こんにちは!エディターのkeoです。

先日iPhoneを触りながら、ふと「ここにあるアプリは、どんな人が作ったんだろう」と疑問を持ちました。
そこでリサーチをしてみたところ、海外で急成長している企業の多くは、デザイナーによって創業されていることが分かりました。
デザイナーのどのような能力が、企業の成長に貢献しているのでしょうか。

今回は、創業者にデザイナーがいる企業についてご紹介します。

米国

Airbnb

https://www.airbnb.jp/

Airbnb(エアービーアンドビー)は、旅行先で現地の人の家に泊まることができるシェアリングエコノミーのサービスです。
創業者3人のうち、2人がRISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)でデザインを学んでおり、組織全体が、デザインに対して前向きに取り組んでいることが特徴です。

Airbnb Designというブログでは、メンバーが各々クリエイティブな情報発信をしています。読みやすい情報設計から、デザインへの熱意を感じ取ることができますね。
取り上げられているトピックはアートやデザインなど様々で、ブログ全体がまるで美術館のような印象を受けました。

また、採用ページにも、Airbnbがデザインを重視していることが分かる文章があります。

 Airbnbはデザインが命です。共同設立者のうち2人はデザイナーであり、デザインの持つ力を重視する意識が事業活動のあらゆる面に浸透しており、社内のダッシュボードの書体にまでこだわる徹底ぶりです。デザインは実用性や使いやすさだけでなく、人の行動や感情をも左右するという信念のもと、当チームはプロダクト開発の方向性を決め、ピクセルパーフェクトなデザインに高める業務を幅広く担当しています。

Airbnbはサービスを眺めているだけでも、非日常的で美しい写真が並んでいてワクワクしますよね。
しかし、彼らが手がけたデザインの本質は、「お金を払って人の家に泊まる」という今までにない体験を、当たり前のものに変えた点にあるのだと思います。

シェアリングエコノミーという新しい価値を作り上げたAirbnbの取り組みは、デザイナーが忘れてはならない功績と呼べるのではないでしょうか。

彼らの功績についてまとめられた書籍も登場しているので、こちらもチェックすると理解が深まりそうです。

Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法

Snap Inc.


https://www.snapchat.com

今年2017の年3月に上場した、Snapchat(スナップチャット)を提供するSnap社。
投稿した写真やムービーが、開封されたあと一定時間で消えるというアイデアがヒットし、海外のティーンを中心に人気に火がつきました。
現在は日本でも、Snapchatを台頭に、自動消滅型のSNSが流行していますね。

Snapの創業者でCEOのEvan Spiegelは、高校時代からアートやデザインに関心があり、スタンフォード大学でプロダクトデザインを学びます。
そしてスタンフォード大のゲスト講師として来ていたIntuitのScott Cookに目をかけられ、Intuitの新しいプロダクト開発のプロジェクトに参加しています。*[1]
この経験を通して彼は、のちのSnapchatとなる、自らのプロジェクトをローンチしようと決めたのだそうです。この際、インターフェースのデザインを担当したのがSpiegelでした。

Snapchatの前身は、picabooという写真やテキストの共有アプリでした。それをSnapchatと名称変更して設計を変えたところ、友人間でのブームが広まっていき、2016年時点でのアクティブユーザー数はTwitterを上回るまでに成長しました。
このような急成長を遂げた理由は、観察しやすい存在をターゲットに据えたことと、優れたユーザー体験のために適切な設計ができた点にあるのではないでしょうか。

*[1] 出典:http://www.businessinsider.com/intuits-scott-cook-why-he-invested-early-in-snapchat-evan-spiegel-2017-3

Instagram


https://www.instagram.com/

月間で7億人ものユーザーを抱えるInstagram(インスタグラム)。
「写真を撮って、Instagramに載せる」という行為が日常的だという人がいても珍しくないほど、全世界の人に使われているサービスですね。
立ち上げから1年弱でFacebookに10億ドルで売却してからも、独立した運営体制を続けています*[2]。

Instagramの創業者でCEOのKevin Systromは、写真という趣味を持っていました。写真を学ぶためにフィレンツェへ留学した経験もあり*[3]、Instagramのどこかアナログな世界観に及ぼした影響は大きいと想像できます。
初期のInstagramは、位置情報と写真を友達と共有できるサービスとして構想されていました。
しかしユーザーの反応が悪かったことから、写真撮影・共有の2点に機能を絞り込んだところ、リリースから2ヶ月で100万人のユーザーを得ることに成功したのです。
彼はエンジニアリングだけではなく、Googleで事業開発に従事したり、マーケティングに関わった経験も持っています。課題の整理や発見が上手だったことが、Instagramの勝因に繋がっていると分かりますし、まさにデザイン的な思考の持ち主なのだなと感じました。

*[2] 出典:https://portfolio-ai.com/kevinsystrom-interview1
*[3] 出典:https://portfolio-ai.com/kevinsystrom-interview2

