2020年6月26日に開催されたオンラインイベント『【DX 異色の三者対談】消費者・企業・資本市場が求める真のデジタルトランスフォーメーションとは?』で、くじらキャピタル株式会社/共同創業者・代表取締役社長の竹内 真二氏と、ユナイテッド株式会社/ 執行役員 事業戦略担当の米田吉宏氏と、Goodpatch UX Design Lead 野田 克樹が登壇。

バックグラウンドが異なる三名がそれぞれの視点から考える、真のDXについて語りました。

本記事では、第一部の各登壇者による講演と第二部の三者対談の様子をお届けします。

 

登壇者紹介

くじらキャピタル株式会社 共同創業者・代表取締役社長 竹内 真二氏

リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレーなどを経て、2012年に実質1号となるファンドを設立。当時JASDAQ上場企業であった株式会社アイ・エム・ジェイ(IMJ)を非上場化し、4期連続最終赤字に陥っていた同社の再建に成功。2016年、アクセンチュアにIMJ持分を売却。2018年4月、くじらキャピタルを創業、代表取締役に就任(現任)。プライベートエクイティ(PE)に関する経験7年、M&Aアドバイザリーに関する経験21年。起業経験4回、Exit経験2回。

 

ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当 米田吉宏氏

慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストン コンサルティング グループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。

Goodpatch Inc. UX Design Lead 野田克樹

2017年4月新卒入社。千葉県木更津市出身、千葉大学工学部情報画像学科 卒業後、プロジェクトマネージャー / UXデザイナーとしてGoodpatchへ入社。約2年間UXデザイナー/プロジェクトマネージャーとして主に日系大企業のデジタル新規事業の立ち上げに携わる。2018年にはTBSテレビの新規Webメディア「Catari」の立ち上げからリリースまでを担当し半期社内MVPを受賞。2019年6月にはGoodpatch史上最年少マネージャーに就任し、現在はUXデザイナーのマネジメントも行う。

 

くじらキャピタル株式会社 共同創業者・代表取締役社長¦竹内 真二氏「DX、DXと言うけれど」

まず簡単に我々の自己紹介をします。

くじらキャピタルは、デジタル時代の全く新しいバイアウトファンドと標榜し3つのことに日本で唯一取り組んでいるバイアウトファンドです。1つ目、投資先企業をDXで再成長させること。2つ目、不振企業の再建に留まらず、その企業を業界におけるデジタルディスラプターに脱皮させる支援をすること。3つ目、その過程において人員リストラをしないということです。

実益を考慮したDXの定義

くじらキャピタルが実体験に基づいて実益を考慮したDXの定義からお話しさせていただきます。

我々はDXを、「顧客に一貫した最高の体験を提供することを目的に、デジタル技術を使って、ビジネスのあり方そのものを、継続的に変化させていく、全社的な営み」と定義しています。

これを我々は部分的なIT化、デジタル化と区分して考えています。

どこかのタイミングでディスラプターが業界に入ってきます。その際にこのような定義に沿ってDXを進めていかないと、その会社が存続できなくなるため実益があるので常にこの定義を考慮しています。

実体験から着想した揺るぎない信念

DXを成功させるために肝心なポイントを紹介します。1つ目、顧客体験が全ての起点ということ。2つ目、全社横断でないとむしろ有害ということ。3つ目、悩む前に作るということです。

この3つのDX成功の要諦は、我々が何百件とお手伝いした中で、落ち得る全ての穴に落ちて何度も死にそうになった実体験を元に体得しました。その為、揺るがない信念となっています。

1.顧客体験が全ての起点

これはDX成功の為に、これ以上にない大事な真理です。

顧客体験は、個々のツールやシステム、膨大なデータや既存オペレーションなどよりも大事なものです。しかし、大事だとわかっていても多くの企業は実践できていません。社内政治や組織状況などの話が絡み、途中から顧客体験を顧みなくなることが往々にしてあります。顧客体験に常に立ち返らないとDXは失敗してしまいます。

2.全社横断でないとむしろ有害

莫大な予算を投じたにもかかわらず、新しいサイロ(縦割り組織)が生まれ、ダメな業務がデジタルでさらにダメになり、顧客には大不評ということが起きます。

そしてさらに問題なのは、社員の間に「うちでDXは無理だ。」という敗北主義がうまれ、将来に渡って改革の機運がなくなることです。

3.悩む前に作る

デジタルの本質である、”すぐ作れる、すぐ直せる”ということを活かすために、悩む前にまず作るということです。これは極めて大事で、ほとんどの企業は発注力がありません。

