先日、デザイン思考についての記事で、現代のビジネスにおいてデザイン思考が求められる理由をご紹介しました。

しかし、まだまだ「デザイン」という言葉を理解する事が難しいように感じています。それは、「デザイン」という言葉の定義が広すぎる事が背景にあると気がつきました。

例えばグッドパッチには、モバイルアプリのインターフェースや体験設計をするUIデザイナーや、アプリケーションデザイナーがいます。彼らが手がけるデザインは、必ずしも装飾の意味合いではなく、リサーチや検証を繰り返し重ねた非常にロジカルな設計です。

以下の記事では、「お金を払った」という事が直感的に理解できる感覚のデザインについて、UIデザイナーのメンバーが考察しています。

一方で、グラフィックデザイナーやファッションデザイナーなど、時にはアート的な表現を含む、ビジュアルデザインをメインとするデザイナーも、世の中には多く存在します。

デザインには、「設計」と「装飾」という得て非なる二面があるようです。もう少し、深く勉強してみたくなりませんか?

そこで、社内のUIデザイナー、UXデザイナーに「デザインを理解するためのおすすめ本、教えてください!」と聞いてみました。

ビジネス職でキャリアをスタートさせたばかりの人や、デザイナー以外の職種の人が、「デザインとは何か」を勉強したい時に役立つ本をご紹介します。
初心者でも読みやすいものをピックアップしてみたので、参考にしてみてください。

おすすめ本、教えます

1. ノンデザイナーズ・デザインブック

ノンデザイナーズ・デザインブック

インタビューを開始して、デザイナーとエンジニアの両方から薦められたのがこの本です。
「基本的なことは『ノンデザイナーズ・デザインブック』を見れば載ってるよ!」と教えていただいたので、様々な場面に応用できる、本質的なデザインを学ぶことができるのではないでしょうか。

本の詳細を調べてみたところ、デザインには、近接・整列・反復・コントラストという要素があり、これをデザインの4つの基本原則と呼ぶそうです。
このような基本原則を理解できるだけではなく、ポスターや名刺のデザイン実例を合わせて見ることで、実践に活かせるところが良いと紹介されました。

例えば、街にあるポスターを見て「これなんか良いなぁ」と思っても、具体的にどのポイントがそう思わせているのか?をしっかり説明することは難しいはずです。
ノンデザイナーズ・デザインブックでは、そうした「なぜ?」に対して、図解を入れながら、詳細に答える点が支持されていました。

また、これを読み進めているエンジニアの、「言語化するトレーニングを通して、意識的に良い決定をしてデザインすることを教えてくれる」という一言が印象的でした。
この推薦コメントからも、デザイン的な考え方がインプットされてるように感じませんか。
私も早速読んでみたいなと思いました!

2. なるほどデザイン

なるほどデザイン

ゆるいイラストの表紙がかわいいです。楽しく読めそうな、安心感がある表紙ですね。

「なるほどデザイン」はデザインに関するものごとを、なるべく「目で見て楽しめる」形にまとめた本です。主にはデザインを良くするヒントが欲しい新人デザイナーの役に立つようにと考えて作りましたが、ある程度キャリアのある人にも、他方ではデザインを仕事にしていない人でも、「デザイン」に対して興味があるすべての人に、面白く読んで・見てもらえるような内容を目指しました。
出典:http://naruhodo-design.com/

つまりこの本は、デザインが好きな人ならどんな職種でも楽しめる内容になっています。

イラストや写真が多くカラフルなので、活字を読むことが苦手な人や、教科書のような本に挑む自信がない人でも読みやすそうな印象を持ちました。

デザインの抽象的なプロセスは、文章で理解しようとすると時間がかかってしまいます。
この「なるほどデザイン」は、デザインをキャッチーなイラストで擬人化したり、図解したりと、視覚から直感的に理解できるような内容になっているそうです。
ユーザー視点でデザインを見ることで、ユーザー体験を実感できる効果もあるのかなと思います。

Goodpatchメンバーからは、「雑誌のレイアウトや、文字のフォントの話など、一見するとグラフィックデザイナーのための本に見える。でも、グラフィックデザインの基礎がUIデザインでも活きてくるから、参考になる」とコメントをいただきました!

