「自分の中のデザインに対する自由さが、とても広がったように思います」

そんな感想を真剣な眼差しで伝えてくれたのは、ついさっきまで「デザインって、絵が描けないとできないんじゃ……」と頭を抱えていた高校生たち。

Goodpatchは2023年8月、北海道上川町の高校生に向けてデザイン体験ワークショップを実施しました。

ビジネスパーソンや大学生にデザインを教える機会は多いものの、高校生相手にワークショップを行うのは今回が初めて。将来の交差点に立つ高校生たちは、デザインの世界に初めて触れて何を感じたのでしょうか。ワークショップの様子と共に感想も一部掲載しています。ぜひ最後までご覧ください!

Goodpatch流、高校生向けデザイン体験プログラム

今回ワークショップに参加した高校生は8人。夏休みを利用して東京に訪れ、さまざまな企業を巡りながら、さまざまな仕事を知って未来への選択肢を増やす──そんな上川町の取り組み「ミライエンジン」の一環でグッドパッチにやってきました。

高校生たちの「自分が感じたことを言葉にする力」や「地域や社会をより良くしたいという意欲」を引き出せるようにしたい、という要望を受け、生活に身近なスマートフォンアプリの「良い体験」を発見し、自分たちでもアプリの改善案を考えてみるというワークをメインに構成しました。ここからはワークショップの各プログラムをご紹介していきます。

ミニレクチャー:UI/UXデザインと「良い体験」とは?

ワークを始める前にまず、「UI/UXデザインって何?」や「これから考える『良い体験』とは?」などを考えるためのミニレクチャーを行いました。

Goodpatchのプロジェクト事例を紹介しながら、私たちの生活を便利に楽しくしてくれるスマートフォンアプリは、デザイナーが1つ1つ「体験」を考えて作っているということを一緒に学びました。

その上で、NetflixやPaypayなど身近なアプリに込められた「使う人が幸せになるための工夫」を紹介。「普段使っているアプリを違う視点から見ると面白い!」と新たな発見をしてくれました。

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前半ワーク:良い体験を発見しよう

講義のあとはワークパートです。今回は前半と後半に分け、2つのワークを行いました。

前半は、普段使っているスマートフォンアプリなどを触りながら、自分にとって「良い体験」を発見し、チームで議論してもらいました。

「LINEスタンプはすごくいい工夫」「トークルームを長押しすると、中身をチラ見できるのが便利」「そもそも既読がつかなければ良いのに……」など、みんなそれぞれアプリを使いながら感じる体験について意見を出し合いました。

後半ワーク:普段使っているアプリに、新しい“〇〇な体験”を追加してみよう

後半では、前半ワークで発見した「良い体験」を参考に、YouTube、LINE、写真アプリといった、実際に自分が普段使っているアプリに新しい“〇〇な体験”を追加してみるというワークに取り組みました。

自分で記入した「アプリカード」と、さまざまな体験が書かれた「体験カード」を組み合わせ、何のアプリのどんな体験を考えるのか、お題をそれぞれカスタマイズしました。

アプリを触りながら「ここにこんな体験があったら、使う人はうれしいだろうな」と想像を膨らませていきます。

最初は「絵を描くのは苦手……」と言っていた学生さんも、デザイナーと雑談している間にアイディアがひらめいて、とてもいい提案を作ってくれました。

アイデア共有

みんながそれぞれカードを引いて作ったお題に対し、考えたアイデアをチーム内で共有します。他アプリの特徴的な機能をお題となったアプリに当てはめてみたり、表示される背景や文言周りに注目してアレンジを加えるなど、高校生のユニークなアイデアはどれも実現したら面白そうなものばかり!

一つの機能だけを考えるのではなく、使うユーザーの特徴や「どんな時に使いたくなるか、開きたくなるか」を考え、世界観を丸ごと考えてくれる学生もいました!

「高校生にデザインを学んでもらう」ということ

今回のワークショップを実施するにあたり、普段デザイナーとして働く私たちにとって面白いチャレンジだったのは、「高校生にデザインを学んでもらう」ということでした。

これまでデザインを学んだことのない学生たちに、どうすればたった2時間で「デザイナーはこんなことを考えているんだ」「デザインって面白いかも」と感じてもらえるかを考え、試行錯誤しました。

まず工夫したのは、専門用語を使わずに説明することです。例えば、UXデザインは「使う人の体験を考えてつくり出す仕事」、UIデザインは「体験をよく受け取れるような仕組みをつくる仕事」など、「ユーザー」や「インターフェイス」といった言葉は使わず、簡単な日本語で説明しました。

また、最も意識したのが、学生一人一人が個人的に興味を持てるワークにするということです。デザインを概念から学ぶのではなく、目の前にあるスマートフォンを取り上げ、普段使っているアプリを観察する。それだけでもデザインの考え方が掴めるようなワークの設計にしました。

高校生の皆さんがワークショップを通じて何を感じてくれたのか、参加してくれた方々と、サポートで来てくれた大学生の感想を一部紹介いたします!

“自分の中のデザインに対する自由さがとても広がったように思います。アプリを見て、機能や仕組みがどんな行動のためにつくられているのかを考えるのが楽しみになりました!”

“使ってくれる人が幸せになってもらいたいということまで考えられていて、とても素敵だなと思ったし、すごいことだなと思いました。”

“最初はセンスがないといけないと思っていたけど、センスがなくてもみんなと相談してしっかり考えることで自分の考えを形にできた”

“普段当たり前のように使ってるアプリを違う視点から見ることで、そのアプリの新しい機能の発見だったり、こういうのあったら便利という考え方に変わって面白かったです!!”

この他にも大変嬉しい感想をいただきました。今回のワークショップをきっかけに、普段自分たちが何気なく見ているアプリから、デザインの面白さを日々実感してもらえることを楽しみにしています!

最後に

Goodpatchは日々ビジネスの価値を最大化するためにデザインに取り組んでおり、今回のワークショップは高校生に「デザインの力」を実感してもらう良い機会となりました。

最初はデザインに対して「難しそうで敷居が高い」と感じていた高校生たちも、普段使っているものからデザインのアイデアを見つけることで、楽しさを感じ、使う人のシーンを思い描いたり、創意工夫を楽しんだりする姿がたくさん見られました。

デザインワークショップは、課題解決の新たなアプローチを提供するだけでなく、若い世代にデザインの魅力を伝える有効な手段となります。冒頭でも触れましたが、Goodpatchは大学生へのワークショップ企業さまへのワークショップも実施しています。よろしければそちらの記事もご覧ください。

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