急に気温が下がり、冬が近づいてきましたね。
今月も、Goodpatchで話題になったアプリケーションやサービスをご紹介します!

アプリケーション

民間初のワクチン接種証明アプリ「ワクパス」

https://icheck.jp/1427/

2021年10月6日、一般社団法人メディカルチェック推進機構とICheck株式会社が共同で新型コロナウイルスワクチン接種証明アプリ「ワクパス」を提供することを発表しました。ワクパスは、本人確認書類とワクチン接種証明書類(摂取済証または摂取記録書)を登録することでスマートフォン上でワクチン接種が証明できるアプリです。年内を目処に開発が進む政府の摂取証明アプリに先駆け、民間からアプリ提供を発表したことで話題になりました。

ワクパスの特徴は、アプリを提示することで賛同企業から受けられる様々な優待の数々です。2021年10月現在はアパホテル、HIS、かっぱ寿司などの企業がレイトチェックアウト無料や商品の割引などの優待を予定。すでに摂取証明アプリが普及する国では摂取証明を持たない人の入店拒否が問題になっていますが、ワクパスはユーザーにインセンティブを与えることでワクチン摂取、証明の普及を目指している点が対照的です。また、賛同企業にとっては、積極的に接種証明と連携したサービスを提供することで安全性や社会貢献性を訴求でき、イメージアップにもつながるでしょう。

接種証明をするユーザーの視点では、ワクパスのようにアプリ上で簡単に証明ができることは嬉しいことでしょう。一方で、課題もあります。優待を行う店舗スタッフや企業の従業員にとっては、既存の業務の中に新たな工程が差し込まれることで負担になる可能性もあります。官民から複数の接種証明アプリがリリースされることで、さらにオペレーションが複雑になるかもしれません。それが混雑の原因になり、人の密集が発生すると本末転倒です。接種証明をするユーザーの体験だけでなく導入企業のスタッフもユーザーの一部と考え体験設計をすることも、接種証明アプリの普及、活用において重要なポイントといえるのではないでしょうか。

プロダクト

ココロとカラダをセルフケア、新モデル「JINS MEME」がスマートに。

https://jinsmeme.com/

株式会社ジンズは頭の傾きや視線の動きから身体の状態を知ることができるJINS MEMEの新モデルを2021年10月14日に発売しました。JINS MEMEの特徴はセンサーから得た情報をスマホアプリと連携し、姿勢の良し悪しや集中力を計測して自分の身体を管理してくれるサポートをしてくれる点です。新しく発売された新モデルは部品の位置や重さを調整し、一般的なメガネと変わらないデザインに一新されました。従来モデルはフレームの先端部分にセンサーやバッテリーが内蔵されていたため見た目も機械的かつ、かけると重そうな印象がありました。本来は普段使いしたいメガネですが、当時の技術ではその形が限界だったのかもしれません。
メガネは顔の印象に大きく関わるため、こだわりたいユーザーが多数です。JINS MEMEの新モデルは、普段使いのメガネの候補にあがることでしょう。

さらに、ジンズは新しい取り組みとして「JINS MEME LAB」という新規事業開発プロジェクトを始動しました。第1弾ではJINS MEMEを着用しただけでアバターに動きが反映する「JINS MEME VTUNER」。第2弾では頭の動きやまばたきで手を動かさなくてもPCやスマホを操作できる「JINS MEME CONTROLLER」の取り組みが公表されています。JINS MEMEはサブスクリプションサービスとして提供されているのでさまざまな機能がこれからアップデートされていくでしょう。

普段使いするものが店舗に行かずともアップデートでき、ずっと使い続けたくなる飽きさせない商品。Apple Watchなどのスマートウォッチはそのような商品の中でも先駆者で、常に身につけるという観点でもJINS MEMEと似ていますね。JINS MEMEが視線やまばたきで操作することができれば、より自分の身体の動きと連動する感覚を得ることができます。もしかしたら自己帰属感を得られるUIとして代表的な製品になるかもしれません。

世界初の「冷えるゴミ箱」量産モデル発表

https://www.axismag.jp/posts/2021/10/411933.html

2019年に「世界初の冷やすゴミ箱」として100台限定で先行販売された「CLEAN BOX」。2021年10月1日、ユーザーからの意見をもとにより多くの人が使いやすい形へとアップデートした量産モデルが発表されました。この新モデルでは内部構造を見直し、内容量を20リットルに増量。これは使用済み紙おむつが約30個収まる容量だそうです。

