SUNTORY+(サントリープラス)は、企業の「健康経営」のため、従業員の健康行動習慣化をサポートするサントリー食品インターナショナル(株)によるヘルスケアサービスアプリです。

未来の健康リスクをチェックする質問事項への回答結果に基づきパーソナライズされた“超低ハードル”な健康行動タスク(株式会社THF監修※1)が複数提示され、「朝食に牛乳を1杯プラス」「大股で堂々と歩く」「よく噛んで食べる」など血糖・血圧・コレステロール・体脂肪対策になるタスクを実行していくことで、健康行動の習慣化をサポート。また、職場の自販機(サントリーGREEN+対応の自販機)で健康飲料と引き換えができるクーポンがアプリ上で配信され、利用することができます。アプリ、健康飲料、自販機という3つの接点で日常に寄り添い、自然と健康な習慣を身につけられます。
※1 筑波大学発研究成果活用企業。健康支援事業のコンサルティング会社。

Goodpatchは、SUNTORY+が構想段階であった2018年12月からデザインパートナーとして並走してきました。大規模な新規事業開発における0→1のアイデア創出、プロダクト開発/グロース、またSUNTORY+の思想を言語化したVision・Mission・Valueをもとに、iOS/Androidアプリ、サービスサイト、プロモーションツールなど、ユーザーとのあらゆる接点で統一感のある体験をデザインし続けています。
1年半以上にわたるデザイン投資の結果、2020年10月にはグッドデザイン賞を受賞。前編となる本記事では、SUNTORY+チームがプロダクトに込めたそれぞれの想いや、開発時の印象的なエピソードについてお話を聞きました。

「SUNTORY+」が2020年度グッドデザイン賞を受賞。グッドパッチが新規事業の構想からUI/UXデザイン、開発・グロースまで一気通貫で支援

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常に期待を超えるアウトプットとスピード

−− まずは、SUNTORY+のパートナーにGoodpatchを選んでいただいたきっかけを教えてください。

サントリー食品インターナショナル 赤間康弘さん
もともとGoodpatchさんの名前はよく聞いていて、パートナー探しをしている中でも名前が上がっていました。そこでまずは1ヶ月、お試しとして提案をしてもらうことにしたのです。実際にお願いしてみると、アウトプットが出てくるまでのスピード感、最終的なアウトプットまで、圧倒的に「いいな」と思えたので、本格的にご一緒することになったのが2018年12月頃のことです。

デザイナーさんと直接コミュニケーションを取るので、スピード感は桁違いでしたし、こちらがお願いしたことをそのまま作るだけではなく、ユーザーインタビューを経た結果を反映したさらなる提案までしてくれたので、予想を超えたアウトプットを出してもらえたことが最初の印象でした。

サントリー食品インターナショナル 後藤謙治さん
どんなサービスにしていきたいのか、僕らの中でもまだふわっとしている状態から一緒に壁打ちしていただきました。その状態からGoodpatchさんと企画について議論を重ねていくうちに、自分たちでも気づけていなかったことに気づけたり、同じチームとしてサービスを作っていく感覚が強くなっていきました。

Goodpatch 石黒
私は一番初めの提案時からSUNTORY+に関わってきたのですが、最初の提案時は、いただいた時間の中で、どれくらい精度が高いものを作れるかについてずっと考えていました。プロトタイプを作ったらできるだけ早く検証できるようにスケジュールを組んだ記憶があります。

「まず作ってみる」デザイナーとエンジニアの姿勢

サントリー食品インターナショナル 赤間康弘さん
とても思い出深いのが、SUNTORY+のパーツごとのプロトタイプが出来上がった状態で、エンジニアの松村さんが新しい履歴機能を実際に動くプロトタイプと合わせて提案してくれたことです。

もうひとつは、一連の体験を繋げたプロトタイプをユーザーに使ってみてもらわないと、今のアイデアがいいのか分からないね、とチームで話していた時のことです。SUNTORY+は日常の中で使ってもらう習慣化のアプリなので、30分のユーザーテストだけではわからないことが多かったのです。1週間から2週間、継続的に使った行動データを貯めるためにも、実際の形に近いプロトタイプを作って使ってみるのはどうか、とスピーディに一連の体験が繋がったプロトタイプを作ったことも印象深いですね。新規事業を作っていく中で、仕様が決まっていない状況は多かったのですが、そんな時でも「まず作ってみる」という姿勢はとても心強かったですし、嬉しかったです。

Goodpatch 松村
こうした提案は僕一人でやったことではなく、Goodpatch内で出ていたアイデアでした。SUNTORY+は、ひとりで健康行動を継続できなかったり、なかなかがんばれない人に伴走するアプリだったので、「あなたは今日これができませんでした」という負を極力見せたくないよねという話をしていて。

例えば単純なカレンダー表示にしてしまうと、できなかった期間の空白がぽっかり空いてしまうので、どんな見せ方ができればいいのか、チームでも悩みました。ただ、悩んでいるだけでは先に進めないので、負を感じさせないような工夫をいくつか入れた上でカレンダーを実装してみたんです。それを実際に使ってみると、心配していた負よりも「使ったデータが貯まる」という嬉しさがずっと大きいことに気付きました。

