いま、組織デザインが求められている。3社のリードデザイナーが語った「デザイナーが自走できる組織」

デザイン経営、BTC型人材などに関心が寄せられる今、デザイナーの役割と身につけるべきスキルが変わりつつあります。「デザインは表面的なものではなく課題解決の手段である」という理解が進んだことにより、デザイナーが自ら創り出す時代へと変革期を迎えています。

今回、企業文化を大切にするコイニー株式会社 /ヘイ株式会社×株式会社リクルートライフスタイル×株式会社グッドパッチの3社が集い、新天地での挑戦を考えているデザイナーさんに向けた「デザイナーが自走できる組織|hey×リクルートライフスタイル×グッドパッチ」イベントを2019年11月29日(金)に開催致しました!各企業におけるデザイナーが自走できる組織づくりのために取り組んでいる施策や今後目指している組織のあり方に関するお話をお届けします!

コイニー株式会社 /ヘイ株式会社|松本 隆応さん「ポジションブロッカーを取り除くことで自走できるデザイン組織を実現」

はじめに、コイニー株式会社 、ヘイ株式会社でリードデザイナーを務める松本 隆応さん(@stam_mats2)に自社で取り組んでいる「デザイナーが自走できる組織」の環境づくりについてお話ししていただきました。

オンラインとオフラインのUXをシームレスに

松本さん:
事業者向けの決済サービスを展開しているコイニー株式会社と、誰でも簡単にネットショップを開設することができるストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社の経営統合により誕生したのがヘイ株式会社です。

私達は事業を通してオンラインとオフラインの体験をシームレスにしたいと考えています。ネットショッピングとリアルな店舗空間との体験が違いすぎることに課題を感じており、事業を営む方々へのテクノロジーによる支援を通じて、事業をより楽に、より楽しくするためのサービスを展開しています。

ヘイ株式会社のデザイナーは現場主義であることを大切にしています。オフィスにいてデザインをすることだけではなく、実際に現場に行って事業のオーナーさんから話を聞くこともあります。

自走できる組織を実現するには『NO!ポジションブロッカー』

デザイナーが自走できる組織を実現するために最も大事なことは、ポジションブロッカーをなくすことだと考えています。ポジションブロッカーとは、中央集権型で過剰にレビューを行う権力者のことを指し、全てのクリエイティブに関して彼らのレビューが必要になってしまうと、時間がかかり生産性とモチベーションを下げてしまいます。

ポジションブロッカーをなくし、生産性を上げるために中央集権型の体制から自立分散型の体制に移行しました。しかし、移行するタイミングでクオリティーコントロールが難しくなったため、ガイドラインの強化とフィードバック文化の醸成に力を入れました。

今後の取り組みとしては、職務特性理論を元にしたワークデザインを考えています。デザイナーが自走するにはいくら制度やシステムが整っていたとしてもモチベーションがないと走れません。職務特性理論では、仕事の満足感を決定づける最大の要因は仕事自体の特徴にあり、個人的な情熱は関係なく、一定の重要な特徴を満たす仕事を設計すればモチベーションや情熱は自ずとついてくると考えられています。それに基づき自社では職務特性理論が提唱するモチベーションを高めるための中核となる5つの特性を考慮した、ワークデザインの実践を計画しています。

個人的な野望としては、デザイン組織でデザインディスコースを実現したいと考えています。デザイナーだけではなく、様々な分野の専門家と交流し、視野を広げて世の中の課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

株式会社リクルートライフスタイル|鹿毛雄一郎さん「自律と一貫性のバランスを保つ仕組みづくり」

つづいて、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部でAir事業ユニットUXデザイングループ グループマネジャーを務める鹿毛雄一郎さん(@hagebouz)にリクルートライフスタイルで取り組まれている組織作りについて、お話していただきました。

鹿毛さん: 
リクルートライフスタイルではご飯を食べることや旅行に行くことや髪を切るなどフリークエンシーの高い日常の消費領域でサービスを提供しています。その中でもAirシリーズは業界や領域に関わらず、店舗を営む方々が日々業務を行う中で困ったことを解決することに取り組んでいます。

Airシリーズでは「お店をとり巻く煩わしさを減らし、自分らしいお店づくりができるようにする」をブランドミッションとして掲げ、サービスを提供しています。例えば店舗の行列を管理するAirウェイトや予約受付の業務効率化を実現するAirリザーブ、店舗の注文・配膳・調理をカンタンにするAirレジ ハンディなど様々なサービスを展開しています。

各プロダクトの開発を行うロールは大きく3つに分けられています。
1. クライアントの課題を発見したり、課題を解決する優先順位を決めるプロダクトマネージャー
2. 課題をどう解決するか仮説検証を行うプロダクトデザイナー
3. 課題の解決策を実際に実現するエンジニア