この製品は、「生ゴミは冷凍すると臭わない」という言わずと知れたライフハックに目をつけ、一方で「ゴミと食品を一緒に入れることに抵抗がある」というインサイトを拾い上げたことで、これまでにない価値を実現していると言えそうです。既に開始されているクラウドファンディングでは、「ゴミ箱」としては決して安い値段ではないものの、10月22日時点で目標金額の2300%以上を達成し、310人を超える支援者を集めています。支援者のコメントからは、ペット関連ゴミの匂いに悩まされている方からの期待も伺えます。

クリーンボックスを開発したのはNKCという軸受製造をメインとする会社の、戦略デザイン事業開発室「kaimen」。生活者のインサイトから発想されたアイデアを元に、家電に関するノウハウが全くないところから開発はスタートしたそうです。海外も含めてリソースをかき集めてプロトタイピングを繰り返し、小さく試しながら100台の限定販売、そして今回の量産に辿り着いています。これはまさにデザイン思考的なプロセスであり、このゴミ箱はデザイン思考でつくられる製品の1つの成功例と言えるかもしれません。

サービス

体温入りフォトカードThermo Selfieで検温をエンタメに

https://jp.techcrunch.com/2021/09/09/hitek-thermo-selfie/

2021年9月9日、株式会社HYTEK(ハイテク)は検温をエンタメ化して思い出に変える写真プリント装置「Thermo Selfie」(サーモセルフィー)のプロトタイプ開発を発表。2021年9月10日から13日まで「有楽町micro FOOD & IDEA MARKET」に設置されました。

新型コロナウイルスの感染予防としてマスクと検温が必要になった私たちの新しい生活では、ワクワクした気持ちで訪れるイベントでさえ事務的な検温からスタートします。そこでHYTEKは「せっかくのイベントだから笑顔でスタートしたい」という気持ちを大切に、新しい検温体験を考えました。Thermo Selfieでは写真を撮っている間に検温ができ、その場で顔写真と体温が表記されたフォトカードが印刷されるのです。でき上がったフォトカードは来場者にとっては楽しい思い出の記念になる一方で、イベント主催者にとっては来場者に楽しんでもらいながら安全な環境を確保するための対策になります。

面倒な体験を無くすのではなく、どうやったら楽しく面白い方向に転換できるかという姿勢で作られたプロダクトは、生活の変化によって少し暗かった日々を明るく変えることができます。様々な変化を余儀なくされた新しい時代だからこそ、Thermo Selfieのような遊び心が溢れたプロダクトの必要性が増しているのではないでしょうか。

つくば市がスマホで手続きできる「書かない窓口」のサービスを開始

https://lgpos.task-asp.net/cu/082201/ea/residents/portal/home

茨城県つくば市が2021年10月15日から、引っ越し手続きに関係する書類をスマホなどで入力することができる「書かない窓口」のサービスを開始しました。転出届・転入届・転居届の書類をあらかじめ入力しておき、できたQRコードを市役所で提示することで手続きを完了することができます。

引っ越し手続きにまつわる書類の煩雑さは、現在多くの場所で指摘されています。実際、10月10日に行われたデジタル庁主催のデジタルの日オンラインイベントで発表された「日本のデジタル度調査」においても、行政手続きにおいて特にデジタル化が必要なものとして引っ越し手続きがあげられていました。今回のサービスの開始は、その課題を解決する動きの先駆けになると考えられます。実際書類への記入がデジタル上で済むことは、利用者の市役所滞在時間を短縮するだけでなく、それによって行列が解消されることで、サービスを利用せず従来通りの手続きを行う人の待ち時間を減らすことも期待されます。

行政手続きのデジタル化が各地で求められながらも実現が進まない背景には、そのシステムに要求される制約の多さに一因があります。つくば市は、あくまでデジタル化を書類の入力部分に絞り、実際の手続きは市役所に残すことで素早い実現を可能にしたのではないでしょうか。この方法が、実際どの程度効果があるかはこれから検証がされていくことになると思いますが、このように制約のある中でいかに素早く実現していくか。小さく素早く試していくということが、プロダクト開発だけでなく、行政においても求められていると思われます。

デザイン

Google、iOS向けの自社アプリをiOSに準拠したデザインに修正中

https://twitter.com/featherless/status/1446151509549387781

Googleのデザイン部署のスタッフエンジニアリングリーダーであるJeff Verkoeyen氏によって2021年10月8日、iOS向け自社アプリの開発方法を見直し、iOS純正アプリに近づけるよう努力していることが明らかとなりました。