サントリー食品インターナショナル 赤間康弘さん
「仕様が細かく決まっていないと作れない」と思うデザイナーさんやエンジニアさんもいらっしゃると思うんです。でも、企画が刺さるのか頭を悩ませている時に松村さんが「仕様は決まっていなくてもいいです、作りましょう」と言ってくれたことでとても助けられました。

このエピソードからも分かりますが、Goodpatchさんには当事者意識が強く、情熱を持った人が多い。受発注の関係ではなく、フラットに同じ方向を向いている人たちだと感じます。どうやったらそんなマインドが育つのか、逆に質問してみたいです。

サントリー食品インターナショナル 後藤謙治さん
クライアントとの関係性は僕も印象的です。通常クライアントワークでは、どうしてもクライアントの方を向いている割合が多いと思うのですが、Goodpatchさんの場合はSUNTORY+を自分たちのサービスと捉えているから、もっと良くしようと動いてもらっているのが伝わってくるんですよね。

Goodpatch 石井
僕にとっては、世のためになるものを作るという願ってもないチャンスです。SUNTORY+を通じて健康に対する意識が向上して、健康行動を自然とするような流れが伝播していけたらより健康的な世の中に近づいていけるのではという思い、熱意を持ち続けています。

チームの道しるべになったVision・Mission・Value

サントリー食品インターナショナル 赤間康弘さん
これまでの自分の経験では、自ずとチームの皆のコンテキストが揃っていくことが多かったので、Vision・Mission・Valueを作らないこともありました。ただしSUNTORY+においては、サントリー食品インターナショナル社内でもプロパーや異なる業界から転職してきた人や、協力会社も多く、各方面からメンバーが集まっており、価値観やサービスの作り方も異なっていたので、共通言語がない状態で走り続けていたら危険だったのだろうなと思います。

Vision・Mission・Valueがあることで、例えばユーザーへ送るメールの文章など、ユーザーとの細かい接点まで世界観を宿すことができるものとして、非常に価値を発揮したと思っています。

今回はVision・Mission・Valueの他にプリンシパルを策定。大規模なプロジェクトでもバリューの解釈がぶれずに体現できる。

サントリー食品インターナショナル 後藤謙治さん
Visionを言語化していく時は、自分たちが何をしたいのかに向き合います。その会話を通じで、自分の中でモヤっとしていたことがクリアになっていったことは、とても印象深い体験でした。

今回Vision・Mission・Valueという形で暗黙知を言語化しましたが、言語化の作業を通してチームの認識が揃っていき、どんどん自走できるようになっていくことを感じました。サントリー食品インターナショナル社内でも人を増やしているプロジェクトなので、僕や赤間は共通認識が取れていることでも、他のメンバーは違っていたり、違う方向を向いたまま走りかねないことが分かりました。

赤間が話しているメールの文章については石黒さんが提案してくれたのですが、「こうやって魂が宿っていくんだな」という瞬間を目の当たりにすることができました。

サントリー食品インターナショナル 赤間康弘さん
サントリー食品インターナショナルは人間らしさを大事にする会社で、普通、健康行動を促すBtoBサービスであれば、客観的で冷たい印象のものが多いですが、サントリー食品インターナショナルの大事にしているものが混じり、人間らしいサービスを作れたと思っています。

サントリー食品インターナショナル 後藤さん
あとは、サントリー食品インターナショナル自体に回り道を許容する文化があることも関係していると思います。
飲料開発でも、例えばお茶の文化をかなり昔まで辿ったり、生産地に訪れて現地の空気感を共有したりと、飲料の開発には一見関係がないようなところまで掘り下げる体験をみんなですることがあります。そんな体験を通じて「僕らが目指すべきはこういうことだ」と、Vision・Mission・Valueという言葉は使っていなくても、認識を揃えることをやってきました。

ユーザーの幸せな瞬間に寄り添う

サントリー食品インターナショナル 後藤謙治さん
僕は元々は商品企画に関わっていたのですが、ユーザーにインタビューをした時「仕事を頑張っている娘に買っていく」「単身赴任している父に買ってあげたくて」など、ユーザーの幸せな瞬間に商品が寄り添ってその場を演出できていることに気がついて、メーカーに入ってよかった!と思えたんです。SUNTORY+でも、特保の飲料や自販機、アプリを通してそんな瞬間に寄り添えるんじゃないか、と思っています。

Goodpatchさんのオフィスでデプスインタビューをした時、一人のユーザーがSUNTORY+を使って生活が明るくなったという声を聞いたり、どんどん健康行動に挑戦してくれている様子を見て、このアイデアで行ける、と確信した時からこの想いは変わっていません。SUNTORY+を成功させることは、僕たちのビジネスにとってもブレイクスルーになるチャンスだと考えています。


前編では、SUNTORY+に込められた想いや、提案〜本開発までの中で印象的なエピソードを中心にお話を聞きました。続編では、デザインやエンジニアリング、ストラテジー、プロジェクトマネジメントなど、各領域ごとの具体的なご紹介をしています。ぜひこちらもご覧ください!

また、Goodpatchでは無料相談会を毎月開催しています。あなたのビジネスを、「デザインの力」で前進させませんか?
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