今回インタビューをしたのはGoodpatchのUIデザイナーの陳 思婷。台湾出身、元Webデザイナーの彼女がGoodpatchに入社したきっかけや、UIデザイナーとしてどんな選択肢を見つけ、スキルを磨いてきたのか。そしてこれからのキャリアについてお話を聞きました。

自分のためではなく、誰かのためにデザインがしたい

私は中学の頃からパソコンなどの電子機器が好きな子どもでした。自分でWebサイトを作ってみたり、インターネットに触れる機会も多い学生時代を過ごしていました。

台湾の大学で視覚伝達デザインを中心に勉強していたころ、深澤直人さんと原研哉さんが台湾で講演される機会があり、話を聞きに行ったことがあります。そこで深澤直人さんがデザインした傘立ての話を聞き、とても強い興味を持ちました。

彼は装飾的な傘立てを作ったのではなく、人が無意識にする「壁に傘を立てかける」という行為を利用して、床に溝を引いたのだと話していました。当時の私には、ユーザーの無意識な行動に基づいてデザインをするという発想がなかったので、強い衝撃を受けたことを今でも覚えています。

当時、私の周りには「自分で何かを表現したい」という友人が多かったのですが、私自身がやりたいのは、観察から生まれる誰かのためのデザインなのだと確信しました。
強調しなくても、人の行動や生活に融け込んで使われるもの。何も特別なことはしていないように見えて、きちんと機能するもの。そんなデザインを勉強するため、台湾から多摩美術大学大学院へ留学することを決意しました。

新卒入社して感じたデザイナーの「限界」

卒業後はWebデザイナーとしてある制作会社に新卒入社しました。進路はいくつかの選択肢で迷いましたが、もともとインターネットや電子機器が好きだったことと、より可能性がありそうな業界だと感じたことからWebデザインの道に進んでいます。当時はまだUIデザインという言葉も一般的ではなく、Webデザインが主流でした。

いざ制作会社で働きはじめると、そこではビジュアルをいかにかっこよく表現するかに重きが置かれていて、日本に来て私が学びたかった「無意識の行動に宿るデザイン」とのズレを感じました。使う人のことよりも、どうやってきれいなビジュアルを作るかが重視され、先輩からのフィードバックは「私はこっちがいいと思う」など感覚的なものが多く、戸惑いました。

また、クライアントと会って話すことができるのは案件の始まりのキックオフのみ。その後はディレクターがクライアントとの窓口になるので、直接フィードバックをもらうこともなく、最終的に作ったものがどうなったのかも分からず、「私は誰のためにデザインしているんだろう」という気持ちになることもありました。

デザイナーは複数の案件を同時進行で進めるため、一つの案件にコミットする余裕がないことにも違和感を持っていましたね。表面だけではない良いもの、良いことについて話せる相手が欲しい。そう思っていたとき、代表土屋からスカウトが届き、Goodpatchのことを知りました。

「UIデザインを専門にした会社ってどんなところなんだろう?」と気になって、Podpatchを全部聴いてみたら、ここまでデザインについて議論ができる会社があることに驚き、すごくワクワクしました。それで2016年1月、Goodpatchに入社することに決めました。

急成長のGoodpatchに入社した、2016年1月入社のメンバーたち。初出社の全社会で自己紹介をする様子

偉大なプロダクトを作るための共通言語

GoodpatchでUIデザイナーとして働きはじめ、初めてエンジニアと一緒にプロジェクトに参加しました。ですが、前職などで経験してきた仕事が分業化されていたため、エンジニアリングのことがまったく分からなかったのです。実装の大変さが分からないまま作ったデザインをエンジニアに渡したり、「デザインとエンジニアリングは別もので、自分には関係ないことだ」と考えてもいたので、エンジニアとの信頼関係が当初なかなか築けませんでした。「エンジニアをもっと大切にしないとダメだよ」とメンバーから指摘してもらうこともありましたね。