一方、ベンダー側はトラブルを極度に恐れるため、最初に要件定義をして、仕様書を作成して、画面構成書を書き、工数を見積もるなどと、とにかくプロセスを踏みたがります。そういったプロセスを踏んでいると完成するのは大体1年半後になります。

現在、そのようなやり方では通用しなくなっています。悩むくらいならまずプロトタイプを作り、実物を見せて関係者の意見を聞き、修正して完成度を上げ、効果を実感してもらい社内ファン化し巻き込んでいくべきだと思います。こういうことがデジタルの良さなので悩む前にまず作るべきだと思います。

DXの定義とそれを成功させるためのポイントを紹介しましたが、ベンダーとしてそれを実現するのは非常に難しかったので、資本を武器にDX支援するくじらキャピタルを立ち上げました。言うは易し行うは難しなので、「DXには腕力が必須」だと考えています。

 

ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当¦米田 吉宏氏「事業から見るDX推進のポイント」

はじめに自己紹介とユナイテッドのDXに対する関わり方を紹介します。

私は元々、電通で広告プランニングやマーケティングROI向上支援等に従事し、その後、戦略コンサルティングを行うボストン コンサルティング グループに入社して、昨年ユナイテッドの執行役員に就任しました。

当社のDXプラットフォーム事業は、個人のトランスフォーメーションを促進させる事業と、企業のトランスフォーメーションを促進させる事業の2つから成り立ちます。本日は企業のトランスフォーメーションを中心にお話しします。

ユナイテッドは、これまでアドテクノロジー、コンテンツ、インベストメント、ゲーム領域と幅広い領域で事業を運営してきました。これらの事業を推進するにあたって、幅広い事業活動で培ってきたナレッジ多様なプロフェッショナルからなる人材基盤を活用し、今年から戦略コンサルティング、アプリ/システムの受託開発、アプリマーケ/システム運用を一気通貫で提供することで、企業のDXを実現するサービスを始めています。

私は戦略コンサルティングの経験が長いので、事業から見たときのDXのポイントについてお話しします。

事業サイドから見るDXの本質

事業責任者目線で考えると分かりやすいのですが、企業は結局はどんな手段を使ったとしても、事業としての売上を向上し、コストの効率化を実現して自社の利益を増やす必要があります。そしてDXのポイントはこの2点であると捉えています。

その中で特にデジタル技術やデータを活用して、ビジネスモデルや顧客との関わり方、社内オペレーションを変革していくことを総称してデジタルトランスフォーメーション(DX)であると捉えています。

DXにより期待される効果をいくつか紹介します。売上向上の例としては、顧客エンゲージメント向上による客単価の拡大や既存機能組織の強化、既存事業をディスラプトする新規事業の収益化などがあげられます。コスト効率化の例としては、コミュニケーションチャネルのデジタル化による営業にかかる時間短縮、デジタル活用によるアナログ業務の工数削減、データ/機械学習等の活用による自動化があげられます。

期待と懸念が渦巻くDX推進に必要なこと

DX化に伴う期待と懸念

DX推進を行う際、リーダーにはあらゆる方向から重圧がかかります。

例えば、顧客からは使いやすさが求められ、経営陣からは目的やROIが合うのかといった懸念を示されます。また、事業部からは業務に影響があるのか、ITシステム部門からはセキュリティの脆弱性を問われます。

このようにDX推進では、多くのステークホルダーの期待と懸念をマネージする必要があり、全社からの信頼と賛成を獲得することが非常に大切です。

ステークホルダーの期待を満たす4つのポイント

その中で、様々なステークホルダーの期待を満たすために4つポイントがあります。

1つ目は、誰に対しても目的や期待効果を明確に伝えるということです。

2つ目は、数値が難しい定性的なオペレーション/従業員への影響も適切に評価するということです。DX化は業務オペレーションや従業員の感情的な部分に大きく影響を与えます。期待効果まで数値化できなかったとしても定性的な影響を適切に評価した上でコミュニケーションを図ることが大切です。

3つ目は、あくまで向き合うべきは、顧客の不が何かを見極め、それをどう解消するのかが最優先であるということです。事情によって顧客は異なりますが、顧客の不が何でそれをどう解消するのかが起点になるべきです。手段であるDXが目的化してしまい、取り組み方がずれると周りもついてこなくなり、信任も得られなくなるので、顧客の不を最優先に考える必要があります。

