デザインが優れている、海外のFinTechサービス5選(欧米編)

こんにちは!デザインリサーチャーのKeikaです。
現在Goodpatch社内では、定期的に勉強会を行い、FinTech領域への知識を深めています。
今回は勉強会でも取り上げられた、欧米のUX/UIデザインがイケてるFinTechサービスをご紹介します!

FinTechとひとくくりに言っても、欧米の先進したFinTech領域には、預金・送金・投資・資産管理と、多くのカテゴリーが存在します。
今回は、それぞれの分野の中でもデザインが特に優れている「チャレンジャーバンク(既存銀行サービスの概念を覆す、ITを駆使した現代的な金融サービス)」から5つをピックアップして、それぞれの創立エピソードやアプリデザインの特徴をご紹介します!

Simple

https://www.simple.com/

歴史

Simpleは、2009年にJosh Reich(アメリカに移住したオーストラリア人)とShamir Karkalによって、アメリカのポートランド・オレゴン州にて創立されました。Reichはオーストラリアからアメリカへ移住した当時、自分でも驚いたことに小切手の書き方が分からず、悩んだ経験をしたそうです。その後、カーネギーメロン大学でMBAを取得し、ヘッジファンドに勤めました。Reichは、日々の業務で他人の資産情報を管理していながら、自分の資産についてはファンドにどう運用されているのか把握できないことに違和感を覚えました。そして退職を決意。
2009年に、Karkalと他の大学当時の仲間と一緒にSimpleを立ち上げました。
創立時には、12人の投資家より1529万ドルの資金が4回に分けて調達されたそうです。しかし、2014年にBBVAに1億1700万ドル(うち8950万ドルが損害保険)で買収されています。
(参考:https://www.crunchbase.com/organization/banksimple#/entity

特徴

AIを利用した自動貯蓄サービスでは、ユーザーがゴールを設定し、システムがゴールに合わせて自動で貯金を行います。ユーザーは、いつの間にか貯まった資産を好きな目的に使うことが可能です。
さらに、Safe-to-Spendシステムでは、ユーザーの総預金とゴールから、現在どれだけ運用可能な資産があるかということをAIで計測します。そこから読み取ったデータを用い、資産運用への提案をしてくれます。ユーザーは画面を確認するだけで、支出超過を防ぐことができるのです。

UIデザイン

Simpleのデザインは、その名の通り「シンプル」です。
配色は白を基調としつつ、強調色である青が綺麗なコントラストとなっています。ムービーでアイスクリームをメタファーとしている点や、アイコンを多用していることから、ターゲット層が若年層であるように見受けられます。
登録画面では、ユーザーが行う情報入力のステップを1つずつフォローしてくれます。入力情報が多いため、こうした簡易なステップはユーザーのストレス軽減にも効果的です。
また、画面の多くはシンプルなTableViewを使用し、AppleのHIGに沿った一貫性のあるデザインを保っているようです。余白が多いため、ユーザーは圧迫感を感じずに利用できます。

さらに、先ほどあげたSafe-to-Spend機能で設定した数字は、ナビゲーションバーに常に表示されます。ユーザーはあといくら予算が余っているのかを画面上でリマインドされるので、予算を上回る出費を回避することができます。

ちなみに、Simpleの公式ホームページにはユーザーからこのようなレビューが寄せられていました。

The absolute euphoric sense you get from using Simple as your banking service is one of a kind in the banking world.
あなたはこの世界に一つだけの銀行サービスであるシンプルから、絶大な幸福感を得ることができます。

自分で立てた目標を達成した時の快感は一度味わってみたいと思いました!

Monzo

https://monzo.com/

歴史

2015年にStarling Bank(別のUKのチャレンジャーバンク)の元CTOであるTom Blomfieldによって設立されました。世界で最も優れた現代的な口座を提供するというミッションを掲げ、2017年にフル・バンクライセンスを獲得。コンタクトレスのデビットカードと、優れた通知機能をもつ銀行口座アプリ(β版)を10万人のユーザー対象に提供しています。
(参考:https://www.crunchbase.com/organization/mondo#/entity

特徴

Monzoには大きく3つ特徴がありますので、それぞれご紹介します。

ユーザーに価値のある明細を届けてくれる

デビットカードが利用された後、ユーザーはレシートを受け取るよりも先にアプリで明細を確認できます。また、店舗のロゴと金額が表示されたタブをクリックすると、サービスを利用した店舗の地図が画面上部に表示されます。
その下方には、ユーザーが頻繁に利用する店舗であれば、これまでの店舗訪問数や、平均消費額まで表示されるデザインとなっています。

