Goodpatchでクライアントワークを行う組織であるDesignDivisionには、2021/12現在100名以上のソフトウェア、ブランディング、組織など多方面なデザインに関わるメンバーが所属しています。 今後も事業・組織ともに拡大していく中で、組織課題の解決やクライアントワークにおける提供価値の拡大を支えるチームとして、DesignOpsチームが2021年の春から正式に活動開始しました。

今回は海外のDesignOpsの機能を整理しながら、Goodpatch内のDesignOpsチームについてご紹介します。

なぜDesignOpsが必要なのか

DesignOpsとは、Design Operationsの略称で組織内でデザイン業務を行うにあたり各種機能を整備し、デザイン業務やデザイナーを最大化する役割を担う機能または機能を持ったチームと言えます。

Definition: DesignOps refers to the orchestration and optimization of people, processes, and craft in order to amplify design’s value and impact at scale.

(定義:DesignOpsは、デザインの価値と影響を大規模に拡大するために、人、プロセス、技術を組織化し、最適化することです。)

参照:https://www.nngroup.com/articles/design-operations-101/

小さなデザインチームであれば、日々のデザイン業務はお互いの認識がとれた状態で個々人の裁量で推進することができます。
ただ、50人やGoodpatchのように100人というデザイン組織になってくると各々のデザイン業務を細かに理解することが難しく、その結果デザイン業務がかぶって同じことに工数をかけたり、デザイン品質の担保も人数が増えれば増えるほど一定レベルを保つのが困難になることもあります。
そのようにデザイナーが行う業務の中でメンバー同士のコラボレーションを生み出したり、デザイン品質の担保や向上を個人に依存するのではなく組織の仕組みとして担保することがDesignOpsの役割となります。

ここで重要なのは、DesignOpsは組織におけるマイナスをゼロにするだけのチームではないと思っています。
もちろん業務効率化にむけて仕組みの構築やアップデートを行いデザイナーをサポートする役割を主として担いますが、サポートするだけでなく最大化することがDesignOpsの本質的な目的として捉えています。

GoodpatchのDesignOpsチームのミッションでは「Empower Designer. / DesignDiv. のデザイナーをエンパワーする」を掲げ、デザイナーをサポートするだけでなく時には引っ張り上げ、組織に所属するデザイナーをエンパワーすることを大きな目的として活動しています。

DesignOpsMission

デザイン業務の効率化によって生まれた時間で、デザイナーにしかできないより創造的な仕事をする機会を提供したり、個々人のコラボレーションを生み出す場を作ること、デザイナーキャリアにおいてより多くの可能性や選択肢を伴走し組織の中で見出すことなど、デザイン組織自体に価値提供することもDesignOpsの役割として捉えています。

DesignOpsの理解を深める

日本では、規模の大きいデザイン組織が少ないのもありまだまだDesignOpsに関する情報は少ないように思います。海外を見ると具体的な事例や体系化されたナレッジがシェアされており、InVisionが運営するDesignBetter.coでは、2018年にDesignOpsHandbookとしてDesignOpsの具体的な取り組みを行っている先進的な企業からノウハウを吸い上げ、体系的なDesignOpsの仕組みをまとめています。

▼DesignOps Handbook
DesignOpsHandbook

Handbook内では、DesignOpsの実践に3つの重なり合う領域で定義しています。

  • How DesignOps works
    How DesignOps works引用:DesignOps Handbook IntroducingDesignOps
  • Business Operations
    事業運営に焦点を当てた領域で、デザイン業務において予算的または政治的資本の調整を実施します。
  • People Operations
    採用・育成に焦点を当てた領域で、デザイナーに特化した採用、育成に専念し実施します。
  • Workflow Operations
    デザイン業務に焦点を当てた領域で、社内におけるデザインのプロセス整備やツール整備、プロジェクトの評価基準など、デザイン業務における各種フローの整備を実施します。

