心に残っているコンセプトがある。

『素人発想、玄人実行』

コンピュータービジョン、そしてロボット工学の権威である、金出武雄教授の言葉だ。素人のように考え、玄人として実行する。金出教授の、研究に対するスタンスが鮮やかに言い表されている。

これには、デザイナーの「デザインへの向き合い方」と共鳴する部分が多くあるだろう。ユーザーの目線で素直に観察し、プロの技術で緻密に実装するといったように──。

日々、様々なデザインプロジェクトに関わるなかで、現時点での自分なりの『デザインへの向き合い方』をまとめてみた。

小さな9つのトピックを緩やかに繋げた短文集。

1. デザイン = 判断の積み重ね

デザインは判断の積み重ねによって成り立つ。
よりよい判断を積み重ねていくことがよりよいデザインにつながる。

デザインには常に「相手」がいる(エンドユーザー、マーケット、ステークホルダー)。
絶えず変化する相手の動きに合わせて最適な判断が求められる。

2. 判断するには選択肢が必要

判断をするのに必要なのは選択肢。
1流ほど多様な選択肢を持ち、様々な勝ち方を知っている。

反対に選択肢1つで向かっていくのは「当たって砕けろ」。
当たって砕けちゃダメ。砕ける前にやり方を変えるやり方を作る。

3. 手法づくり

手法を作る行為は、求める結果をデザインする行為に等しい。
求める結果に合わせて日々自分なりの手法を作れるといちばん良い。

一方で手法は最低限の品質を保証するものでしかない。
また極端に言えば、各手法には文脈があり、発明した本人にしか使いこなせない。

4. 再現性

本来実現したいのは、コトを動かす”提言力”の再現性。
手法は考えるための道具に過ぎず、そこにその再現性は宿らない。

提言において”手法”と”姿勢”はセットであり、姿勢の重要性は高い。
手法を作っても縛られず、予測可能な範囲から外へ出続ける姿勢を保ち続けたい。

5. 二元論でなくグラデーション

デザインの突破口は、二元論の極ではなくグラデーションの中に見出される。
相反する2つの要素がせめぎ合う部分に”魅力的な違和感”、”緊張感”が存在する。

求められるのは、そのグラデーションに対する高い”解像度”と”選択眼”。
1つの見方にとらわれず、対となる視点と常に行き来を繰り返す。

6. 行き来したい概念(A↔Bリスト)

A B
手法 姿勢
具体 抽象
秩序 創造
思考 身体
顧客 経営
機能 感情

7. 概念を行き来する手法かつ姿勢

顧客視点と経営視点を切りかえるユーザー及びエグゼクティブインタビュー
機能価値だけでなく感情価値も考慮するMinimum Lovable Product

二極とその間を行き来する手法かつ姿勢を取り揃えていく。
そうしていくことが、より良いデザインアウトプットへ繋がっていかないか?

8. ありたい姿(A<Bリスト)

A B
問いに答える 問いを問い直す
1点突破 グラデーション
手法にならう 手法を超える
知を消費する 知をアップデートする
顧客を理解する 顧客と環境を理解する
モノを作る  モノとヒトとの関係性をつくる

 

9. シェアとコラボレーション

デザインの対象はより広く、より複雑になっている。
困難で不確実性の高い状況だろうとも、楽観的に楽しむ気持ちも大事にしたい。

シェアは新たな視点をもたらし、コラボレーションは複雑性の中に意味を見つける。
偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれるから、チームプレーを大切に!

 

以上が、今の自分なりの「デザインへの向き合い方」です。