9月が後半になっていくにつれて秋の匂いがしてきました。夜にはエアコンをつけずに過ごすことができるようになってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。今月もGoodpatchで話題になったサービスやトレンドをご紹介します!

サービス

IKEAのイノベーションラボ、SPACE10が閉鎖

IKEAのデザインリサーチラボSPACE10の室内画像

https://www.fastcompany.com/90944990/ikeas-radical-innovation-studio-is-shutting-down-forever

IKEAのイノベーションラボ、SPACE10が2023年8月31日をもって閉鎖されたことが分かりました。次世代の持続可能な生活を探求するラボとして、2015年にコペンハーゲンでオープンして以来、IKEAがどう社会課題を解決できるかのプロジェクト思案を行う拠点として発展してきました。

SPACE10がこれまで進めてきたプロジェクトの例としては、室内農業(都市型農業)システムで設計方法をオープンソースで公開している「Grow Room」、AIを活用し、ステレオタイプなソファのコンセプトを見直した「封筒に入ったソファ」など大変イノベーティブなものばかりです。

記事によると、SPACE10の共同創業者であるサイモン・カスパーセン氏は閉鎖の理由について、決してネガティブなものではなく「立ち上げたときに設定した目標はすべて基本的に達成できました」と述べています。

SPACE10は利益の追求や単なる技術の探究のための施設ではなく、気候変動や食料問題など社会課題に対するIKEAのビジョンと取り組む姿勢、そのアイデアの源泉が生まれてきたスペースと言えます。今回の閉鎖は、SPACE10というスペースで行われていたイノベーションをIKEA内部で実行できる構造ができつつあるということだとも考えられます。たとえSPACE10という物理的な空間がなくなっても、今後はIKEA本体がドライブしていくことを期待したいですね。

「Figma to STUDIO」ベータ版がリリース

Figma to STUDIO Beta の Weekly Update のOGP画像

https://studio.design/ja/figma-to-studio

2023年8月21日、STUDIOはFigmaで作成したデザインを、STUDIOのWebサイトに変換できるベータ版機能「Figma to STUDIO (Beta)」を公開しました。STUDIOはCMS付きのWebサイトをノーコードでデザインして公開できるツールです。今まではFigmaで作られたデザインをWebサイトとして公開するには、1からSTUDIOのGUIで作り直す必要がありましたが、今回のSTUDIOのベータ版機能によって、FigmaでのWebデザインからサイト公開までの流れがかなり効率化されそうです。

ベータ版機能の使い方は非常に簡単で、ベータ版プラグインをFigmaにインストールし、Figmaのフレームを選択してデザインをコピーします。その後、STUDIOエディターでペーストしてインポートボタンを押せば変換されます。AutoLayoutを活用したデザインはもちろん、構造化されてないデザインもSTUDIOに最適化され、レスポンシブ化も自動で行われます。

変換が難しいデザインもあるようですが、今後フィードバックをもとにさまざまな機能追加や改善が予定されているとのこと。このようなデザインツールの発達によって業務が効率化されていくのが楽しみです!

デザイン

Amazon Prime Videoのブランドデザインがリニューアル

MotionやIcon、Color、Fontなどをパネルで並べ、Prime Video のブランドを表現した映像の一部です

https://www.pentagram.com/work/prime-video/story

Amazon Prime Videoのブランドデザインが刷新されました。昨今、さまざまなストリーミングサービスが存在する中で、統一的で目立つブランドアイデンティティが必要とされています。今回リニューアルを担当したデザインスタジオ「Pentagram」によると、Prime Videoの幅広い作品の奥深さの興奮や認知を高めるために、視聴者が何百ものコンテンツの選択肢に迷い込むようなエンターテイメントプラットフォームを想定したブランド戦略をデザインしたようです。

公開された映像からも分かる通り、Amazonのスマイルロゴの「えくぼ」を利用した、大胆で特徴的な曲線の形状やカラーが至るところで見受けられ、一目でプライムビデオだとわかる独自性を持ちながら、フレンドリーで陽気なフォントや絵文字を使用して、コンテンツへのワクワク感や楽しさが感じられるデザインになっています。

またこのブランドデザインには、ポップで明るい青を基調とするモードとシリアスで洗練された黒を基調とするモードが用意されており、Prime Videoの幅広いコンテンツに対応できる柔軟性も持っています。

