組織の変革期をきっかけとするブランド構築は、企業の価値を問い直す大一番です。例えば、新規事業立ち上げによるチーム発足や、事業拡大にともなう組織全体での目線合わせなど、あらゆる組織改編のタイミングが、自社のブランドに向き合うきっかけとなります。

新たな事業フェーズに挑む担当者にとっては、過去に前例のない業務や、組織の今後を左右する大きな決断が必要となる瞬間もあるでしょう。

ブランド構築のプロセスでは、顕在化している現状課題だけでなく、組織における潜在的な課題を言語化・共有し、伴走するデザインパートナーとともに将来に向けた解決策を導き出していきます。

この記事では、組織変革のタイミングで着手したブランディングを成功へと導くために、ブランド開発のおもなステップである「リサーチ・インサイト導出」「組織・事業価値の明確化」「VMV策定」「クリエイティブ開発」「ブランドアセット浸透」の視点から、気をつけるべきキーポイントをご紹介します。

① リサーチ・インサイト導出:スタートの関係構築がブランド開発の質を上げる

  • 初期段階で、様々な視点からの情報をフランクに共有する
  • 雑談やオフライン会議もブランド価値を生みだす原石になる

プロジェクトが開始すると、まずデザインパートナーは企業のあらゆる情報をインプットとして集め、企業の本質的なインサイトを導き出します。

この、初期段階で気をつけておきたい点は、担当者とパートナーとの関係構築です。

単なる受発注の関係にとどまることなく、パートナーとひとつのプロジェクトを並走するワンチームとして信頼関係を築いていくことが、ブランディングを成功へと導く大きな下地となるでしょう。

信頼関係を築く方法として、初期の時点で多くの会話や議論を重ねていきましょう。パートナーがインプットに集中できる時期は、自社についてより深く理解してもらい、インサイトを抽出する絶好の機会であります。

リサーチでは、おもに経営者や部門、クライアントへのインタビュー、さらに全社向けアンケートなどが行われますが、パートナーにとって必要な情報は、実はそれだけではありません。例えば、社内の雰囲気や正史に載らない会社のエピソード、創業メンバーの口癖まで、企業のあらゆる文化が、思わぬインサイトを導くこともあるのです。

コミュニケーションはオンラインのみに留めず、対面や来訪などを取り入れることで、さらなる気づきや企業文化を相互に共有できるでしょう。

現場でのコミュニケーションが難しい場合も、リアルな情報をパートナーに伝えることは可能です。アイスブレイクや会議中のちょっとした雑談も、ブランド開発にとって大切な情報源となるでしょう。

②組織・事業価値の明確化:ひとつのブランドストーリーを決めきる

  • 方向性を決める段階でチームの意見を統一する
  • 早期の決断力が共通認識を生み、ブレないアウトプットに繋がる

リサーチによるインサイトの言語化がなされると、次に、組織や事業価値を定義づける行程に進んでいきます。デザインパートナーは、企業の過去(歴史)、現在(課題)、さらに未来(会社がありたい将来像)の時間軸でブランド全体のストーリーを描き、共有できる形で言語化します。

ブランドストーリーの構築は、プロジェクトの足元を固める重要なプロセスです。3年後、5年後、10年後…と、自社がどんな姿でありたいかを共有し、これまでの歩みと照らし合わせることで、現状課題の本質が浮かび上がります。デザインパートナーはこの一連の流れをブランドストーリーとして言語化し、アウトプット開発を定義づける根拠としていきます。

この時点で注意したいのは、社内のメンバーの考えや方向性がばらつき、方向性がまとまりきらない状況です。経営陣や意思決定者、現場など、様々な立場から会社の今後に本気で向きあう段階のため、時に意見が平行線となる状況もリスクとして覚悟しなければなりません。

それらの解決の道は、意思決定者の勇気ある推進力です。この段階で、ブランドストーリーについて皆の意見を吸い上げ、まとめあげることで、その後のアウトプット開発の方向を着実に進行させることが可能となります。

