この記事はGoodpatch UI Design Advent Calendar 2018の16日目の記事です。

私はOOUI(オブジェクト指向ユーザーインターフェース)に関する勉強をし始めてから、世の中のアプリが全てオブジェクトにしか見えなくなりました(笑)。まだ、完璧に理解しきれていない部分もあるかもしれませんが、Appleの純正な写真アプリを分析・考察しながら、私なりにOOUIの理解を深めたいと思います。

OOUIとは

システムを開発する際には、オブジェクト指向(Object-oriented)という設計論があります。その設計論をUIデザインに導入することをオブジェクト指向ユーザーインターフェース(Object-oriented user interface、以下「OOUI」という)と呼びます。

オブジェクト指向(Object-oriented)とは、オブジェクト同士の相互作用として、システムの振る舞いをとらえる考え方である。
オブジェクト(object)はオブジェクト指向プログラミングにおいて、プログラム上の手続きの対象を抽象化する概念である。

OOUIに関する知識は、上野さんのOOUX – オブジェクトベースのUIモデリングという記事が非常に分かりやすく大変勉強になりました。

OOUIを知って、世界が変わった

UIデザイナーである私がOOUIを勉強してから興奮状態になる程驚いたのは、オブジェクト同士の関係性と相互作用を理解したら、提供するユーザー体験の拡張性を考えられるようになったことです。

普段デザインする時は、「情報デザイン」を大事にしていたのですが、OOUIを学んでからは今まで自分にとっての「情報デザイン」は、ただ表層に出ている情報を整理していたに過ぎないことに気がつきました。実際OOUIでの「情報デザイン」は、表層に出る前の「情報のデータ構造(オブジェクト同士の関係性と相互作用)」をデザインすることです。それができてこそ、ユーザーにより良い体験を提供できるのではないかと思い始めました。

そのために、以下ではまず「写真アプリ」を使ってオブジェクト同士の関係性と相互作用を理解し、それによる体験の可能性を分析・考察してみたいと思います。

写真アプリのオブジェクト

OOUIでのオブジェクトとは、ユーザーの操作対象となるものです。
写真アプリの場合は、ユーザーの操作対象である「写真」と「アルバム」2つのオブジェクトがあります(ビデオを割愛します)。

「アルバム」は本来、写真を見やすいように並べて整理するためのものだと考えられます。しかし、写真アプリでは、ユーザーがアルバムを作成してないのに、どういったロジックで自動的にアルバムを作成しているでしょうか?

写真から自動生成するアルバムのロジック

まず、アルバムの名前の種類を見てみましょう!

  • 時間(年、月、日)
  • 場所名
  • アプリ(SNOW、Twitter、Instagram)
  • お気に入り
  • 写真解釈(大切な日、秋、食事、動物、ケーキ、結婚式)

アルバムの名前は、どこから来たのでしょうか。
仮に「アルバムは写真を見やすいように並べて整理するためのものだ」と考えると、アルバムの名前は、オブジェクトである「写真」との関係性があるのではないかと考えられます。
「写真」が持っている情報を見るとわかるかもしれません。

画面を見る限り、「写真」というオブジェクトは、下記のような情報を持っていると考えられます。

  • 撮影場所
  • 撮影日時
  • 画像データ

「写真」と「アルバム」が持っている情報を並べると、下記のような関係性があることが考えられます。

「アルバム」の名前は、「写真」が持っている情報から関連づいたのではないかと考えられます。
そうなると、画面上に表示されていませんが、実際に「写真」オブジェクトは、下記の情報も持っているのではないかと考えられます。

  • 利用アプリ
  •  画像解釈(大切な日、秋、食事、動物、ケーキ、結婚式)

そうすると、下記のような関係性が明らかになります。

つまり、「写真」オブジェクトと「アルバム」オブジェクトの関係性は、アルバムに写真がぶら下がるのではなく、写真があってアルバムが情報として関連づいているのが正しいのではないかと考えられます。

ユーザー体験では、「アルバム」から「写真」にたどり着くというフローですが、情報の構造では、「写真」から「アルバム」を自動作成するというフローになります。

終わり

写真アプリでは、一番重要なオブジェクトは「写真」です。「写真」の情報によって、「アルバム」が自動生成されています。
単に、「写真」の撮影日時に基づいた「アルバム」だけではなく、「写真」の情報の中に画像解釈を加えて、無限に「アルバム」が作成することができるのです。そうすることで、ユーザーが単に時間軸で「写真」を見つけるためだけではなく、新しい視点で自分の「写真」との出会う体験を提供しているのではないかと考えることができます。

みなさんもぜひOOUI視点を自身のプロダクトデザインに取り入れてみてはいかがでしょうか。