emmy
- Client
- emmy
- Expertise
- Digital Product & Service Design
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Overview
シェアリングエコノミー市場はこれまでにも増して盛り上がりを見せています。その最先端とも言える場所で、数ヶ月にして目新しいアイデアが生まれてはプロダクトとして世に出るのを間近で見るのはとても刺激的です。 電動スクーターのemmyはシェアリングサービスの一つです。公園で生まれた一つのアイデアが一年という短い月日でプロトタイプになり、今では1600台が15万人のユーザーに使われています。そんなドイツで今流行りの風を吹かせているemmyが、Goodpatchで毎月開催しているProduct Crunchでデザインへ投資し更なる高みを目指す覚悟を宣言してくれたのです。
自動運転に注力しているGoodpatchは、emmyと一つのチームになりプロダクトを作り上げることに力を注ぎました。Goodpatchのメンバーは、emmyとパートナーになる前からオフィスの前に止められていたemmyスクーターをランチタイムなどによく利用していました。
台車に付随するアプリケーションを作るまでは、emmyはホワイトラベルのアプリを使用していました。これは短期的な解決策としては有効的でしたが、事業が拡大するに連れて、一つひとつの機能により着目してユーザーニーズに合わせてプロダクトを改善する必要が出てきたのです。
Goodpacthはemmyチームとのキックオフを通じて、「いかに台車を借りるオンボーディングプロセスをユーザーの共感を得られる簡易的な体験にデザインできるか」という課題が最も解決すべきあることに気がつきました。アプリケーションはただの付随物であり、その中で起こるインタラクションは最小限であるべきです。アプリケーションはあくまでもemmyの提供する主なサービスである「スクーター」を、いかに使いやすく楽しい乗り物にするかという役割を担うまでであることを常に意識しました。
MLPをリリースするための3つのデザインフェーズ
冬季休暇の間に、GoodpatchのUI/UXエキスパートとemmyの技術やプロダクトのエキスパートの連携を強め、夏のリリースに向けてデザインプロセスを走らせました。彼らがGoodpatchのオフィスで働く日もあれば、私たちが彼らのオフィスで働く日もありました。TempelhofやKreuzbergの近くでemmyのオレンジのスクーターが走り回るのを観察しながら、アプリケーションの改善案を模索しました。
まずはemmyがすでに握っていた多くのユーザーインサイトやペインポイントから、実行可能なインサイトを導き出しました。
ソリューションフェーズでは、インサイトを咀嚼し、優先順位をつけました。また、ユーザーフローを整理することで、ユーザーの予約画面と管理画面のインタラクションを素早く信頼できるデザインに改善しました。さらにユーザーテストのためのプロトタイプを作り、仮説検証と抜け落ちている点がないかを検証しました。
最後に、新しいデザインを開発チームへ引き継ぎ、少数のユーザーに愛されるプロダクトMLPを作成します。開発チームと密接に連携することによって、デザインを迅速かつ正確に共有し合い、アプリケーションのβ版の開発を進めることができました。
ただのユーザーにとどまらない
全てのデザインプロセスにおいて、ユーザーテストを行う必要がありました。また定量と定性両方の側面から検証ができるよう、複数のメソッドを掛け合わせました。
定性リサーチでは、プロダクトのエモーショナルバリューを検証しました。emmyのユーザーは、ただ目的地AからBへと移動したいわけではありません。彼らは「赤いスクーターに乗って街を走り回りたい」と望むemmyのファンであり、それを操作するアプリケーションはベルリンのライフスタイルに馴染むシンプルなものであることを望んでいます。ユーザーテストは、emmyに500時間無料で試乗できるというインセンティブから、一気に過去最多の協力者を集めることができました。
ユーザーが最も圧迫感を感じずリラックスして質問に答えられるように、ユーザーテストを行う部屋の設備にまでこだわりました。隣の部屋にはスクリーンとマイクを用意し、ユーザーがプロダクトにどのような反応を示し、どういったニーズを抱いているのかを、できるだけ多くのチームメンバーが観察できる状態を作りました。emmyのCEOやチームメンバー全員が自らこのフェーズの中核になることで、彼らのコミュニティに対する誠実な興味と人間中心的なマインドを表ました。
ユーザーのフィードバックはもちろん大切ですが、ユーザーテストは時間とお金がかかります。そのため、より迅速に行えるテストを設計し、簡単かつ素早く意思決定ができるような工夫を凝らしました。
定量リサーチでは、VRプロトタイピングツールAthenaのユーザーテストで使った方法を試しました。emmyのスクーターをスクリーン上で再現し、ユーザーとアプリケーション間だけでなく、ユーザーとスクーター間のインタラクションも観察できるようにしました。ハードウェアとソフトウェアの融合は、複雑なプロダクトシステムを形成するため、初期フェーズで両者を融合した完全なシナリオを検証することが非常に重要です。
ユーザー課題に基づいたデザインソリューションを導き出す
emmyを普段利用しないユーザーにとって、一番難関なのがスクーターのロックを解除し、ヘルメットボックスを開いてキックスタンドを使用するといったルーティンタスクです。より簡易的な体験にするために、ユーザーのオンボーディングプロセスの一連をステップごとにサポートする体験をデザインしました。
簡易なオンボーディング体験が出来上がったら、その体験が初心者とヘビーユーザー両方にとって価値を発揮できているかを検証します。ヘビーユーザーにとっては、毎回ログインする際にステップを確認する必要はありません。そこで、スキップ機能を導入しました。2つの追加機能によって、3日間連続で複数回使用するユーザーは完全にオンボーディングをスキップすることが可能となりました。また、インフォメーションボタンの設置により、しばらくログインしていなかったユーザーにとってもすぐにオンボーディングステップのガイドが参照できるようになりました。
ハードウェアとソフトウェアを組み合わせるという課題に加え、サポートサービスが非常に重要であることにも着目しました。アプリケーションができるまで、全ての問い合わせはメールもしくは電話によるものでした。その結果、emmyチームの仕事量は必要以上に増幅していました。ユーザーにとっては小さな変更、しかしemmyチームにとっては大きな前進となったのが、損傷報告機能の導入でした。ユーザーにとって手間のかからない体験を提供するだけでなく、emmyチームの課題も同時に解消できました。
最後に、電池残量や住所を表示する詳細ページを半モーダルへと変更することで、ユーザーは全体像を地図で把握しながらスクーターの状態を確認できるようになりました。もともと画面遷移なしでは見れなかった情報を同一ページで確認できるようにすることで、ユーザー体験の向上を測ったのです。
Summer launch and living the design process
数ヶ月パートナーとして歩んできたemmyは、2019年の夏にプロダクトをリリースする予定です。今後は、emmyの成長と共にデザインチームの拡大も測ります。彼らはデザインプロセスを反復しながら、今後もユーザーの声を聴きながら機能改善に努め、ドイツで最も優れたシェアリングスクーターを開発していきます。emmyは今後も引き続きユーザーコミュニティのフィードバックを聞き、実践的なデザインソリューションへと変換することで、デザインの力を証明しています。