私達は何年も取り組んできた。そしてその進化は今日まで続いている。この全ては、経営陣の最も重要な仕事とは、優れたチームを構築することにひたすら真剣にフォーカスすることだという気づきの上に成り立っている。あなたが必要とする才能ある人材を採用し、向かうべき場所へあなたをたどり着かせるために彼らが必要とするツールや情報を与えたら、彼らが求めるのはただ最高の仕事をして、あなたを柔軟でいさせ続けることだけだ。

このアプローチの力を表す最も最近の例は、Netflixがオリジナル番組を拡大させながら、同時に人気と優れた批評を達成させたスピードだ。最初期からコンテンツの責任者を務めるテッド・サランドスが私に語ったのは、ハイパフォーマー達を制約から解放することが、オリジナルコンテンツ事業をこれほど急速に築き上げるために不可欠であった、ということだ。彼のチームは毎年新しいコンテンツを倍増させ、私達が会話をした時には30本のシリーズの原稿と12本の映画、55本のドキュメンタリープロジェクト、51本のスタンダップ・コメディーショー、そして45本の子供向け番組の制作が進行していた。それに加えて、彼らはちょうどグローバルに展開し、一度に13カ国まで拡大したところだった。何が素晴らしいって、これだけのコンテンツを作り上げたチームのスピードだけでなく、そのコンテンツの種類の多様性だ。テッドのグループは、「The Crown」のような知的で高級な雰囲気のシリーズから、非常に大衆受けするものの高い批評を得ているとは言い難い「Fuller House」まで、あらゆる種類の嗜好を満たすことに成功している。このチームはさらに、6カ国から集まった選手がそれぞれの言葉で話しながら競うコンテスト、「Ultimate Beastmaster」のような台本のないシリーズの分野にも参戦している。

テッドが言うには、彼の核となるアプローチとは実行スキルのあるクリエイティブな人材を見つけ、そういった才能ある人達にビジョンを実現させる自由を与えることにフォーカスするよう、チームに求めることだそうだ。これがNetflixとハリウッドの制作スタジオの最大の違いであり、それによって彼のチームはとても効率よく最高峰のクリエイティブ人材達を惹きつけ、こういった突破口となるような番組を作ることができているのだ、と彼は付け加えた。クリエイター達は、彼のチームが矢継ぎ早に注文をつけて制作プロセスをマイクロマネージすることがないことを非常に気に入っている。また、テッドのグループは慣例的なパイロットシステムを使わず、その代わり1シーズンの全エピソードの制作を承認する。彼らは制作できることを証明した人々を信頼し、そしてそういった人々が自由と相伴って手にするのは、番組のクオリティーに責任を持つのも彼ら自身であるという理解だ。彼らは危機的状況において普段以上の力を発揮したのだ。対照的に、伝統的なハリウッドのやり方は委員会による創作で、その責任は薄すぎるほどまでに分散される。

テッドは、Netflixのカルチャーに染まることによって、チームが自ら課してしまっていたかもしれない制約から彼らを解き放つことが気持ちよくできるようにもなった、と私に教えてくれた。例えば彼らは、Netflixオリジナルシリーズのまだ第3弾という段階で、新しい番組を持ってくるために彼ら自身が作り上げたモデルを壊した。彼らはパイロット版で試すという仕組みを使用していなかったので、非常によく練られた台本と優れた俳優達が確保されたシリーズのみを採り入れることに決めていた。だがそんな時、Showtimeのシリーズ「Weeds」の製作者であるジェンジ・コーハンが、台本がまだ書かれていない状態の「Orange Is the New Balck」を提案した。テッドとそのチームは番組に対する彼女のビジョンに非常に感銘を受け、また「Weeds」における彼女の実績を信頼し、抜かりなく自分達のルールを放り出したのだった。

Patty McCord is the author of Powerful: Building a Culture of Freedom and Responsibility, from which this article is adapted.

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