2021年4月10日に日本CTO協会が開催したオンラインイベントDeveloper eXperience day 2021 に、グッドパッチの代表取締役社長/CEO 土屋 尚史、プロダクトDiv エンジニアリングマネージャー西山 雄也と、プロダクトDiv プロダクトマネージャー大竹 智史が登壇しました。

「プロダクトのコンセプトを体現するチーム」をテーマに、PO/CTOの離脱という危機に直面した際、どのように乗り越えたのかお話しました。本記事では、登壇セッションの様子をお届けします。

登壇者紹介

土屋 尚史(株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 / CEO)

2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。「デザインの力を証明する」というミッションを掲げ、様々な企業の事業戦略からUI/UXまでを支援し、企業価値の向上に貢献。ベルリン、ミュンヘンにもオフィスを構え、世界で200名以上のデザイナーを抱える。2020年6月、デザイン会社として初の東証マザーズ上場。
Twitter:@tsuchinao83

西山 雄也 (株式会社グッドパッチ プロダクトDiv エンジニアリングマネージャー)

慶應義塾大学環境情報学部卒業後、インターネット普及期からスタートアップを中心にWebアプリケーション開発に従事。フリーランスのフロントエンドエンジニアとして新規事業に参加したことをきっかけに、2017年にグッドパッチにジョイン。プロダクト DivにてProttの開発・運用に携わった後に、Strap事業立ち上げの開発責任者を担当。現在もStrap/Prottの開発とエンジニアのマネージメントを務めています。
Twitter:
@nsyee

大竹 智史 (株式会社グッドパッチ プロダクトDiv プロダクトマネージャー)

2017年入社。BtoB SaaSのグロース/BtoCマーケットプレイスのプロダクトの立ち上げや大手製造業の商品企画(エスのグラフィ調査/コンセプト立案)などの案件を担当。2020年9月よりStrapのプロダクトマネージャーを担当。
Twitter:
@otktko

セッションレポート

デザイナーとエンジニアの共創で組織崩壊を乗り越える

 

土屋:今 Goodpatchの東京オフィスにはエンジニアが22名います。4年前はエンジニアが100名ぐらいいて、40%近くがエンジニア。デザイナーよりもエンジニアが多い会社でした。今はエンジニアの方が若干少ないですね。

次に、Goodpatchメンバーの前職の業界についてのアンケートです。事業会社が43%で、受託開発をやってる会社が21%。事業会社からデザイン会社に転職してきてるのが結構面白いですね。さらにGoodpatchを選んだ理由としては、「デザイナーと一緒に働きたい」が一番高いです。

西山:コラボレーションする形ではなくデザイナーの指示通りに作る環境で取り組んでる方もいますね。

土屋:そうですね。エンジニアとデザイナーがあまり良い形で共創できてないことが理由でGoodpatchに入社してるんです。

フェーズ0、苦悩の時期

土屋:Goodpatchではリンクアンドモチベーションの組織サーベイを半期ごとに実施しモチベーションスコアを測っています。そのモチベーションスコアが、今から約3年前にCCCというかなり低いスコアに落ちてまして。偏差値でいうと46.2と同じ感覚です。そこからだんだん改善して今は非常に高いスコアを維持してる。その変遷を詳しく説明していきたいと思います。

フェーズ0、2018年苦悩の時期。今日は良い話だけじゃなくて泥のような生々しい組織崩壊時の話をしたいと思います。当時Prottというプロトタイピングツールの v.2を作ろうという話になっていたのですが、長期化してしまったんです。その上、投資の回収が見込めないと考えチームを大幅縮小。CTOの退任に至りました。

2016年当時、Prottはかなり先進的なツールだったんです。でも途中からAdobeや海外のスタートアップの企業が同様のプロトタイピングツールを出してきて。今のままの構想だと海外のツールに対抗できないと判断し、CEOの僕がグローバルで戦えるツールにすることを目標に作り直そうと言い出しました。

今思えばちょうど組織崩壊に入っていく入り口でしたね。

Prott v.2を作るために海外のクリエイティブエージェンシーのマネージャーをPMに迎えたり、ベルギーの優秀UIデザイナーを採用したり、相当なタレントが揃ったって感じでした。

西山:タレントも揃ってる上に国際的。まさに最強のチームじゃないかなと思ってました。

土屋:大きさにしても30人以上。そんなチームだったのになかなか開発が進まなかったんですよ。

その後になぜか新しいプロダクトを作ろうという話になったのですが、1年間ずっとワークショップをやり続けてました。エンドレスワークショップ。苦悩の期間でしたね。

西山:そうですね。僕が参加した時もずっとワークショップをやっていて、リリースは翌年の後半。先が見えない感じで、ずいぶん長いスケジュールだと思いました。

土屋:結局Prott v.2開発の意思決定を2016年にしてから約2年後の2018年。全然プロダクトが出来上がってなくて先が見えなくなりました。さらに経営判断を下さないといけない状況。当時途中からグッドパッチに入ったCTOだった事業責任者がその段階で状況を変えることは難しくて、開発を全てストップするという決断をしました。

結果として、チームを半減させないといけないという状況に。半分以上のメンバーがクライアントワークの部署に異動してもらいました。自社プロダクト開発の部署として入社してるメンバーが大半だったので離職も防げなかったですね。

西山:すごい優秀なメンバーで、チームワークも良い状態。でもなぜか結果には結びつけられなくて、すごい悔しい気持ちでした。その時若いメンバーを見てると成長の機会がなくなった感覚があったので挫折感と喪失感を感じてました。

土屋:他の部署からはプロダクトDivをどう感じてましたか?

