デザインする文化 – デザインを知る組織を作ること

Designing Culture: Creating Design Aware Organizations

デザイン文化がある会社とは、どのような組織なのでしょう。また、デザイン・カルチャーを組織に根付かせるには、どういったことがカギとなるのでしょうか。

カナダのトロントで活躍するサービス・デザイナーのLinn Vizardさんは、複数のデザイナーやデザイン・ディレクターとの会話を通して「デザイン・カルチャーとは何か」という問いを追求しました。カルチャーという漠然としたものに対し、デザイナーとしての考察を与えた興味深い記事です。今回、本人及び記事掲載元から許可を得て翻訳及び掲載しています(一部修正あり、リンクや画像は原文より転載)。

元記事:Designing Culture: Creating Design Aware Organizations
著者:Linn Vizard, Service Designer

デザインする文化:デザインを知る組織を作ること

デザインは、プロダクトやサービスの開発と切っても切り離せない存在になりつつあり、ジョン・マエダ氏のDesign in Tech Reportが強調するように、それはテクノロジー界において顕著である。デザインの価値が引力を増していくにつれ、いくつかの疑問が現れはじめた。デザインはどのようにして企業へとフィットするのか?そして、なぜ・どんな時・いかにして、デザインはその役割を担うべきなのか?といったことだ。「デザイン・カルチャー」というアイディアは、部分的に言うと、デザインによって企業のDNAや特有のやり方を浸透させることができる、というものだ。

デザインがもっとも上手く作用するのは、その他の機能やアプローチと良い具合に協調しながら、組織を横断して全体的に適用された時だ。それに加え、デザインカルチャーを促進するための参考になりそうな試験済みの方法も存在する。私は、デザイン・エージェンシーやプロダクト・スタートアップ、大企業などに務める3人のデザイン・リーダー達と話し合い、彼らにとってデザインカルチャーがどんな意味を持つのか、そしてそれを実現させる方法について聞いてみた。

デザインカルチャーとは何か?

「デザイン・カルチャー」というのは漠然とした(そしてきっとトレンド的な)言葉だ。EAのDirector of Experience Designであるライアン・ラムゼイ氏は、デザインカルチャーとは「何かを試そうと動き出す前に、その行動の核となる目的を特定しようとする組織的な意図」だと語った。NascentのDesign Directorであるリンダ・ナカニシ氏もこれに同意し、何かを作り上げる前の段階において課題やユーザー、組織を理解するためにデザインが担う重大な役割について語った。デザインの価値命題の一つとは、ユーザーニーズを深く掘り下げてリサーチすること、そして人々が心から必要とし、愛することができるプロダクトやサービスを描き出すことを可能にする点だ。

WealthsimpleのDesign Directorであるトム・クレイトン氏はデザインカルチャーという言葉を少しリフレームし、「デザイン・アウェアネス(design awareness)」という言い方を好む。「デザインに理解のある会社のカルチャーというのは、プロセスを通して課題とそのスコープを発見させる余地をチームに与えることであり、厳格に決められたスコープや要件を初日から持ち合わせていることではない」とクレイトン氏は言う。

この興味深いリフレームは、ともすると言葉だけが先行して一枚岩的に見えなくもない「デザイン・カルチャー」というものを、デザインの適切な使い方を考えるための余白を持ったものへと変化させる可能性を秘めている。これはまた、問題を「フレーミング」することに対するデザインの役割と責任を強調している。それは、自分たちが正しい問題に対して正しい解決策を作り上げていることを確証する、ということだ。企業が何かを作り上げる前に、その理由を問うためにデザインを用いる時、デザインカルチャーは生まれるのだ。

では、自分の職場にデザイン・アウェアネス(デザインへの意識・理解)のカルチャーが存在するかどうかを、どうやって測ればいいのだろう?クレイトン氏にとっては、望まれる結果が明確な「スコープされていないスコープ」こそがデザイン・アウェアネスの機能である。同様に、ナカニシ氏にとってそれは「デザイン的な視点が仕事の要件に常に備わっている状態」であり、それはエージェンシーが請け負う仕事やプロジェクトの種類に大きな影響を及ぼすことさえある。ラムゼイ氏によると、デザイン・カルチャーが存在することの手がかりは、そこで働く人々がビジネス要件定義書やロードマップを立案する前に一度立ち止まるかどうかだと言う。

デザイン・カルチャーを促進する方法

カルチャーのように形のないものを築くことは、まさに「言うは易く行うは難し」である。プロダクトやサービスの開発においてデザインが重要だということが認知され、尊重されている状態に、どうやったらたどり着けるのだろう?ナカニシ氏、クレイトン氏、ラムゼイ氏は、彼らのストラテジーや戦術のいくつかを詳しく述べてくれた。

明確なバリュー・プロポジション(価値命題)を作る

組織の中でデザインの役目をリードしていくには、そのアプローチの価値を明瞭に表現できなければならない。また、デザインチームとその企業の経営陣、リーダーシップの間に存在し得る、いかなる分断をも橋渡しなければならない。クレイトン氏はこのことをとても上手く表現している。「自分のキャリアの中で発見してきたことの一つは、確かにデザイン・カルチャーの大部分は実際にデザインワークを行うことだけど、あまり教えてもらえない、けれども実はすごく重要なことは、デザイナーやデザイン思考に精通していない人々にどうやってデザインの価値を説明するか、ということだ。」