ブランドデザインの話題や考え方を積極的にキャッチアップして、デザインに活かしていきたいですね。

ふるさと納税に「ヒラギノフォント」登場

SCREENグラフィックソリューションズのロゴです

https://www.screen.co.jp/ga/news/info/gan230904

2023年9月4日、京都市のふるさと納税の返礼品として「ふるさと納税パック ヒラギノ基本6書体」が新しく登録されました。

ヒラギノ書体は京都に本社を構えるSCREENグラフィックソリューションズにより開発されたフォントで、京都の地名「柊野(ひらぎの)」が名前の由来となっています。Macには標準でインストールされており、さまざまなロゴやサインで使われています。

今回登録された返礼品の収録フォントは「ヒラギノ角ゴシック体 W3/W6/W8」「ヒラギノ丸ゴシック体 W4」「ヒラギノ明朝体 W3/W6」の6書体、12フォントです。

スライドやポスター・ロゴなど、デザインの幅が広がる視認性の高い美しいフォントをこの機会にゲットしてみてはいかがでしょうか。

イベント

「日本のグラフィックデザイン2023」がスタート
展覧会「日本のグラフィックデザイン 2023」の画像

https://www.designhub.jp/exhibitions/gdj2023

日本グラフィックデザイン協会(以下、JAGDA)は、2023年9月1日に東京ミッドタウン・デザインハブにて「日本のグラフィックデザイン2023」を開始しました。

こちらは、アジア最大級のデザイン団体であるJAGDAが発行する、過去1年間のJAGDA会員の優れた仕事や作品をまとめた年鑑『Graphic Design in Japan』2023年版の掲載作品を実物と映像で展示されるイベントです。

身近な雑貨から、商品パッケージ、ロゴ、ポスター、ウェブサイト、映像、展覧会やショップの空間デザインに至るまで、約300点の作品が展示されており、さまざまな国内グラフィックデザインの今を見ることができます。

社内では、亀倉雄策賞を受賞した岡崎智弘さんの放送局の番組コンテンツ映像「デザインあneo あのテーマ」と、三澤遥さんの幼稚園のサイン計画「玉造幼稚園」に注目が集まったほか、藤田佳子さんがリブランディングされた金沢のホテル「香林居」の作品が素敵だと話題になりました。

たくさんの優れたデザインを見ることができる貴重な機会ですので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

Apple、新製品発表会「Apple Event」開催

黒い背景に、灰色と青のグラデーションがある砂のような質感でうねりのあるAppleのロゴが中央にあります

https://www.apple.com/jp/apple-events/

2023年9月13日(日本時間)、Appleは自社の新製品発表会「Apple Event」を開催しました。

今回のイベントの主な内容としては、主力商品であるiPhoneとApple Watchの新モデル発表でしたが、特にチタニウム素材を採用し3年ぶりの軽量化がなされた「iPhone 15 Pro」に注目が集まりました。

さらにiPhone 15シリーズでは充電・通信端子にUSB-Cを採用し、iPhone 15 ProではUSB3.0規格対応であることが話題になりましたが、外部デバイスとの接続が容易になったことで今後iPhoneの可能性が広がっていくことが期待されます。

また、今回のApple eventでは製品の発表以外にも環境目標であるApple 2030の現状報告もありました。Apple 2030では、2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラルの達成を約束しており、今回は再生素材で作られた複数の製品が紹介されておりました。

他にも新しいホームアプリのツールとして「グリッド予報」が追加されており、本アプリを使用することでユーザーは自身の電力網にあるクリーンでない電力が使用されている時間帯を理解することができます。

環境への取り組みは、企業だけではなくユーザーそれぞれの細かい努力に依存するところが大きく、重要性は理解しつつも行動するほどの意識を持つことができないユーザーは多いのではないかと思われます。こうした意識を1日の多くの時間を過ごすスマホから与えられることで、日常的に環境を認識する機会を増やすことに繋がるのではないでしょうか。

今回のイベントについて、多くのグッドパッチメンバーが社内Slackにて話題にし、チタン素材に興奮する声、購入を検討するにあたって円安を憂う声、「USB Type-C」について呼び方を改めるべきか悩む声などさまざまなリアクションが聞かれました。