西山:スーパースターばかり集まってるチームだったので、なんで上手くいかないのかなって謎でした。ある日クライアントワークのメンバー80人が集まった時に、CTOが謝罪をすることがありました。質問責めされるし、後日、社内の情報共有ツールで批判してる記事が投稿されたくさん良いねがついたりとか。見ていて辛かったですね。

土屋:その時点でプロダクトDivチームは半減して9名ほどでした。このチームに残ってどうする?という雰囲気で、追加投資しないというルールも決めていたので徐々に死に行くプロダクトに立ち向かう状況でした。

大竹:責任感が強いメンバーが残っていました。でも売上を上げている他部署メンバーからプロダクトDivチームへ冷たい目線が向けられることもありました。

フェーズ1、全員がオーナーシップを持つチームに。

土屋:全員がオーナーシップをもつチームで乗り越えるというフェーズに入っていきます。当時のCTOがやめてエンジニアの在り方が問われる時期でした。

西山:これからエンジニア組織がどうなっていくのかが不安でしたね。

土屋:エンジニア組織を構成する時にトップ、CTOの存在は大事です。そんなCTOがいなくなって、全エンジニアと「グッドパッチのCTOはどんな人?」をテーマに議論しました。グッドパッチのCTOってこういう要件が必要だよねと洗い出した結果、そんな人はいないという話になって。自分たちでどうにかしていかないといけないという結論に至りました。

西山:まず、エンジニア間の壁をなくすというところに注目しました。僕がエンジニアで参加した時に思った問題点は縦割り組織のためコミュニケーションにコストがかかってるという点でした。フロントエンドチーム、バックエンドチームそしてモバイルチーム、さらにはデザイナーチームといった多数のチームが存在していました。

チームが分かれてると上長を通じて依頼する形になりコミュニケーションがワンクッション多く発生。意思決定がスムーズにできませんでした。そこでエンジニアの壁を取り払いたいと思いました。

技術の集約で、個々のスキルのギャップを乗り越える

StrapチームはPrott v.2チームに比べてコンパクトなチームだったので必要な機能に優先順位をつけて開発リソースを集約できるチームにしたいと思いました。例えば同じエンジニアでバックエンドの優先度が高い人のタスクを取りにくるとか誘導的なチームで今組んでいます。

土屋:AndroidしかやってないエンジニアとかiOSしかやってないエンジニアがいた中で領域関係なくAndroidエンジニアすらもウェブ書こうねってなってたんですよね。すごいなと思いました。

西山:そうですね。Strapが正式プロジェクトになった時はウェブアプリケーションを最優先にしていきたかったのでエンジニアそれぞれスキルの壁を技術の集約で乗り越えました。具体的に、言語はTypeScript、JavaScript。サーバーFirebaseにしました。運用をあまり気にしないバックエンドを選ぶことでバックエンドエンジニアの負担を減らす。バックエンドエンジニアがフロントエンドも書いてフロントエンドエンジニアがちょっとしたファンクションを書く。ツールチェーンで領域の行き来がさらにしやすくなりました。

モバイルエンジニアでも親しみやすいFirebaseを使うことでモバイルエンジニアも抵抗なく使えるようになってフロントエンドもバックエンドも書くような体制になりました。

デザイナーとエンジニアの架け橋「UXエンジニア」

 

西山:エンジニア間の壁をなくした後、共創で重要なキーになるのがUXエンジニアです。デザインとエンジニアリング両方の知見が必要なのでデザイナーとエンジニアの架け橋になる大事な役割です。

土屋:あえてUXエンジニアというポジションを作ったんですか?

西山:そうですね。設計面においてエンジニアの方が得意な部分があります。特にプラットフォーム、技術を応用して意思決定をするところとか。UXエンジニアという言葉自体を意識したことはないです。ただそれができるフィッシュというUXエンジニアがいて実践しています。僕も領域を超えていくようなタイプなのでデザインもやってみたいというメンバーがいれば投資していけるような組織づくりに心がけています。

土屋:エンジニアとデザイナーの共同作業でStrapチームならではの特徴ってありますか?

大竹:ユーザーストーリーをプロダクトチームのインプット材料とするチームも多いと思います。「?は?ができる」という表現ルールがあるのですが、このユーザーストーリーの粒度には段階があって、ユーザーストーリーを書く前段階でどれくらい仕様が固まっているか?によって変わります。起票者側が要求、要件、基本設計、詳細設計とどこまでの工程を担っているかによって変わると思います。開発チームが進んでいてです。開発スプリントを回す上で、ベロシティを短期的に安定させるために、ある程度がっちり決めて渡すチームも多いのかなと。

これは成果物の前工程跡を共有したり、インプットの段階からイシューを分析したりするところなど、エンジニアとデザイナーが一緒に探索型のインタビュー、さらにシナリオベースのテストを行ったりするところが独自だなと思います。

最後に

以上、Developer eXperience day 2021のイベントレポートをお届けしました。エンジニア組織の新しい在り方、組織づくり、そしてデザイナーとエンジニアの共創の重要性が述べられました。

Strapチームではデザインの力を信じるエンジニアを募集しています。興味がある方はこちらのリンクから気軽にご連絡ください。

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