一応ペルソナ作ったけど、意味あったのかな──。

デザイン思考やUXデザインを学ぶときや、ユーザーのことを考えてサービスやプロダクトを作ろうとするとき。ほとんどの場合、ユーザーの「ペルソナ」を考えることになるでしょう。

ただ、いざペルソナを作ったはいいものの、それをどう使えばいいのかよく分からず、半ば「放置状態」になっているという方もいるのでは。または、制作物を仕上げてからしばらくして、結局あまりペルソナを使わなかった、と反省するケースもよくあります。

作るのは簡単に見えても、ペルソナを使いこなすのは意外と難しく、「ペルソナ作って、それからどうするの?」という本もあるほど。今回の記事では、そんなペルソナを作る目的を改めて示した上で、最大限に生かす手法をご紹介します。

ペルソナを作るのは「サービスを選んでもらうきっかけや理由を作る」ため

生かし方をご紹介するにあたって、そもそもペルソナとは何か、なぜ作るのかを改めて振り返ってみましょう。

ペルソナを一言で説明すると「架空の具体的なユーザー像」です。具体的には、ユーザーインタビューなどの調査を基に、プロダクトやサービスを利用する人のゴール(得たいもの)を明らかにし、その過程でのふるまい・行動をユーザーの典型として表現したものです。

ペルソナを作る目的は、ずばり「サービスがユーザーにより深く受け入れられるようにする」ため。例えば、カレーを提供するというお店やサービスに関する体験を考えるときに、

  • スパイスなどの風味を含めて、じっくり味を楽しみたいご年配の方に向けて届ける体験
  • 作ること自体も楽しんで、みんなでワイワイと食卓を囲みたい子連れ家族に向けて届ける体験

の2つでは、内容が大きく変わるでしょう。ここに、具体的なユーザー像を考える理由があります。ゴールや目的を明らかにした、具体的なペルソナを本当に満足させるサービス体験を作ることで、他のサービスではなく、自分たちのサービスを選んでもらえるきっかけを作ることができるのです。

他との差異が分からず使われなくなってしまう、ありふれた体験ではなく、より特定の人に強く受け入れられる体験(サービス)を作る。これがペルソナを作る目的なのです。

ペルソナは「ユーザーシナリオ」に使い、UIデザインに生かすもの

ペルソナはサービス・プロダクト開発のさまざまな場面で生きるものではありますが、最も重要なのは「ユーザーシナリオ」への活用です。

そのペルソナだからこその行動と照らし合わせることで、サービス・プロダクトの中心に、どんな価値や内容を据えるべきなのかの検討に使います。さらにユーザーシナリオからオブジェクト抽出が行われ、その先でUIデザインに生きることになります。

具体例として、旅行での宿泊施設探しのアプリを検討する場合を考えてみます。
ユーザーリサーチを行い、よくあるパターンとしてこんな方が見つかったとしましょう。

  • 目的地(観光したい場所)が決まっている
  • 観光したい場所を巡るため、中心となる主要駅から近いところで、できる限りいい宿を探したい

この人の宿探しのシナリオを考えるとおそらく、

  • テレビやSNSで話題のスポットや観光地を見つける
  • 「“土地の名前”(札幌駅) ホテル」と検索をする
  • 複数の宿の中から、自分の宿泊予定日程で空きがあり、かつ予算にあった範囲の施設を絞り込む
  • 口コミを見ながら良いところを決める

といった流れになりそうです。この人向けに宿探しのサービスを提供しようと思うと、必要なオブジェクトとして、「目的地」「日程」「予算」といったオブジェクトが上がるはず。それをアプリの中心に据えると、Booking.comのような画面になるでしょう。

目的地や宿泊日程からの検索を重視したBooking.comのUI

一方で、さまざまな人にインタビューをするうちに少なからず、旅の目的ややりたいアクティビティが先に思いつき、それができる場所・併設された宿泊施設を探す人もいることが見えてきました。この人の宿探しのシナリオは、以下のようになるでしょう。

  • 「ウィンタースポーツ 体験」「子供と楽しめる場所」などと検索
  • 自分たちのやりたいアクティビティに近いものを見つけ、それに付随して泊まれる場所を探す

このような方に向けて宿探しのサービスを提供する場合、最初の例と異なり、必要なオブジェクトとして「旅の目的」のような要素が出てくるはずです。それがアプリに落とし込まれると、Airbnbのような画面になるでしょう。

旅の目的カテゴリから気になる宿泊先を閲覧できるAirbnbのUI

このようにペルソナは、その人だからこそ行うユーザーシナリオに生かされるべきであり、そのユーザーシナリオから、サービスやアプリで行えるべきことや伝えるべき内容へと落とし込まれていくのです。

ペルソナに「余計な情報」を入れないように注意しよう

このように、ペルソナを後のサービス・プロダクト設計に生かすことから逆算すると、ペルソナに書き込まれるべき要素は、以下の4つで十分と言えます。

  • ゴール
  • その人を端的に分かりやすく示した名前
  • 価値
  • シナリオ(何が課題で、どう解決されることを望んでいるのか)

むしろこれ以外は、シナリオを決定づけるのに不要な情報であれば、書かれていなくてよいとも言えるのです。

たまに「ペルソナの私生活・趣味」みたいなものが書かれて「おしゃれな服を見るのが好き」などと書かれているケースがありますが、それは先述した旅行の宿泊先を決める例のユーザーシナリオを考えるのには不要です。具体的な情報が求められるものではありますが、必要以上の情報はかえって混乱を生んでしまいます。

ペルソナをより生かすために知っておきたいこと

ここまでペルソナの生かし方について、具体的な方法を説明してきましたが、よりしっかり実践するとなると、他にも

  • 調査した内容からペルソナを作るには、どのようにまとめていけばいいのか
  • 事業の都合も踏まえたときに、どうペルソナを作ればいいのか
  • 他にどんな生かし方、サービスプロダクトへの落とし込み方があるのか

など、押さえておきたいポイントはたくさんあります。

そこでグッドパッチは、2024年2月14日にLINEヤフー、medibaとの3社共同で、ペルソナの作り方から活用法までを解説するイベントを開催します。

当日は3社からの講義だけでなく、実務での困りごとを登壇者に聞ける「相談会」も実施するほか、イベント終了後にアンケート回答者特典として、ペルソナの作成をスムーズに進めるためのフレームワークをお渡しします。無料でご参加いただけますので、お気軽にお申し込みください。

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