結果ではなくプロセスを強調しすぎることは、ともするとデザイナー達がやってしまいがちな間違いだ。デザインカルチャーを成長させるには、デザインが最終的にもたらす価値を明瞭に表現することを必要とする。それが効率性であれ、収入であれ、ユーザー・エンゲージメントであれ。

意欲ある人々を集める

ラムゼイ氏は、デザインを使って問題解決することに興味を持った、自発的なパートナーやコラボレーターを見つけることの重要性を語る。「運用モデルを一つも変えることなくデザインに取り組むことは難しい。そうするためには、そこまで規模の大きくない何かに取り組んでいる、優秀なサポーターを見つけなくてはならない」とラムゼイ氏は言う。このアプローチの強みは、アーリー・サクセス(訳注:early success、早い段階での成功)を実証できることと、周囲の人々の興味や好奇心を後押しできることだ。「他の人達も、『ねえ、どうやってやったの、私のことも手伝ってくれる?』と言うようになってくる」とラムゼイ氏は語る。これは「問題解決」をデザインのためのトロイの木馬として使い、必要以上に直接的・威圧的にならずに環境へ溶け込ませるための一例だ。

コミュニティを作る

カルチャーとは人間である。どのデザイン・リーダー達も、デザインチーム内にとどまらずに知識を共有することの重要性を強調した。それは、例えば週次で行うデザインチームのミートアップや、もっと広いチームで Show and Tell(訳注:小規模の発表会的なもの)を行うといった形でも実現できる。また、Wealthsimpleにおいてクレイトン氏が率先していることの一つは、プロダクト・デザインにフォーカスし、きちんと統制されていて組織立ったチェックインだ。一方、ナカニシ氏のチームではデザインにフォーカスしたShow and Tellに加え、より幅広く学際的なセッションを実験的に行っている。「異なる領域を横断してシェアすることで、デザインカルチャーは広がっていく。プロジェクトレベルでチーム全員が最初から参加していれば、彼らはディスカバリー・フェーズに身を置くことになり、議論に貢献することができる」とナカニシ氏は語る。

デザインはデザイナーのためだけにあるのではない

ナカニシ、ラムゼイ両氏は、明確にデザイナーという肩書を持った人だけが入れる排他的な「クラブ」の外へとデザインの門戸を開くことの必要性を示唆した。ラムゼイ氏が使うアプローチの一つは、ランチタイムにデザインワークショップを行うことだ。「僕は、『ピザをおごってあげる、そして、どうやってデザインが作用するか教えてあげるよ』って言うんだ」とラムゼイ氏は説明する。レクチャーや強制的な教育を望む人などいないのだから、これは素晴らしい戦略だろう。ピザを食べに誘って、デザインの虫をちょっと残してくればいいのだから。こういったチャンスを捉えたワークショップによって、チームは自分たちでデザインのアプローチを探求することができ、またラムゼイ氏にとっては、プロジェクトやパートナーの可能性を判断しつつ事前調査することができるので、まさに一石二鳥である。

デザインカルチャーを可能にするカギ、そして気を付けるべき障害物

デザインの作用を発展させていくためのカギは、上層部を取り込んでいくことだ。経営層からの支持がなければ、デザイン・カルチャーの種をまき、育てていくことに苦戦しかねない。「もし上層部がその価値を見出さなければ、デザインに対してリソースが割かれないリスクがある。例えば、スコープする時にリサーチ予算が含まれなかったり、プロジェクトにデザイナーを一人以上出したがらなかったり。これについて私は過去にとても苦労したし、サポートがなければ育成はできない」とナカニシ氏は語る。

クレイトン氏の語る文脈によれば、戦略的な差別化要因としてのデザインとは、そこに優れたサポートや助力があるということを同時に意味する。「投資という視点で見ると、私達が提供しているもの自体は一般的と言える。そこで差別化要因となるのは、私たちがどのようにしてそれを提供しているのかだ。執行役員クラスはデザインとその重要性について大きな理解がある。私達が考えつく解決策はデザイン・ソリューションであって、金銭的な解決策ではない」

じゃあ、デザイン・カルチャーの創造を阻害するものとはなんだろう?変化への抵抗、デザインは「畑違いだ」という感覚、デザインへの誤解といったものが一般的といえるだろう。ラムゼイ氏が現在の会社に入社した当初、デザインという言葉自体は既に使われていたが、文脈は異なっていた。そこではデザインは、ソリューション・アーキテクチャという意味で使われていた。「これでは、デザインという言葉について凄まじい混乱が起きかねない。例えば、デザイナーの責任が何であるのか、あるいはデザイナーが仕事のどの部分に関わるべきなのかを理解しようとしている人々がいた」とラムゼイ氏は語る。デザイン思考が組織にとって新しい考え方である場合、全員が共通の認識を持つためにはかなりの教育が必要とされるだろう。

カルチャーをデザインすることはチームスポーツだ

私が話したデザインリーダー達は、異口同音にして人の大切さを語った。ユーザーにフォーカスした考えを持ったディベロッパーの採用から、組織を横断してお互いから学び合おうとするオープンな自発性まで、結局デザイン・カルチャーというのはチームによって拡大され、維持されるものなのだ。ナカニシ氏は、「デザイン・カルチャーとは、一緒に働くことがきでる素晴らしい仲間を持つことであり、全てを自分でやるということではなく、自分が信頼をおいて一緒に行動できる良い人達を見つけること。つまり、他のマネージャー達と結束して、自分が望むカルチャーを成長させていくということ」だと締めくくった。

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