これまでiOS向けのGoogleアプリはAndroid向けのアプリと見た目・機能が同じで、iOSの純正のアプリとはかけ離れており、一貫したユーザー体験が得られない、という不満の声が一部のユーザーからは上がっていました。他のiOSのアプリとGoogleのアプリで操作感が異なると、iPhoneユーザーは学習コストがかかり、ストレスを感じる体験になってしまいます。

GoogleはAppleが出している「Human Interface Guidelines」に準拠したUIを作成することで、シームレスで一貫性のある使い心地を実現しようとしているのでしょう。郷に入れば郷に従え、と言いますが、ただ準拠するだけではサービスの個性や世界観が失われかねません。一貫した使い心地を追求する中でどうアプリの個性を出していくか。アプリをデザインする人間にとって、もちろん私もこの論点からは逃れられないのではないでしょうか。iOS向けのGoogleアプリがどのようなデザインになるのか、楽しみです。

バンダイナムコグループ、2022年4月からロゴマークを変更。

https://www.bandainamco.co.jp/cgi-bin/releases/index.cgi/press/10483?entry_id=7281

2021年10月1日、バンダイナムコグループは企業理念体系を改定し「パーパス(存在理由)」を制定することともに、新ロゴマークへと変更することを発表しました。公開された新ロゴのデザインには、日本のマンガ文化を象徴する「吹き出し」をモチーフにデザインされています。そして企業名の表現方法は、オレンジ色のシンボルを背景に白文字で表示するデザインから、マゼンタカラーの吹き出しで囲ったデザインに変更しました。その他、パーパスとして挙げられた「Fun for All into the Future」を併記したバージョンも公開されました。

デザインが大幅に変わったことで、SNS上では「あの馴染みの深いオレンジロゴがなくなってしまう」「表情のないロゴになってしまった」といった声が寄せられています。しかし、長年親しまれたものを変更する理由は決して視認性の改善やフラット化のトレンドに乗るなどビジュアル面の考慮だけではありません。ロゴマークは組織のブランドイメージを伝える重要なアイテムであり、今回更新されたかたちには世界中のファンとコミュニケーションし、つながりながら、バンダイナムコのエンターテインメントを創り上げていくという組織として新たな決意も凝縮されています。バンダイナムコは今回のロゴ変更によりグループの一体感とグローバル市場におけるブランド価値の向上を目指すことを表明しましたが、この変更が果たして良い方向に作用するかどうかは今後期待できるところです。

その他

「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」俳優らがYouTubeで若者に投票呼び掛け

https://www.youtube.com/watch?v=Ygtmbwj0sV4

2021年10月16日、 選挙投票を呼びかけるプロジェクト「VOICE PROJECT」の約3分の動画がYouTubeで公開されました。VOICE PROJECTは10月31日の衆議院議委員選挙にむけた、「一切の政党や企業に関わりのない、市民による自主制作プロジェクト」です。映像作家の関根光才(こうさい)さんを中心に、映像プロデューサーの菅原直太さん、大越毅彦さんの3人が発起人となって企画したとのことです。

このプロジェクトの優れた点は、著名人が自らの言葉で発言するというコンセプトだと考えます。若者の投票率の低い状態が長く続いていています。アメリカではスターが支持政党を公言したり、政党員だったりするのが当たり前で、政治はオープンに語られます。一方で日本では教育現場で政治思想を語られることが少ないため、子どもの頃から政治に関する発言に触れられる機会に乏しいのが現状です。そのため、政治的発言は重く捉えられる傾向があるのでしょう。動画内では「政治への関心を表現できる場が選挙」であり、選挙という「プロセス」に参加する意義が、著名人の言葉で強く語られています。「選挙に行くことになんの意味があるんだろうって思ったこともあった」という発言から著名人も市民の一員として同じ感覚を持っているという身近さを感じられます。そんな「身近な」著名人が持つ影響力を活かしたメッセージは説得力が高く感じられるのではないでしょうか。プロジェクトの今後の動きに注目したいです。

新型コロナウイルスの流行により、政治と自らの生活の繋がりを意識する機会も増えたはず。社会の一員としてGoodpatchのメンバーも積極的に政治に向き合っていきます。#わたしも投票します


以上、10月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
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