サービス開発のプロジェクトにおいては、エンジニアがコーディングをして、デザイナーがソフトウェアでデザインをする。作ってリリースするという単純な作業で、1つのサービスを世にリリースすることが基本であるとされていました。

しかし、近年ではユーザーエクスペリエンス(UX)デザインヒューマンセンタードデザイン(HCD)というワードが出てきて、サービスやプロダクトデザインに関わる人々の考え方に大きな影響を与えています。このUXデザインやHCDに欠かせないのが「ユーザーリサーチ」です。本記事では、ユーザーリサーチという大枠なコンセプトの中の一手法として最も有効的なユーザーインタビューの重要性について述べていきます。

なぜユーザーインタビューが必要なのか?

確かにユーザーインタビューを実施しなくても、プロジェクトメンバーのスキルやサービスの方向性によっては、良いサービスを生み出すことが十分に可能です。しかし、それでもなおUXデザインを提唱するのであり、ユーザーにより良いサービス体験を届けたいのであれば、ユーザー中心設計をすることは大切です。

実際にユーザーの声を聞き、その声をサービスに落とし込み、ユーザーテストをしてサービスの価値を検証する。その一連のプロセスにつながる最初の骨格の部分として、ユーザーインタビューがあるのです。

潜在ニーズを顕在化できる

インタビューの手法によっては、インタビュアーも予想していなかったインサイトが得られるかもしれません。定量調査ではインタビューする側とされる側両方が気づいている領域までしか測ることができません。しかし、インタビューのような定性調査は「自分も相手も気づいていない領域」を新たに発見できることが大きな価値です。また、数字ではなかなか判断できない人の本心を、細かい言葉遣いや仕草から分析することができます。

思い込みに気づく

ユーザーインタビューをする前にはある程度「うちのサービスを使う人はこういう機能を求めているだろう」と推測しますよね。この推測が正しいものかは、ユーザーの声を聞かずして明らかにはなりません。あらかじめ立てた仮説とは、全く別の答えが返ってきて、サービスの根本から考え直さなくてはならないようなこともあるでしょう。しかし、このようなインサイトがユーザーインタビューから得られた場合には、ラッキーだと思って良いでしょう。市場にリリースされてからマーケットの需要がないと気づくよりもよっぽど低コストで済みます。

一連のデザインの骨格となる

ユーザーインタビューは聞けば終わりではありません。聞いたことを分析することで、その後のサービスの価値創造につなげることができるのです。ユーザーは多くの場合、本人の答えに対して深い考えは持っていません。そのため、本人も気づいていないようなインサイトをインタビュアーが分析しつつ導き出すことが重要なのです。

ユーザーインタビューの種類

ユーザーインタビューではユーザーがどのようにサービスを使っていて、どのような課題やニーズを抱えているかを検出します。目的は、ユーザーがサービスを使って解決しようとしている課題達成しようとするゴールを明確にすることです。

よく「ユーザーインタビュー」とまとめられがちですが、実際には何種類ものインタビュー方法があります。Goodpatchでも、プロジェクトによりますがよく使う手法は以下の3つです。

半構造化インタビュー

あらかじめいくつかの質問項目を用意しておき、録音やメモを取りながらインタビューを行う手法。インタビューの途中で質問の順番を組み替えたり、脱線して後から思いついた質問をしたりと、必ずしも準備しておいた通りに進行しないインタビューのことを指します。

グループインタビュー

フォーカスグループインタビューと呼ぶ場合が多いですが、ターゲットユーザーに近しい共通項をもつ2人以上に対してインタビューを行う手法です。人数が増えるため、ユーザーをリクルートしているのであればコストは倍増しますが、さまざまな視点からの意見を同時に得られるのがメリットです。

デプスインタビュー

1人に対して長時間(約1時間程度)インタビューを行う手法。インタビュアーのスキルが試される、難易度の高いインタビュー方法でもあります。時間を要しますが、インタビュアーもインタビュイーも想定しなかったような深いインサイトを得られるというメリットがあります。

どの手法を用いるにせよ、Goodpatchでは以下のようなフォーマットをGoogle Spreadsheetで作成し、インタビューの進行時に活用しています。

ユーザーの主要情報をまとめたもの

質問項目を書き出したもの

限られた時間の中で効率的に質問するには、インタビュー方法を定め、方法に合わせた質問項目を洗い出しておくと良いでしょう。ざっくりしたシナリオ(どのようなインサイトを得たいのか)を想定しているだけでも、効率よく生産性のあるインタビューに結びつきます。

具体的にどのように質問を組み立てていくのか、どのようなことに留意するべきかなどの手法は以下のユーザーインタビュー設計に関する記事をご覧ください。

プロジェクトの量ではなく質にこだわろう

ユーザーのことを気にせずにプロダクトやサービスを開発した方が、時間も短縮できて、コストもかからないことは明らかです。しかし、ユーザーリサーチをせずにマーケットから必要とされないサービスを開発してしまう方が、確実にコストは高くつきます。

サービスを必要とするユーザーがいて、初めて市場価値の高いサービスをつくることができます。決してユーザーインタビューをすればユーザーに求められるサービスが作れるという訳ではありませんが、後のサービス設計の骨格となる部分として、まずはユーザーインタビューに対する知識を学んでみてはいかがでしょうか。