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Client
ContractS(旧:Holmes)
Expertise
Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
Date

Overview

ContractS(旧:Holmes)は企業の契約に関わる業務全般を最適化する、日本初の契約マネジメントシステムです。契約書作成、法務相談、押印申請、締結、保管、ステータス管理など、事業部から法務部まで様々な部署が関わる複雑な契約業務を、迷わずもれなく行うことで、契約業務の効率化と生産性向上を実現します。
Goodpatchは2018年からContractSのブランドデザインを支援させていただき、インナーに向けたミッションステートメント、プロダクトタグライン、営業ツール、ブランドへの思いを書き込むボードを共創させていただきました。(Phase1.)その後、2019年からは社内の共通認識を作るために「ContractS CLM(旧:Holmesクラウド)」の設計思想を言語化するプロジェクトを開始。事業の成長に対応しVision/Missionから一貫性を保ったUIの設計を支援しました。(Phase2.)

Phase1. ContractSが思い描く争いのない社会

『世の中から紛争裁判をなくす』

ContractSはこのような志をもって創業されています。きっかけとなったのは、代表取締役社長の笹原さんが弁護士時代に感じた「裁判に勝利しても依頼人は真に嬉しそうにしていない」という実感。裁判の原因の多くは「契約」にあります。契約の解釈違いが争いを生む。ならばテクノロジーの力を使って、誰もが正しく契約を扱えるようになればいいのでは...という考えがContractSという会社に結実しました。

創業からユーザー数を着実に伸ばし、2018年11月には資金調達にも成功。このような成長を後押しするために、ContractSの目指す方向性を具現化し、社会にどのような価値を、どのようなステップで届けるかを定めるプロジェクトがスタートしました。

ContractSらしさの発見

プロジェクトの初期フェーズでは、笹原さんをはじめ、社員のみなさん、導入企業さまにインタビューを実施し、「ContractSらしさ」の発見を行いました。インタビューのなかでつかんだ糸口を図式化しては持ちこんで議論へとつなげます。笹原さんは、この時に感じたことを次のように語ってくださっています。

僕がいちばん驚いたというか、これがデザインの力か!と感じたのが、「ContractS」のあるべき姿を可視化した概念図でした。モヤモヤがクリアになりましたし、本質的な価値が伝わらなかった理由もよくわかりました。というのも僕は、「ContractS」のバリューを語るときに「契約書」という「点」の話と、「事業と表裏一体の「契約」をマネジメントする」という「線」の話を同じ次元で語っていたんです。でも「点」と「点」の間には時間軸がありますし、ひとつの「点」がステークホルダーとの関わりで構造化する部分がある。そして、それらが事業と表裏一体の「線」となる。そのすべてをマネジメントすることでクライアントの成長をリードすることが「ContractS」の目指す世界観であるにも関わらず、実際のところ、それを言語化できていなかったんです。僕の頭の中だけにあったイメージを概念図で可視化してもらったことでブランドの解像度が一気に上がり、ついに言語化できるようになったんです。

引用:
ビジョンドリブンなアプローチによるブランドデザイン事例。 契約マネジメントシステム「ContractS」

ContractSの世界観を形にする

ContractSが創造する未来の構想を“ブランドパーソナリティ”に落とし込みます。具体的には、“コアアイデンティティー”であるビジョンとミッションのもと、ブランドステートメントとして短文の形にまとめました。

ブランドデザインは社外に向けたものと社内に向けたものとであり方が変わりますが、今回は社内に向けた取り組み。創業者である笹原さんの想いを共有し、急拡大する組織がいつでも立ち戻れる「指針」になることを目指しました。