4つ目は、どれだけ不を解消できてもUI/UXが悪ければ定着しないということです。

消費者は様々なデジタルツールに触れます。その中でUI/UXが優れていて使いやすくなければ定着化せず、DXの効果が結実しないので、UI/UXの磨き込みが非常に重要になります。

 

 

Goodpatch Inc. UX Design Lead¦野田 克樹「DXとデザインの幸せな関係」

まず、自己紹介とGoodpatchの説明を行います。

私は2017年にGoodpatchに入社し、UXデザイナー兼PMとして数々のデジタル新規事業立ち上げに携わってきました。TBSテレビさんの新規webメディア「Catari」の立ち上げや、三菱UFJ信託銀行さんの事業戦略やサービスコンセプト設計を務め、現在はUXデザイナーのマネージャーをしております。

Goodpatchはデザインの力でビジネスを前進させるグローバルデザインカンパニーです。「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンと「デザインの力を証明する」というミッションを掲げています。

2020年6月30日はGoodpatchの上場日ということもあり、Goodpatchのデザインの力を社会に広げていくことを目標に、日々頑張っています。主な事業は、デザインパートナー事業と、デザインプラットフォーム事業の二つです。今日はUI/UXデザインを強みに持ち、クライアントの新規事業立ち上げ、ブランド構築、デザイン組織支援などを行うデザインパートナー事業でどのようにGoodpatchがDXに立ち向かっているのかというお話をします。

企業の存在価値から紐解くDX

まずDX自体、企業の存在意義を達成するための手段でしかないと捉えています。

私の好きな言葉でドラッガーの『マネジメント』に記載されている企業の存在意義は、”企業の目的の定義は1つしかない。それは、顧客を創造することである”というものです。

企業の存在意義がなぜDXによって、活性化されるのかというお話しをします。

1.データの創造・蓄積と顧客体験価値(Experience)の向上の循環を実現

まず、DXの解釈を2つ紹介しようと思います。

1つ目が、DXはデータの創造・蓄積と顧客体験価値の向上の循環を実現するという解釈です。これは、今までデータが存在していなかったものをデータ化して、デジタル管理し、そのデータを元に体験にフィードバックして体験を向上させるループを回していくということです。

具体的には、昨今のビジネスはユーザーが使い続けたくなる体験やデータと体験価値の循環のデザインが重要になりました。それにより、今までよりもエンゲージメント、リテンション、解約率といった指標を追うことが大事になると思っています。

データを中心に据えたビジネスモデルを達成するには、インターフェースとなるタッチポイントで良い体験を提供して、データをきちんと取得することが重要なので、DXにおいても体験のデザインが大事になると考えています。

事例を紹介するとGoodpatchが支援させていただいた、リンクアンドモチベーションさんの「モチベーションクラウド」というサービスがあります。

実際に社員のモチベーションを可視化・数値化することで、社員のEX(Employee Experience)を高めるSaaSサービスです。まさにデータを新規創造したことで、従業員の体験が向上する例であると思っています。こうした新規事業の立ち上げもGoodpatchは携わらせていただいています。

2.全体最適されたオペレーションのDXによるコスト削減

中心となるデータの周りに体験があり、その体験からデータをフィードバックし合う関係を構築することは簡単ではありません。

さまざまなステークホルダーがいる中で、各タッチポイントで1つのユーザー体験を実現する必要があります。そのために、DXでは取得したデータを1つのデータベース上で管理することを達成しなければなりません。

ステークホルダーやファンクションが多い業界であればあるほどDXの障壁は高いのですが、それを超えた時の効果も大きいと思っています。Goodpatchでは、消費者目線のタッチポイントだけでなく、組織の内側まで入り込んで課題解決することで本質的なDXを達成しようとしています。

事例を紹介すると、ハンズラボさんとおこなった東急ハンズのセミセルフレジ iOSアプリのUI/UXデザインを担当しました。

店舗内でレジの列が常に込み合っているという課題を解決するために、レジを回す店員さんのオペレーションや、それを簡易化するためのセミセルフレジの体験のありかたなど、組織とプロダクトの両面にアプローチしました。このプロジェクトはオペレーション・組織・UIのDXを達成した事例の1つです。

冒頭で紹介したドラッカーの企業の存在意義をDX目線で私なりに翻訳してみました。”組織横断で顧客データを創造・管理出来る土台を作り、各タッチポイントの体験価値を向上する”というのが、DXの定義であると思っております。