③VMV策定:社内を巻き込むプロセスを目指す

  • 事業部やコアメンバーを越えてアイデアを発散する
  • 創業メンバーや経営陣と、現場のギャップを常に客観視する

組織・事業価値をブランドストーリーとして明確に定義できたら、いよいよあらゆるクリエイティブ開発の下地となるビジョン・ミッション・バリュー(以下、VMV)を策定していきます。

ブランドストーリーから導き出されるVMVや、会社を代表するタグラインなどのキャッチコピー、それらの背景を担うステートメントなど、ブランド価値の核となるメッセージは、自社の今後の在り方を導く旗印になっていくでしょう。

ここで重要なのは、チームが所属領域を越え、社内全体と連携プレーを行うことです。開発の時点で社内を巻き込むことには、その後の浸透をスムーズに繋げるメリットがあります。

刷新したメッセージを実際に活用するのは、現場で働く多くの社員です。つまり、それらのアウトプットは、社外に届く前に社内から支持・共感を得ている必要があるのです。

全社を巻き込む方法には、アイデアの段階でフィードバックを集める全社ワークショップやアンケートの実施が挙げられます。

さらに、アイデアや進行状況を知った社員が「自分にはどんな思いがあるか?」を考えるきっかけを作ることで、その後のブランディングを自分事化してもらう素地が生まれます。また、実際に声や意見を反映したメッセージには社員たちの足跡が残り、その後の共感や愛着も得やすくなるでしょう。

④ブランドを形にするクリエイティブ開発:リアルな自社目線で精度を上げる

  • 提案へのフィードバックでは、背景や意図を注視する
  • 個人の主観的な判断だけでなく、自社の将来像から考える

VMVが言語化できると、デザインパートナーはいよいよアウトプットの方向性を具体化したコンセプトを固めていきます。先述では、全社を巻き込むことの重要性についてご紹介しましたが、会社の規模や専門的な部分の検討、最終決定など、チーム内で判断すべき状況もあります。

特にロゴやロゴタイプといったビジュアルデザインなど、アウトプットを決める段階において、担当者個人の感覚だけではなかなか判断しきれない面もあるでしょう。VMVなどのメッセージについても、チームで最終的な決断を下すタイミングは必ず訪れます。その時は、チームのコアメンバーや経営陣など、少人数でアウトプットの細部まで考えていかなければなりません。

担当者に専門的な知識がなく、提案の判断基準に悩むとき、どのように進めることが適切なのでしょうか。

その解決策は、判断の視点をもつことです。提案内容の背景を探り、彼らの制作意図を理解することが大切でしょう。先に言語化した価値観からブレていないか、きちんと目に見える形で魅力的に表現されているかを振り返ってレビューすることで、具体的なフィードバックや判断が可能となります。

現場から共感を得たり、思い描く将来像をもたらすのはどんなアイデアなのか、という視点から意見を考えることが、より先鋭的な提案のブラッシュアップへと繋がり、結果としてプロジェクトをさらに良い方向へと導くでしょう。

⑤ ブランドアセット浸透:ガイドは守るものではなく、育てるもの

  • 完成形と捉えず、社内のあちこちで活用しながらアップデート
  • 身近に感じてもらうための環境づくり

VMVやロゴなど、ブランドアセットが確定すると、いよいよデザインパートナーとの並走に終わりが近づいてきます。ここで担当者にとって重要なのは、開発されたアウトプットが決して完成形ではない、と認識しておくことです。

刷新されたロゴやメッセージは、現場で活用されてこそ、本格的にブランド価値を発揮します。そのため、事前に社内を巻き込み、新しいコンセプトへの期待とモチベーションを高めるだけでなく、社内での発表後、誰もが手の届きやすいツールとして共有されることが必要です。

例えば、社内ポータルサイトのわかりやすい場所にアセットを格納したり、デザインやブランディング以外の事業部にも、活用方法を積極的に提案することなどが効果的でしょう。

様々なタッチポイントで活用を重ねることで、生まれる気づきやフィードバックから、アセットをさらに改善していくことが重要です。

刷新したブランディングをじょうずに自走するために、経緯が不透明な完成品だけを現場へ配るのではなく、社員の声をできる限り反映するプロセスを継続的に目指すことで、組織での混乱を防ぎ、着実なブランディングを実現できるでしょう。