“コアアイデンティティー”と“ブランドパーソナリティ”の関係については下図をご覧ください。

ブランドステートメント

ContractSの理念・使命・提供価値を示すものとしてブランドステートメントを作成しました。

契約の最適化で企業の健やかな成長をリードする

ビジネスは、すべて契約で成り立っています。
契約が最適に循環すれば、
権利の実現、義務の履行が最適になされ、ビジネスは成長します。
ContractSは、社内外の契約オペレーションをマネジメントするシステム。
契約前にはじまり、締結、契約中、契約終了後まで、
プロセスのすべてを最適化することで、企業の成長をリードします。
たとえるなら、人の身体をめぐる血流。
ContractSによって健やかなめぐりをつくることで、企業は意識せずとも
晴れやかに、のびやかに、目指すビジョンを体現できるのです。
契約というスコープから志の高い企業がビジョンを達成できる世界を創造する。
そして、権利の実現、義務の履行が自然になされることで、
紛争裁判がなくなってゆく。
幸福な未来を思い描きながら、わたしたちはこれからも挑戦しつづけます。

プロダクトタグライン

ステートメントとあわせて、ContractSを一言で表現する言葉として「契約マネジメントシステム」というタグラインも定めました。

「契約マネジメント」という言葉に込めたのは、契約課題を「1通の契約書の手間の削減」という”点”ではなく、「契約前の段階から、作成、締結、契約中、契約終了までの流れの最適化」という”線”の視点で解決することを目指す、ContractSならではのユニークな考え方です。契約に関わる多数の関係者や情報を受け止める場所として「契約マネジメントシステム」という新しい概念をContractSは提案します。

ステートメントポスター

ステートメントが身近なものになるよう、Goodpatchはステートメントポスターをしつらえました。証書をモチーフに、ポスター上部には紋章が添えられています。これはContractSsがもつ「誠実さ」をデザインに結びつけたいと考えたからです ─ 紋章のエスカッシャン(盾)は、最適な契約で企業の権利を守り成長していく姿勢を。ストライプには、人と企業が契約によって繋がっていく様子が表されています。

エスカッシャンの装飾となっているのは、古くから「知」や「平和」の象徴として扱われてきたオリーヴの葉。「世の中から紛争裁判をなくす」というContractSの志を反映させています。

ステートメントボード

ステートメントボードは、社員1人1人がブランドへの想いを書き込む場。

ここでの書きこむという行為は、ブランドに対して個人的な関わりをもつ機会として機能します。見聞きするだけでなく、考え、触れて、書くことによって記憶に留めてもらう、よりよく自分のものにしてもらうことを目指しました。

後日、ContractSの皆さんが早速それぞれのContractSへの想いをボードに書き込んでくださり、記念写真をお送りいただきました。

Phase2. 思想から「契約」の概念をプロダクトに落とし込む

2019年のプロダクトリニューアルフェーズでは、プロダクトの設計思想を言語化することを目的としていました。設計思想の言語化のためにプロダクトの理想状態と現状のプロダクトという抽象と具体を行き来する過程で「契約」という概念に辿り着きました。

プロジェクト初期、私たちは「契約は契約書という書面でやりとりされるものである」というバイアスを強く持ってしまっており、プロダクト上では「契約書」を管理すべきという考え方になっていました。

しかし、ContractS CEO笹原さんへのヒアリングや議論が繰り返される中で、契約による権利義務は電話での確認やチャットなど契約書以外の手段でも契約状態の変更が発生することに着目しました。こういった契約書以外の合意形成を通して発生した権利義務の変更は一箇所で管理しきれない情報であるため、一元管理が必要だったのです。
ContractSの志である「世の中から紛争裁判をなくす」の実現を達成することから逆算しても、契約マネジメントシステムとして「ContractS CLM」では「契約書」ではなく「契約」自体を管理する必要があると考えました。

UIの思想を言語化しデザインへ落とし込む

Phase1.のブランドデザイン支援の段階でも“コアアイデンティティー”と“ブランドパーソナリティ”は定義されていましたが、UIに落とし込むにはまだ少し解像度が低い状態にありました。