万が一のトラブルでも安心

もう1つの優れた機能は、デビットカードを無くしてしまった際に、アプリから瞬時にカードの利用を停止できるシステム。また、カードが見つかった際には、ワンボタンで利用を再開できます。

イギリス在住歴のあるGoodpatchメンバーにヒアリングをしたところ、「カード利用の不正が多い国でも安心して使えている。南アメリカへ旅行した時もMonzoを使っていたよ」と教えてくれました。

リリース前から積極的にユーザーの意見を取り入れてくれる

Monzoでは、Monzo Community Forumというプラットフォームを運営しています。ここでは、Monzoのエンジニアが開発中のデザインを発信し、ユーザーはSneaky Peak(盗み見る)ことができます。コメントツールを利用し、ユーザーからのフィードバックをすぐにもらえるので、商品改良にも役立っているそうです。リリース前に社内だけではなく、社外にもβ版を公開している事業は、かなり少ないのではないでしょうか。

UIデザイン

Monzoは落ち着いた配色で広い層のユーザーから信頼感を得ています。ワンボタンでカードをフリーズできる機能は、ユーザーが操作した直後にカードが実際にフリーズした画像へと切り替わります。ユーザーはワンクリックのアクションから、利用が停止されたのか判断しにくい傾向にあるため、視覚化することでアクション結果を確認できるデザインになっているんですね。
また、MonzoはAndroid用アプリにはGoogle Material Design、iOS用アプリにはHIGを適応しています。企業によってはコスト面からデザインをOS関係なく同じにする場合がありますが、ガイドラインに沿っていることからデザインへのこだわりを感じました!

Atom

https://www.atombank.co.uk/

歴史

チャレンジャーバンクの中でも飛び抜けたデザインと圧倒的なAI知能でユーザーを魅了しているのがAtom。CEOはMark Mullen(同事業であるFirst Directの元CEO)とAnthony Thomson(元Metro Bank)。2年前にMoney Forwardの記事や数々のメディアで紹介されるなど、日本でも言わずと知れたサービスになりつつあります。
(参考:https://www.crunchbase.com/organization/atom-bank

利用者は2017年3月時点で1万4000人ですが、設立当時よりBBVAなどから資金調達を続けており、今後さらなる成長が予想されるスタートアップです。

特徴

Atomの特徴は、画面のフェイススキャナーに顔を合わせ、瞬きをすると本人認証がされること。AIでログイン時のユーザーストレスを軽減しているだけではなく、「セルフィータイムだよ!」とフレンドリーな語調でインターフェースにユーモアを取り入れているようです。
オンラインバンキングにとって重要となる機能のうちの一つである「パーソナライズ機能」ですが、Atomはユーザーが口座に好きな名前をつけられたり、カラーパレットを選べたりするなど、パーソナライズ機能にも特化しています。

優れた開発チームの組織編成は比較的古典的なもの。社員も150人ほどと決して多いわけではありません。開発チームはイタレーティブ(再現可能)なデザインに取り組んでいます。また、機能性を失わず革新的であるために、UXチームではデザインをする際に、4W1H(Why、Who、Where、When、How)について深く考察しているそうです。

「今必要なのは、顧客に口座の明細を見せるだけではなく、彼らの生活に関連のある体験を作ること。そして、いつでもどこでも必要な時に必要な情報を提供することです。」とUXチームのヘッドであるNick WilesはUX Planetで語っています。

UIデザイン

FinTechでは稀に見る多色配色のデザインです。このパレットのように色鮮やかでアニメーションを多用したデザインは、他のサービスとの差別化要因になっているのではないでしょうか。

ですが、レビューにはAtomのアニメーションが少し気になるという声も寄せられており、こうした独自性のあるデザインには賛否両論あるようです。特にアクティブユーザーの多い銀行アプリでは、ユーザビリティの妨げになるようなアニメーションは、避けなければならない課題だと思いました。

N26

https://n26.com/

歴史

N26はユーザーがアプリを開いて8分以内に口座を開設し、どこのATMでも引き下ろし可能な超スピーディー・オンラインサービスを提供しています。全ての取引の直後にはリアルタイムで取引明細メールが届きます。友人間送金も一瞬でできます。
このN26は現在ヨーロッパ中で話題になっているオンラインバンクサービスの1つ。2013年にCEOのValentin Stalfがベルリンにて設立し、現段階(2017年6月)での利用者はイギリスのMonzoと同じで10万人に到達しています。
Valentin氏は、世界初となる汎ヨーロピアン・オンラインバンキングサービスを、モバイルネイティブ世代対象に提供することをミッションとしている、と自社メディアで語っています。
(参考:https://www.crunchbase.com/organization/number26