トレンド

NTTドコモがマーケティング支援事業強化を目的にインテージHD買収

NTTドコモとインテージHDのロゴが縦に並んでいます

https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2023/09/06_00.html

2023年9月6日、NTTドコモ(以下、ドコモ)は、マーケティングソリューション領域におけるさらなる事業拡大のため、マーケティング支援事業を行うインテージホールディングス(以下、インテージHD)を連結子会社化することを目的に、株式の公開買い付けの開始および資本業務提携契約の締結をしたことを発表しました。

インテージHDは1960年に設立されており、マーケティング支援を主な事業としています。日本最大級の5万2千人の消費者パネルモニターを抱えており、データの分析、加工、またそれを活用したコンサルティングを行っています。

2012年にはドコモとインテージHDの両者で合弁会社の「株式会社ドコモ・インサイトリサーチマーケティング」を設立しており、ドコモの非常に大きな顧客基盤にアプローチしています。今回の子会社化を目的とした株式の公開買い付けは、9600万人のドコモクラブ会員のデータ収集をインテージHDのノウハウを活用してメーカー・小売企業のマーケティングを支援する付加価値の高い新事業を展開することを目的としています。

膨大なデータを活用する形で事業支援を行う取り組みにおいては、データの利活用に専門性が高くなります。すると、事業支援の内容がブラックボックスになってしまうことがあり、それに対しての説明責任と使いやすさを担保するシンプルさを両立させることは極めて難しくなります。これらの両立には、支援先の顧客像の明確化や課題、価値の言語化が重要になってくるため、デザインアプローチが重要になるでしょう。今後の動向に注目です。

OpenAI社がスタートアップ企業を買収

乱雑に敷き詰められたお札の上にスマートフォンが置いてあり、OpenAIという文字とロゴが表示されています

https://openai.com/blog/openai-acquires-global-illumination

2023年8月16日、「ChatGPT」の開発元であるOpenAI社がニューヨークのスタートアップ企業であるGlobal Illuminationを買収しました。OpenAI社はGlobal IlluminationをAIを活用したクリエイティブツールやインフラ、デジタルエクスペリエンスを構築している企業と紹介しており、ChatGPTをはじめとしたOpenAI社のプロダクトの開発に関わっていくとプレスリリースにて発表しています。

Global IlluminationのメンバーはInstagramやFacebookの初期から関わっているメンバーがおり、デザインディレクターを勤めていたメンバーもいます。こうしたことから、OpenAI社がデザイン面において力を入れていくのではと話題になっています。

また、他にもPixerやRiot Games出身のメンバーもいることからエンターテイメント性にも溢れるメンバーの獲得にも成功しており、今後のOpenAI社が更なる商業的な成功を目指すとされていることからもChatGPTを利用したユーザーの体験を更に拡張していくことを目的としているのではないかと考えられています。

ChatGPTは非常に有用なツールとして知れ渡っていますが、それらの活用の仕方はユーザーの発信にとどまっており、より一般のものとして広まっていくためにも体験的拡張は欠かせません。生成AIがバズワードにとどまらないためにも、どのように有効に活用していくのかをそれぞれが考えて社会課題の解決に繋げていくことが重要になってくるでしょう。

デジタル庁2周年で活動報告を発表

2022年9月-2023年8月 デジタル庁年次報告書と書かれた画像です。

https://www.digital.go.jp/policies/report-202209-202308

デジタル庁は設立から2周年を迎えた2023年9月1日に1年の活動報告会見を行い、YouTubeで配信しました。デジタル庁デジタル監である浅沼尚氏が、同庁の現状や提供サービスについて説明をする中で、「生活者・事業者・職員にやさしいサービスの提供」という文脈で今年リリースされたマイナポータルβ版について触れ、インターフェースを年内に改善するとし、「国民の安全・安心につながるサービスを優先的に提供する」と言及していました。

加えて、組織の現状として、ついに1000名を超える体制になったと発表していました。行政や民間出身のあらゆる出身があることはもちろん、雇用形態も様々、そして専門ユニットも20に増設したことで多様な専門性が共存する組織になったとしています。

デジタル庁が提供する行政サービスはもちろん、日本の行政組織の新たなケースとしても目が離せません。

以上、9月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!

過去の月間まとめ記事はこちらからどうぞ!