プロジェクトマネージャーなど、プロジェクト進行を管理する人は、どのようにプロジェクトに関わるステークホルダーの関係性を把握してますか?特に大きな組織や大人数のチームとなると、人的資源の管理は重要案件であると同時に難易度の高い問題に感じられる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、プロジェクトに関わる全てのプレイヤーを特定し、それらの関係性を可視化できる「ステークホルダーマップ」の作り方をご紹介します。

ステークホルダーマップとは

ステークホルダーとは、プロジェクトに影響を及ぼす人や組織のことで、利害関係者のことを言います。チームの構成員、経営者、株主、取引先、行政、顧客といった幅広い関係性からステークホルダーを見出し、それらを図で表したものがステークホルダーマップです。ほとんどの場合、ステークホルダーマップの登場人物はクライアント、自社内のチーム、ユーザーが挙げられるでしょう。
ステークホルダーマップには様々な形がありますが、共通しているのはステークホルダーたちの関係性を可視化できることです。このグラフによって可視化されたステークホルダーたちの相対的な位置関係から、プロジェクトを進める上でどのような障害があるのか、自分がどう行動すればプロジェクトが成功に近づくのかを把握できるようになります。

アウトプットの例は様々で、ホワイトボードと付箋を使った簡易的なものや、マインドマップ作成ツールを使ったオンライン共有に便利なタイプも考えられます。

今回は、多種多様なステークホルダーマップの中から代表的な一例をご紹介します。

ステークホルダーをプロジェクトに巻き込め!PMBOKステークホルダーマネジメントの基礎知識と実施作業を徹底解説!」より引用

上の図を解説すると、関心度が高い・低い、影響力の高い・低いで分けた4つの象限にステークホルダーが分布されます。右上に行くほどステークホルダーの関心度と影響力の数値が高く「最も丁寧な対応」が必要とされます。逆に、左下に行くほどステークホルダーの関心度と影響力の数値は低くなるので、例えばアイスブレイクやキックオフのワークショップを取り入れて、関心度を高めるように持っていくことが望ましいです。また、関心度か影響力のどちらかだけが高いステークホルダーに対しては、前者にはプロジェクトの経過報告、後者には満足度の保持が求められます。このように、ステークホルダーマップを作ることでクライアントや自社チーム内の人間の関係性が明らかになり、各ステークホルダーに対するアクションプランが明確になります。

なぜステークホルダーマップを作ることが大事なのか

大きなプロジェクトや複雑な環境ではステークホルダーの人数が増えるので、ステークホルダーマップでチームや組織同士の関係性を可視化することで、情報を整理しやすくなるというメリットがあります。

また、全てのステークホルダーがそれぞれに利害関係やモチベーションを持つ限り、それらを踏まえた上でプロジェクトマネジメントをしなければなりません。
例えば、あまりプロジェクトに関心がないけれども物事の決定権を握っている立場の人に、経過報告を逐一するのはどうでしょうか?興味を持ってもらうための戦略であれば話は変わりますが、少ない回数でクオリティーの高い報告書を出したり、相手を喜ばせるための工夫を凝らす方が、ステークホルダーの心を掴むのに効果的かもしれません。よって、プロジェクトとステークホルダーの関係性を明確にすることでプロジェクトの全体像を把握し、最適なアクションプランを練ることができます。

チーム全体で一つのマップを作り上げることでチームとしての一体感を高めることもできます。そのため、Goodpatchではクライアントとのキックオフの際にステークホルダーマップを一緒に作り、プロジェクトの方向性を一緒に決めるための糧としています。

ステークホルダーマップの作り方

続いては、ステークホルダーマップの作り方をご紹介します。先ほど述べた通り、ステークホルダーマップに絶対的な型はないので、ここでは基本的な手順をご紹介します。

1. 登場人物である「ステークホルダー」の特定

まずは、プロジェクトのステークホルダーが誰なのかを書き出します。ほとんどの場合、クライアントや自社内のチームが主な登場人物になるでしょう。また、ステークホルダーの態度、役職、距離は変動する可能性があると念頭に置いてリストアップしましょう。

2. 各ステークホルダーの関係性を洗い出す

登場人物が定まったら、次は各ステークホルダーのプロジェクトへの影響力や結果への関心度を考察しましょう。プロジェクトが成功するためには、その人にどのような情報を伝えれば良いのか?その人はどのような権限や技術を持ち、それがどうプロジェクトに繋がるのか?そもそも、その人はプロジェクトの成功や失敗でどのような影響を受けるのだろうか?このように質問を重ね、ステークホルダーたちのプロジェクト内の役割を見出しましょう。

3. マップで相関関係を可視化する

ステークホルダーたちの分析が終わったら、次はそれぞれの関係性を把握できるように可視化していきます。可視化には絶対的な方法はなく、上の図のように2×2のマトリックス表を作り上げるチームもあれば、ホワイトボードや模造紙にいくつも付箋を貼って思考を整理するチームもあります。つまり、プロジェクトに関わるプレイヤーの全体像をわかりやすく表すという目的を果たせていれば、形にこだわらなくても良いのかもしれません。

さいごに

今回はステークホルダーマップの概要と作り方についてご紹介しました。ステークホルダーマップはチーム内外の影響力を可視化できる、プロジェクトマネジメントに欠かせないツールであることをおわかりいただけたでしょうか?みなさんもプロジェクトマネジメントをする際は、ぜひステークホルダーマップを描いてみてください!

Goodpatchではステークホルダーマップなどの手段をはじめ、プロジェクトに最適なデザインプロセスでビジネス課題を解決したり、事業戦略の推進を行なっています。もしご興味があれば、こちらよりご連絡をお待ちしております!

参考文献:
Copper “What’s Stakeholder Mapping and Why It’s Important?
InnoPM 「ステークホルダーの理解とマネジメントから学ぶプロジェクト成功のカギ!
InnoPM「ステークホルダーをプロジェクトに巻き込め!PMBOKステークホルダーマネジメントの基礎知識と実施作業を徹底解説!