エンジニアとの信頼関係について転換点になったのが、ダーツライブというiOSアプリのUIデザインを初めて担当した時のことでした。私はもともとWebデザイナーだったので、HIGや既存のiOSアプリを見ながらデザインをしていたのですが、それを見たエンジニアに「なんでこの色にしたの?これはどういう意味なの?」と聞かれたのです。当時の私のスキルがまだまだなことは他のメンバーも分かっているだろうから、恐れずにコミュニケーションしてみると、彼らにも私にも「いいものを作りたい」という共通の目的があることが分かりました。同じ目的に向かっているから、フィードバックをもらってもへこまず、どんどん会話をするようになりました。そんな風に担当したプロジェクトが、ダーツライブです。デザイナーとエンジニアという垣根だけではなく、クライアントとも一つのチームとなって進めることができたプロジェクトでした。

Goodpatchのエンジニアから教わったことは、共通言語を作るために役立つことばかりでした。
例えば、どの色をどういう時に使うというルールを作ること。コーディングの際にはクラス名やルールがあること。アプリは長期的に運用していく観点が重要なので、デザインシステムが必要だということ。
こうした共通言語がエンジニアとの間に生まれたことで、どうしたらよりいいものをつくることができるか、エンジニアと議論できるようになりました。

戦略と表層をつなぐ、情報設計という強み

次の転換点は、ある決済系アプリのリニューアルに関わった時のことです。
ビジュアルデザインに関してはガイドラインがすでに存在していたため、私はビジネスKPIを達成するための情報設計をメインに担当しました。ここで初めて情報設計に向き合い、UIデザイナーとして自分が強みをどこに持つのか、少しずつ考え始めたのです。

私自身は元Webデザイナーでビジュアルデザイン出身だけど、これまでの経験からエンジニアリングにも興味を持っていました。でも、どうやってそれらのスキルを伸ばしていけばいいのか、どんな方向性で成長していけばいいのか分からず、とても悩みました。

そんな時に社内で、UIデザインスキルを向上させるための取り組みを同期入社のアプリケーションデザイナーが立ち上げました。何かキャリアを切り拓くきっかけになるかもしれないと思い参加した取り組みを通して、OOUIの考え方を学んだのです。これがキャリアの大きな転機になりました。考えてみると、UIデザイナーにはレイアウトやビジュアルデザインに強みを持つ人と、ブランディングなどに強みを持つ人のどちらかが多く、5段階モデルでいう構造〜要件に強い人があまりいないことに気がついたのです。

参考記事:UXデザインにおける5段階モデルとは?

まだ誰も進んでいない道なら、自分が抽象と具体のあいだ、戦略と表層のあいだを繋ぐUIデザイナーになろう。そう決めたら、キャリアの道筋が見えた気がしました。私は、自分が選んだ選択肢を正解にする力は誰よりも強いと思っています。情報設計に強みを持つデザイナーとしてキャリアを切り拓いていくために、まずは周りのメンバーを信頼して、失敗してもいいから社内でどんどん発信、実践をはじめています。社内でOOUIについてのLTを行ったり、プロジェクトを通して得たナレッジを発信してみたり。実際のプロジェクトでもどんどん実践していきたいと思っています。

ナレッジを東京オフィスとベルリンオフィスでも発表。テーマは「ソフトウェアデザインにおける構造設計のフレームワーク」

■陳がUIデザイナーとして担当した事例「Lancers Enterprise」

■陳が執筆した「UIデザイナーのスキルとOOUI観点の構造設計」

個人として、リーダーとして、価値を磨き続ける

私はUIデザイナーとしてのキャリアに迷った末、まだ誰も選んでいない道を見つけることができました。これからは、メンバーにもそんなチャンスやそれぞれの道を作ってあげたいです。デザイナーは不確実性が高い職業なので、常にデザイナー同士がコミュニケーションを取り、ナレッジを共有しあって強くなれるような状況を作りたいです。

自分の価値って、一人だけで考えていても分からないものですよね。これからはリーダーとして、メンバーの価値を磨くサポートも続けていきたいです。私は負けず嫌いなので、これまでキャリアに迷ってもデザイナーを諦めなかったし、「世の中ではデザインの価値って低いんだよ」と言われても、屈しませんでした。これからは個人としてもリーダーとしても、ミッションを実現するために価値を磨き続けていきたいです。

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