デザイン組織は、各プロダクトにアサインされそのプロダクトにおける課題解決に取り組むプロダクトデザインチームと、各プロダクトにいるデザイナーのマネジメントを行い、より働きやすい環境づくりなど全体を俯瞰してみるデザインマネジメントチームに分かれています。

自律できる組織を実現するための3つの工夫

デザイナーが自立できる組織づくりを実現するため、3つの工夫があります。

まず一つは、デザイナーの職能を定義し、チームの総合的なケイパビリティを見てメンバーをアサインしていることです。デザイナーといっても、各自メンバーの強みは違うことも多いです。そのため、デザイナーの中でも課題発見や仮説検証を強みとするUXリサーチャー、デザイン実装や仮説検証を強みとするプロダクトデザイナー、デザイン実装を強みとするアートディレクターの3つの役割に更に細分化しています。各自の強みを踏まえた上で、プロダクトのケーパビリティを考慮してメンバーのアサインをしています。

二つ目は、自律と一貫性のバランスを保つ仕組み作りです。例えば、店舗の中の人がどういうことを考えているか理解し、共感できるように、実際店舗で働くような仕組みを作っているケースもあります。また、Air事業ユニットに所属するデザイナーが全員が同じ思想で各プロダクトの課題解決に取り組めるよう、Airブランドとして定めているミッションやステートメントの理解を深めるためのワークショップや勉強会も開催しています。

三つ目はデザインガイドラインを中央集権的にデザインガイドラインのチームだけで作るのではなく、各プロダクトの中にいるデザイナーも巻き込み、どういったガイドラインであるべきかという議論を行なっています。

株式会社リクルートライフスタイル| 柿本泰人さん「デザイナーのセルフキャリアマネジメント」


つづいて、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部でAir事業ユニットUXデザイングループにてデザイナーとして活躍されている柿本さんに、実際にデザイナーとして取り組まれているアクションや思想について、お話をしていただきました。

課題発見検証の根本追求による、ユーザーストーリーの改善

柿本さん:
デザイナーが自走している状態とはWillが明確になっていて、それに向けた具体的なアクションが取れている状態と解釈しました。

今回は私が転職時に設定したプロジェクトマネジメントスキルを伸ばすことと外向的に活動するという2つのテーマを、現在の仕事の中でどう意識しているかお話ができればと思います。

今担当しているAirレジ ハンディのミッションは「飲食店の業務フローのリデザイン」を行うことです。プロダクトを起点に、ユーザーストーリーを改善し、人手不足や業務の煩雑さなどの課題を解決することを目指しています。

課題発見や効果検証を行うため、業務体験を行なったり、店舗を貸し切ってロールプレイを行なったり、従業員の横で業務をモニタリングしたりします。ただし、現場で発見した課題だけだと定性的な判断となってしまうので、それにデータ分析を加え、課題を客観的、定量的に把握し、サービスブループリントを通してユーザーストーリーの深掘りをすることで、課題解決の為の仮説検証、仮説構築を行なっています。これらを踏まえて、要件がある程度固まってきたらデザインに起こし、実装し、プロトタイプやtestflightで検証をしていきます。

また、各案件ごとのフェーズや体制を考慮しプロジェクトの進め方を常にアップデートしてます。それに加え、メンバーが抱えているタスク量を簡易的なスキルマップを元に必要工数を可視化していて、現在のメンバーで案件推進フローをカバーできているか定期的にすり合わせながら、プロジェクトを進めることができています。

Airレジ ハンディを通してユーザーストーリーを元に飲食店の業務フローの改善ができていることが評価され、GOOD DESIGN賞を受賞することができたのではないかと思いました。

さらに、社内外でのインプット・アウトプットの機会として社内研修プログラムを活用したり、社外セミナーへ気軽に参加することができる環境が整っています。また、外に出て行くだけではなく、自分たちでセミナーを定期的に企画して開催することも行なっています。

以上、リクルートライフスタイルがWillに向かって行動できる環境かどうか思いを巡らせてみていただけたらと思います。

株式会社グッドパッチ|難波 謙太『本来のデザインの価値を届け、自走できる組織が良いプロダクトを生み出す』


最後に、Goodpatchでクリエイティブディレクターを務める難波謙太(@kentanamba)から、本来のデザインの価値やデザイナーの役割、またクライアントワークにおける立ち位置や組織づくりについて話しました。