組織力でDXに立ち向かう

デザイナー人材を抱えているGoodpatchがデザインパートナー事業において、どのようにDXに対して立ち向かっているのかという話をします。

こちらは経済産業省が出しているDXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~にある1ページです。

DX人材の育成・確保という文脈で、Goodpatchのようなベンダー企業に求められる人材がこのように言及されています。

  1. デザイン思考を活用し、UXを設計し、要求としてまとめ上げる人材
  2. 求められる要件の実現性を見極めた上で、新たな手法を使った実装に落とし込める人材
  3. スピーディーに変化する最新のデジタル技術を詳しく理解し、業務内容にも精通するITエンジニア

ここから、DXにおいて”業務内容を解像度高く把握し、ユーザー起点でUXを設計、拡張性・柔軟性高い実装に落とし込めるソフトウェアデザイン人材”が必要とされていると考えられます。

Goodpatchはデザインパートナー事業において、ブランドエクスペリエンスデザイン、ビジネスデザイン、エクスペリエンスデザイン、ソフトウェアデザイン、エンジニアリングという組織を束ねています。

ブランドエクスペリエンス(BX)デザイン、ビジネスデザインの役割や事例を紹介した参考記事:
https://goodpatch.com/blog/brand-and-business-design/

そこでGoodpatchは”業務内容を解像度高く把握し、ユーザー起点でUXを設計、拡張性・柔軟性高い実装に落とし込めるソフトウェアデザイン人材”というDXに必要な要件を組織で解決しようとしています。

これを実現するために重要なのが、メインのカウンターパートが経営層であることです。Goodpatchのデザインパートナー事業ではできるだけ上流から関わらせていただくことを目標としており、クライアントの事業戦略から開発までを一気通貫で行ったうえで真のDXを叶えることがGoodpatchのビジョンとしてあります。

また、最後に一言添えると、DXとデザイン経営を推進するには経営トップレイヤーからの強い意思決定が不可欠だと思っています。

 

Q&A

QA1『業務や部門が多岐にわたるDXを推進する際にどういう風に始めるべきでしょうか?』

野田:

完全にポジショントークになりますが、特に大企業の場合、外部のプロフェッショナルを入れて実績を作ることが大事だと思います。その上で、DX化のメリットを見せつけることがボトムからのアプローチとしては良いと思います。また、ベンダー目線でDXを推進するには、自分たちが出資するなりして意思決定権を握りにいくか、意思決定者と一緒にプロジェクトを行っていくことが考えられると思います。

竹内:
私たちも実物を見せることで周りを巻き込むことを大事にしています。

米田:

外部のプロフェッショナルを入れるにしても、社内で経営層に通さないといけない局面があります。その際、推進する担当者がDXを通して「何の目的で、どんな世界観を作りたくて、何でやるのか」という想いを強く持つことが大切になります。その想いがあれば外部の企業も応援したくなりますし、提案も通りやくなると思います。

 

QA2『組織のトップを巻き込むときに、社内での啓蒙は必要でしょうか?』

竹内:

認識していない人に、課題を認識させることは難しいです。啓蒙するならば危機感を植え付けることから始めるしかないと思います。スタートアップやGAFAはデジタルをうまく駆使します。それに対して、DX化できなければ太刀打ちができないので、今がDXのタイミングであることを提案することは一つあると思います。そこでリテラシーが低くて、論点の所在がわからない会社は難しいと感じています。

野田:
経営トップと現場で思っていることの利害が一致していない状態で、ボトムから利害を一致させにいくことは難しいと考えています。会社が変わることを待つよりかはDXを本質的に行えそうな会社に転職することも一つの手だと思います。

米田:
ポジションによって大切にしている観点が違ってくると思います。メンバーは目の前にいる顧客にどのような体験を提供するかということを重要視しますが、経営者であればどれだけ利益を上げられるのかということを聞きます。その為、「DXする価値は何か」や「DXすることでどんなROIのバランスになるのか」という経営層が大切にしている観点に沿って提案できると良いと思います。

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以上、『【DX 異色の三者対談】消費者・企業・資本市場が求める真のデジタルトランスフォーメーションとは?』のイベントレポートをお届けしました。

ファンド視点・事業戦略視点・デザイン視点からDXについて語っていただきましたが、企業はDXを目的化せず、あくまで顧客体験の向上を図るための手段としてDXに取り組む必要があるということ。また、企業はDXに対して組織の力で全社的に取り組む必要があるということを共通して述べていました。

GoodpatchはデザインパートナーとしてDX支援を行っています。DXに関するご依頼やご相談については、お気軽にこちらからお問い合わせください。