そのため、今回のプロジェクトの初期フェーズでは、「ContractS CLM」のUIとして正しいふるまいかどうかの判断軸になるよう、ブランドパーソナリティのアップデートから着手をはじめました。ContractSの事業の成長に対応できるUIを作るためにはGoodpatchが離れた後も改善改修を行いやすいよう、世界観やデザインの方向性に対するチームの共通の認識を作ることがとても大切だからです。

ContractS「らしさ」の根幹を捉える

“ブランドパーソナリティ”をアップデートは全員で行うものと認識してもらうため、社員の方とワークショップを開催したりほぼ全員へアンケートなどを実施しました。
仕事をする上で考えている“ContractSらしいと思うスタンス”から、“具体的にそう感じた仕事のエピソード”、“過去も未来も変わらないContractSらしさがあるとすれば何なのか”、など、社員のみなさんが仕事をする上で感じている「ContractSらしさ」をワークショップや、社内アンケートから言語化し、チームでディスカッションを行いました。

“ブランドパーソナリティ”のアップデートにおいて特に大切にしていたのはプロジェクトメンバーとのディスカッションの時間です。
既に暗黙知として存在しているブランドの価値の根っこのようなものを捉えることで、「ContractS CLM」がもともと持っているブランドを生かした上でUIを作ることができるためです。
このディスカッションを通して言葉では表現しきれなかった本質的な部分のスタンスや、「サーバントタイプのリーダー」「キャンプファイヤーより焚き火」など印象的な言葉が表出。これらのキーワードを元に後述するブランドパーソナリティを再定義しました。

ブランドパーソナリティの再定義

ブランドパーソナリティでは「らしさ」を「マインド」「ふるまい」「見た目」の3つに分類するだけではなく、今回は新たに「しないこと」を明確に定義しました。「ContractS CLM」として「しないこと」を決めることで、UI改善の根拠となり、またチーム内での合意形成がスムーズになります。

思想を残すためのデザインガイドライン

Goodpatchではクライアントのデザインパートナーとして、私たちの手から離れてからもプロダクトを運用していくための思想を残すということも大切にしています。そのため、デザインガイドラインだけではなく、ガイドラインやコンポーネントでは指定しきれない細かい思想を文章に残しています。そうすることで、開発途中での仕様変更が起きた際でもブランドがブレることなく実装していくことが可能になります。

組織文化の芽を育む

Goodpatchのデザインパートナー事業では、デザインの力でビジネスの課題を解決することを目指しています。ブランドデザインには終わりがないので、最も大切なのは一貫性をもって継続的に価値を生み出し続けられる組織です。なので単に制作物を納品するだけではなく、Goodpatchは組織文化の土壌を作るところまでを意識しています。プロジェクトの効果を笹原さんはこのように振り返ってくださいました。
他社との比較ではなく「ContractS」の世界観をもとに判断できる状態になりました。メンバーの意識が変わったのも感じられます。

引用:
ビジョンドリブンなアプローチによるブランドデザイン事例。 契約マネジメントシステム「ContractS」

また、「機能や価格ではない世界観での差別化」「開発、セールスの意思決定となる判断軸の明確化」「アップセルによる受注単価の向上」という効果にまで繋がっているそうです。
今回、Phase1.でContractSと挑戦したのはビジョンドリブンなアプローチ。契約という大きなイシューを抱える領域で、顧客と同じ未来を共有し、継続的に関係を結ぶための世界観を共創しました。ベースとなったのはContractSで働く人の思いであり、Goodpatchは伝えやすくなるようなお手伝いをさせていただきました。

Phase2.で取り組んだ設計思想の言語化は、プロダクトの拡張性や柔軟性を考える上でも非常に重要な観点でありプロダクトの成長に欠かせません。

「早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまでいきたければ、みんなで行け。」プロダクト視点でも組織としても進むべき方向性が共通認識になったことによって、事業スピードがあがるという成功へ繋がったのだと思います。

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