まとめ:成功のカギは、組織を巻き込むブランディング

開発段階で、様々な現場の声を集めたり、社内の声をデザインパートナーと共有することは、現場が自分事化してブランディングを受け入れるための大きな手助けとなります。そのため担当者は、事業領域を越えて多方面にわたるコミュニケーションが必要となってくるでしょう。

そこで、担当者にじゅうぶんなリソースや、業務時間が確保されているかもポイントです。デザインパートナーとの並走を終え、社内で自走しながらブランド価値を育ていく観点から、これらの業務を短期的・部分的なものではなく、中長期的に捉え、サポートする組織の体制作りも大切です。

グッドパッチのBXチームにできること

グッドパッチのブランドエクスペリエンスデザイン(以下、BX)は、企業の本質的な価値から、よりよいブランド体験の設計・開発を使命としています。

サービスやプロダクトがユーザーに選ばれ続け、途切れない関係性を築くために、企業は価格や機能による差別化だけでなく、理念や価値観といった思想、つまりブランドへの共感を獲得することが重要です。企業と従業員の関係性も同様で、社員一丸で企業の理念に向かい、より強固な組織を作っていく必要があります。

さらに、組織の想いが一つになったサービスが世に広がることで、企業価値を高めながら、事業成長に貢献します。これが、グッドパッチのブランドエクスペリエンス(BX)の考え方です。

また、今回の記事でご紹介したデザイン開発プロセスを基に、BXチームは各企業の文化や課題感にあわせてフレキシブルに伴走しつづけます。

グッドパッチが過去に経験した組織崩壊の歴史からも、組織変革期におけるブランディングの本質価値を丁寧に言語化・デザインしたご提案を重視しています。

また、新規事業の立ち上げやブランド構築支援、採用ブランディングなど、あらゆるビジネス課題に対し、私たちはパートナーとして寄り添い、デザインの力で解決へと一緒に並走していくことを大切にしています。
グッドパッチのBX支援事例の一部はこちらです。

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こんなお悩み、お答えします

まずは、ブランディングについて御社の困り事をなんでもお聞かせください。

  • 新たな事業を立ち上げたが、関わるメンバーの指針となるビジョンとブランディングが必要と感じている
  • 事業が拡大し社員が増えているが、組織の一体感やミッションへの共感が薄れてきている
  • サービスを運営しているが、ターゲットや提供価値が整理されておらず正しくブランディングできていない

ビジョン策定からデザイン・実装への接続において必要なプロセスや観点など、弊社BXデザイナーが具体的なアドバイスをいたします。

相談相手となるBXデザイナー


難波 謙太 | BXデザインディレクター
イギリスロンドンにて14年間に渡りグローバル企業のブランド構築プロジェクトを担当。デジタルを起点としたブランド体験のデザインディレクションやクリエイター組織のマネジメントキャリアを経て、2018年にグッドパッチに入社。BXデザインユニットの統括ディレクター、スタジオディテイルズの取締役を努める。
主なクライアント実績:Honda、Canon、Jaguar、Nike、British Olympics


中林 保之 | BXデザイナー
広告制作会社のアートディレクターとして、数多くのデジタルプロモーションやインスタレーションなどの体験設計を担当。2020年にグッドパッチに入社し、コーポレートブランディングから映像などのプロモーションツールまで横断的なブランド体験の構築に携わる。
主なクライアント実績:SHISEIDO、every、三菱電機、Toyota Connected


石井 翔太郎 | BXデザイナー
イギリスロンドンにてデザインを学び、ヘルスケア・金融・スポーツ配信サービスなど幅広い分野のデジタルプロジェクトを経験し、2019年に帰国しグッドパッチに入社。新規サービスのVMV策定からグロースまで、リードBX/UIデザイナーとして大手SaaS事業の成長に貢献している。
主なクライアント実績:Suntory、Hitachi、Barclays、DAZN


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