3つの領域は、独立した領域として成り立っているのではなく重なり合っていることがポイントだと考えています。
実際、GoodpatchのDesignOpsチームでも各領域別でミッションを持っていますが、メンバー間でのコラボレーションやサポートも頻繁に行っており、各領域を主としてOps全体で組織施策を実施していく必要があります。

GoodpatchのDesignOpsチーム

2021年12月現在、GoodpatchのDesignOpsの機能としては、下記イシューを主としメンバーが構成されています。

GpDesignOpsIssue

各イシューに対してどういったメンバーがどのような動き方をしているか簡単にご紹介できればと思います。

採用

採用では、元々全社の中途採用のメンバーがより事業部の戦略に合わせた人材採用を推進するためHRBPとして、DesignOpsに所属しています。また、そのHRBPを起点として各専門性ごとにリクルーターポジションを新設し、より専門性の理解が高い状態で採用業務を推進しています。
各専門性のマネージャーと連携し必要な人材像の解像度を上げながら採用オペレーション業務の推進と業務効率化のためのオペレーション整備を行っています。

育成+メンバーエンゲージメント

デザイナーという専門職において成長環境としての育成の仕組みとエンゲージメントは強く結びついていると考えています。
その中での育成+メンバーエンゲージメントでは、元々デザイナーとして活躍していたメンバーが主体となり、メンバーの目標設定の仕組みや社内メンターの研修プログラム作成、コーチングプログラムの実施など育成に関わる仕組みの構築を行っています。
また、パルスサーベイなど短期的なメンバーのコンディションを把握する仕組みの導入を進めています。

ナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントでは、各プロジェクトでの具体的な実施ナレッジの蓄積や組織内でシェアイベントの運営を主として、Goodpatchにおけるデザインプロセスの体系化を目指し、具体的なナレッジ蓄積と抽象化した汎用的なプロセス化を目指し各種施策を実行しています。

参考:デザイナー組織で「Unlearn」する取り組み

ツール開発・プロセス整備

ツール開発・プロセス整備では、デザイン業務で利用できるツール開発やプロセス整備をメインとしてデザイン業務の効率化だけでなく、再現性や品質の向上を目指した取り組みを進めています。

以上は現状の機能として持っているものとなり今後拡張していく可能性は十分あり、InVisionのHandbook内で示されているすべての機能を満たしているわけではありません。組織によって重要視するべきオペレーションは可変的であるため例えば、海外の一般的なDesignOpsで主体的に話されるデザインシステムは、クライアントワークという特性上構築や運用のオペレーションは発生していません。(クライアントワークとしてプロジェクトごとでの構築や運用サポートは行っていたり、プロジェクトを横断して汎用的なWebApp用のデザインシステムの構築は検討中です)

DesignOpsで組織に向き合う面白さ

私自身もクライアントワークでUXデザインやサービスデザインを主としてデザインに関わって来ており、現在はクライアントワークからは離れDesignOpsメンバーとしてナレッジマネジメントの推進に取り組んでいます。
デザイナーとしてデザイン業務から離れることは、デザインを行ってきた経験からすると少し寂しい部分もあるのですが事業や組織という目線で課題解決や仕組みを構築していくことは、ある種UXデザイン、サービスデザインにも近いところもあると思っています。

また、組織の課題はすぐに解けない課題が多くそこに向き合えるのは一つの面白さだと思っています。すぐに解決出来ないから中長期的に施策を積み重ねていったり、今は解決できないけど組織成長に合わせて解決できる課題があったりと考えることは尽きません。

遠きに行くは必ず邇(ちか)きよりす

着実に歩みを進め、大きな課題を解決するそのあたりがDesignOpsでの面白さだと思っています。

日本でもデザイン組織を持つ企業は増えてきており、組織の拡大とともにDesignOpsの機能をもつ企業も増えてくると思っています。
より重要性が増すであろうDesignOpsの具体的な取り組みや事例を今後も機会があれば紹介していければと思っています。

また、DesignOpsチームでは、デザイナー採用に関わるメンバーを募集しています。少しでも興味がある方はぜひご連絡ください。

【Design Div】Design Ops採用担当