3. デザインのデザイン

デザインのデザイン

著者は、無印良品や蔦屋書店などのアートディレクションを手がける原研哉さん。
他にも数々の実績がありますが、2020年の東京オリンピックのエンブレム案を公開していたことで、ご存知の方も多いと思います。

この本を繰り返し何度も読んでいるというメンバーに、内容を詳しく聞いてみました。

  • 冒頭はデザイン史を改めて振り返ることから始まり、デザインが出来上がっていくプロセスを、自らの事例から紐解く内容。
  • 誰もが悩むであろう「結局デザインとは何か?」という問いについて、全編を通して述べている。
  • 色々な本を読んだけれど、その後に『デザインのデザイン』を読むと、本質は昔から変わらないと思い出させてくれる。

最前線で仕事をするデザイナーならではの、軸がブレないモノづくりについて学ぶことができそうですね。
本棚の一番良いポジションに飾りたくなるような、シャープな装丁も魅力的です。
私は個人的に原さんのデザインがとても好きなので、すぐにでも読んでみたいと思います!

4. 経営とデザインの幸せな関係

経営とデザインの幸せな関係

この本は、「経営者はデザイナーの、デザイナーは経営者の視点を持つことで、お互い良い仕事ができる」というメッセージがあると紹介していただきました。
先述の「デザインのデザイン」がデザイナー視点であることに対して、こちらは経営者の視点でデザインを捉えているので、また違った気づきや学びがあると思います。

著者の中川淳さんは、中川政七商店の十三代代表取締役です。
中川政七商店は1716年創業の老舗であり、現在は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンの元、インテリアや生活雑貨、メディアなどを幅広く取り扱っています。
さんち〜工芸と探訪〜」という全国の工芸・産地にまつわるメディアサイトや、そこから生まれたアプリ「さんちの手帖」は、Goodpatchが設計・開発をお手伝いさせていただきました!

今でこそ「上質でおしゃれ」なイメージが強い中川政七商店ですが、どのようにして旧態依然とした老舗のブランディングを作ってきたのか、とても興味を持ちました。
その秘密こそが、タイトルにもある『経営とデザイン』と密接に関わっているのでしょうか。

ブランディングや経営面での事例本とのことなので、モノづくりのプロセスを幅広く知りたい人へ薦めたいと思いました!

5. デザインマネジメント

デザインマネジメント

「モノづくり×デザイン」だけではなく、「モノを売る×デザイン」についての本だと紹介していただきました。
モノをどう売るか考える時は、プロジェクトや組織をデザインしていかなければならない。
こうした考え方をデザインマネジメントと定義した本のようです。
デザインがインプットされていない組織は、経営層がデザインを理解していなかったり、デザインを装飾にフォーカスして捉えるあまり軽視しているケースなどが当てはまると思います。

ただ良いモノを作れば売れる時代ではなくなってしまった今こそ、デザインマネジメントを身につける必要があるのでしょう。
意識改革に役立ちそうな本なので、集中して読んでみます!

6. デザイン思考が世界を変える

デザイン思考が世界を変える

デザインコンサルティングファーム・IDEOのCEOティム・ブラウンが書いています。
AppleのマウスをデザインしたIDEOならではの、プロダクトデザインの事例が豊富に登場し、デザイン思考についてを学ぶことができる内容になっているようです。
この本を通して、彼らがどれだけユーザー体験に重きを置いてモノを設計するのか理解することで、デザイン思考がビジネスにもたらす可能性を感じ取ることができるのかな、と思います。

Goodpatchの新卒研修の課題図書に指定された本なので、これからキャリアを積んでいく人には是非おすすめしたいです。
(文庫本なので持ち歩きやすく、お値段が手頃なのも嬉しいですね!)

さいごに

今回ご紹介した6冊の本は、コミュニケーションのデザインにも大いに役立ち、アウトプットの質を底上げしてくれると思います。「デザイン」との距離を縮めるために、まずは登場した6冊を読破して、インプットとアウトプットをたくさんしていきたいですね!

読書で得られるインプットは、必ず自分の資産になります。
ビジネスにおいて人と関わる上では、予測できないボールが投げられることが多くあります。その時に最適な方法を提案できたり、相手との共通認識の引き出しが多くある事で、あなたの印象は大きく変わって見えるはずです。

デザイナー以外にもデザインの知識が求められる現代だからこそ、ベーシックなところから勉強しておきましょう!