特徴

N26は大きく3つの特徴があります。

支出項目が自動で可視化される

グラフで当月の消費額を食費や交際費など、利用項目別に表示する機能です。ユーザーは容易に「何にどれだけお金を使ったのか」を確認できます。

ユーザーへ手軽に送金できる

「MONEYBEAM」と呼ばれるN26のユーザー間送受金の機能を利用できます。MONEYBEAMでは、リストから送金したいユーザーを選択し、送りたい金額と4桁のパスワードを入力するだけで、即座に送金できます。

サービスを利用していない人への送金も可能

宛先の名前とクレジットカードナンバーを入力すれば、新規ユーザーとして保存することができます。アプリユーザーではない人へも簡単に送金できるのは良いですね。

UIデザイン

白を基調としたシンプルなデザイン。Simpleのカラーパレットと相似しているように見受けられますが、写真などを用い、独自性を出しているようです。また、ユーザーの認知度が高いUIコンポーネントを洗練された形で利用しています。

N26のユーザーがドイツ国内のみならず、他の国でも利用されている理由の1つに、「情報の可視化」があげられます。通貨換算や他のアクションを常にユーザーが把握できるデザインにしています。金融アプリでは、ユーザーとの信頼を情報の可視化で築くことが不可欠なのです。

Monese

https://www.monese.com/

歴史

2013年にNorris Koppel(イギリスへ移住したエストニア人)により設立されたオンラインバンク。Norris氏はイギリスに移住した当時、現地住所やクレジット保有履歴を提示できず、大手銀行から口座の開設を断られたのだそうです。
その悔しい経験から、2015年にMoneseの最初のプロダクトをローンチさせました。これは、海外からの移住者向けに作られた、書類提示をせずに3分でオンライン口座を開設できるサービス。ユーザーには登録後に、VISAデビットと連携したカードが送られます。

特徴

上にあげたサービスと同様、トランザクション後にはリアルタイムで通知が届きます。Moneseユーザーはこのアプリ1つで給料の受金や家賃の支払いを行なっているのだとか。英国に移住したばかりの人は、このアプリさえあれば安心ですね。最初の月は無料でお試し利用ができ、その後は月額が請求されます。

UIデザイン

こちらも白と青をメインカラーとしたフラットなデザイン。他のサービスと比較し、より紺に近い青を使用することで、ターゲットを他社サービスと比べて多少広く設定しているようです。
SimpleやN26と比べ、より多くのカラーを用い、ユーザーにとって大事な情報をハイライトしているのも特徴的です。また、全てのトランザクションとレート変換のプロセスをアニメーションで可視化しているので、ユーザーから信頼を得やすいデザインになっていることがわかります。

MoneseはFacebookやソーシャルメディアにもかなり注力されています。イギリスのチャレンジャーバンクは競合が多いので、こうしたメディアプラットフォームを利用したマーケティング戦略はかなり有効なのではないでしょうか?

欧州と米国の核となる違いは?

今回は5つ欧米のFinTechを取り上げましたが、リサーチをするにあたり、米国よりも欧州の方がFinTech領域で進んでいる印象を受けました。欧州が米国より先駆けた決定的な要因は何があるのでしょうか?

実は、米国のチャレンジャーバンクが厳しい法制度により銀行ライセンスの獲得に苦しむ中、欧州では政府一体となり、フルバンクライセンスを推進する動きが見られています。
これは、欧州国民のオンラインバンク利用を促すだけではなく、デザイン組織と金融機関のビジネス連携にも繋がっています。
欧州では既に、オンラインバンクが銀行の支店を需要面で上回りつつあります。また、今後さらにこの動きが加速化する見通しです。

まとめ

今回は欧米FinTechの中でも「チャレンジャーバンク」にカテゴリーを絞り、5つご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
どのサービスも見た目だけではなく、ユーザーの行動を親身に考えた設計をしているように感じました。
日本のFinTechサービスは機能重視で、幅広い年齢層の人が使うにしてはハードルが高いと思っています。先駆けた欧米から「ユーザー視点のサービス作り」を学ぶことも多いのではないでしょうか。
今年は2年連続で銀行法改正が行われています。この先日本でも、利用しやすいモバイルバンクサービスが普及することを期待しています。
次回は欧州のUX/UIがイケてるFinTechアプリの個人資産管理アプリをご紹介しますので、お楽しみに!

最後に

Goodpatchでは現在、FinTech専門チームを立ち上げFinTech領域の研究を行なっています。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

ABOUTこの記事をかいた人

keika

’94年生まれ。中国と日本のハーフで、1歳から18歳までを中国・上海で過ごす。2016年にロンドンで写真・デザインを学ぶ。グッドパッチが注力しているFintechと、国外のデザイン組織情報を中心に発信。

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