本来のデザインの “価値”とは

難波さん:
僕の経歴のお話を手短にさせてください。高校卒業と同時に単身渡英し、1998年に英国美術大学グラフィックデザイン学科を卒業しました。その後14年ほどロンドンにてデザインキャリアを積み、ロンドンオリンピックをはじめ、ホンダ、ナイキ、ASUS、P&Gなど、デジタルとブランディングを兼ねたグローバル案件の企画、デザイン、クリエイティブディレクションを手がけました。

今から5年ほど前に帰国し、東京でフリーランスとして活動を始め、キヤノン、パナソニック、セブン&アイなどのデジタル兼ブランドプロジェクトを遂行しました。その間数々のデザイン会社やスタートアップ、大手企業と接している際に痛感したことが、日本では「デザイン」という概念において誤解が生じていると感じました。まだ日本では「デザイン」というと表層のスタイリングを思い浮かべがちですが、本来の「デザインの価値」とは、課題の本質を追求し、企業の思想を明文化し、ユーザー体験と一貫した思想で繋ぐことだと考えます。そしてこれを本格的に実行できているデザイン組織は多くないと感じています。

ヘイ株式会社さんと株式会社リクルートライフスタイルさんと大きく異なる点は、私達はクライアントワークに取り組んでいることです。よく制作会社と事業会社で比較されたりしますが、我々は自社のことを制作会社ではなくデザインパートナーと呼んでいます。その理由としては、一般的な制作会社のように決まった仕事を受けるような受託スタイルではなく、企業の経営者や事業を持つPOの方々が夜な夜な悩み、自社で解決できないことに全力で向き合い、糸口を見つける姿勢を大事にしているからです。

組織とプロダクトが両立できることでいいプロダクトが生まれる

私達は、プロダクトやビジネスの価値とユーザー体験を繋げるため、BXデザインとUIUXデザインを大事にしています。なぜなら組織とプロダクトの両輪がしっかり回ることによって、成長できるプロダクトが生まれると考えているからです。

UIUXデザイナーの役割は戦略策定、仮説検証のためのプロトタイピング、実際にユーザーの手に届けるプロダクトデザイン、その後のグロースなど、あらゆるフェーズでプロダクトに関する全ての⼯程に携わることです。

一方でBXデザイナーの役割は、経営者や事業POのハートに存在する夢や思想を言語化し、ビジョン・ミッション、そしてブランドパーソナリティを作り上げ、ユーザーに共感してもらえるイメージを可視化していくことだと考えます。

なぜ、GoodpatchがBXデザインに取り組んでいるかというと、サービスやデジタルプロダクトが溢れ続けるこの時代だからこそ、機能だけ詰め込んだところでユーザーにプロダクトの価値が伝わりにくいと考えているからです。そのため、アイデンティティを内側からつくりあげる必要性があると信じ、以下のフレームワークを作成しました。こうして、ユーザーに目を向けたユーザードリブンデザインと、企業の思想に目を向けたビジョンドリブンデザインを融合して進めています。


また、デザイナーが自走できる仕組みのひとつとして、教え合う文化を大事にしています。僕のユニットメンバーは全員UIデザイナーですが、それぞれ違った武器(専門性)を備えている集団なので、その強みを活かして助け合うことで、お互いが成長できる環境を作っています。

そして、私達デザイナーの思考として大切にしていることは同じ熱量でコミットすることです。クライアントの悩みに対し、覚悟を決めて自分ごと化することを大事にしています。ここが、表層デザイナーと、デザインパートナーの違いだと考えていて、自走できるデザイナーとはクライアントの課題に対してクライアントと同じ目線で向き合うであり、なにかしらの専門性を備えているデザイナーだと思います。

これからGoodpatchが目指すのは、UIUXの領域でいかに専門性を高めていくかというところと、BXデザインなど領域に囚われないデザインへの挑戦です。この二つの軸を両立させることにより、組織がより良いプロダクトを作っていくような社会を実現していきたいと考えています。


「デザイナーが自走できる組織」のイベントレポートをお届け致しました。デザイン経営、BTC型人材などに関心が寄せられる今、デザイナーに自走力が求められる時代へ変化することが予想されますが、各社における自走できるデザイナーの組織づくりについての思いが飛び交いました。それぞれの企業が展開する事業やカルチャーを踏まえて、自走できるデザイナーとはどういう人なのかを定義することが大切なのではないでしょうか。

また、Goodpatchではさらにデザインの力を信じるUIデザイナーUXデザイナーBXデザイナーを募集しています。GoodpatchのことやGoodpatchのデザイナーについてお話しをする機会も用意しております。興味がある方はこちらのリンクから気軽にご連絡ください!!

 

ABOUTこの記事をかいた人

青木 そのか

'98年生まれ 。Goodpatchでインターンをしています。わかりやすく、新しい発見や出会いをお届けできるようなライターを目指します!
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