MSQRD

http://msqrd.me/

MSQRD(マスカレード)は、人の顔に様々なフィルターを合成する動画共有アプリです。
2015年にローンチされてから、わずか4ヶ月でFacebookの傘下に入りました。

MSQRDを手がけるMasquerade社の創業者でCEOのEugene Nevgenは、元々PandaDocというサービスのクリエイティブディレクターでした。
彼のポートフォリオからも、シンプルで使いやすい設計を得意とするUIデザイナーであることがうかがえます。
最低限の機能で設計することが、誰でも直感的に操作ができることに繋がると言えるのではないでしょうか。

MSQRDのアプリは、開いた瞬間からインカメラが立ち上がり、自分の顔に色々なフィルターがかけられます。共有と保存以外に機能はありません。
このシンプルな設計が特徴であり、長所でもあると言えます。(アプリのレビューにも、「シンプルで使いやすい」「子供がハマっている」というコメントが見受けられました。)
言語すら問わず誰でも操作できる設計だからこそ、Facebookのように膨大な数のユーザーを抱えるサービスと親和性があるのかもしれません。

中国

中国では、モバイル決済市場が世界最大規模であり、FinTech分野において最先端であるとこちらの記事でお伝えしました。

さらにDesign in Tech Report 2017によると、中国ではデザイナーが共同創業者として名を連ねることはメジャーであり、以下の中国企業の時価総額は合計で$300B 以上になっているそうです。
ここでは特に成長している企業について、共同創業者のうち何人がデザイナーなのか、合わせてご紹介します。

Xiaomi


http://www.mi.com/en/index.html

Two of eight co-founders are designers.:8人の共同創業者のうち、2人がデザイナー

出典:https://www.slideshare.net/johnmaeda/design-in-tech-report-2017

Xiaomi(シャオミ/小米科技)は、スマートフォンや家電を手がける中国のメーカーです。
2010年に中国の起業家・エンジェル投資家である雷軍によって創業されました。

CEOの雷軍は、「中国のスティーブ・ジョブズ」とメディアで形容されることがあります。これは雷軍の「ユーザーが中心」という信条に基づいたマーケティングの手法が関わっていると言えます。

Xiaomiの高スペック・低価格なスマートフォンは、若者を中心に「持っているとかっこいい」と人気を呼び、創業から4年で中国シェア1位、世界シェア3位の座を築きました。

そんなXiaomiの共同創業者の一人である黎万强 氏は、大学で工業デザインを学び、King Soft(金山軟件)でデザインディレクターを務めたのちにXiaomiに参画しています。
創業から3年経った2012年、黎万强はブログで「どうやって信頼できるデザイナーを見つけたか」というエントリーをアップしています。
エントリーの中で、Xiaomiがデザインを非常に重視していることが分かる記述がありました。

  • Xiaomiの研究開発チーム1500人のうち100人がデザイナー
  • チームで活発にデザインについてコミュニケーションをとる
  • 黎万强自ら、ロゴやポスターのフィードバックを得るためにオフィスを駆け回っている

最近では、スマホだけではなく家電市場にも参入しているXiaomi。これからの動向も目が離せません。

Visual China Group


http://www.visualchina.com/

Four of seven co-founders are designers.:7人の共同創業者のうち、4人がデザイナー

出典:https://www.slideshare.net/johnmaeda/design-in-tech-report-2017

Visual China(ビジュアルチャイナ)は、2000年に中国で初となるデジタルコンテンツの会社として創業されました。

2005年にはGetty Imagesとの合弁会社を設立し、参入するマーケットを拡大。
2014年に上場し、現在はデジタルコンテンツとサービス、デジタルエンターテイメント、プラットフォームを主要な事業としているようです。

写真をメインにしたシンプルなサイトの設計から、とても洗練された印象を受けました。
中国発のクリエイティブなサービスも、今後注目していきたいと思います!

Alibaba


http://www.alibabagroup.com/en/global/home

Two of eighteen co-founders are designers.:18人の共同創業者のうち、2人がデザイナー

出典:https://www.slideshare.net/johnmaeda/design-in-tech-report-2017

Alibaba(アリババ/阿里巴巴)は1999年設立の中国を代表するIT企業のひとつです。
ECを主力に、オンライン決済など様々な事業を展開しています。

Alibabaの「スマイルロゴ」と呼ばれる企業ロゴをデザインした人物の盛一飞は、CDOを務めています。
ロゴを考える際に100個以上の案を出し、その過程で「多くの人に支持される企業のロゴは顧客目線で作られている」と気づき、人を感動させることができるものとして、顔をモチーフにロゴをデザインしたのだそうです。*[4]
ユーザーファーストというデザイン的考え方がインプットされ、ロゴにも活きている企業なんですね。

*[4]出典:http://www.china.com.cn/economic/txt/2009-08/31/content_18436428.htm

まとめ

今回の企業に共通するデザイン的視点:

  • 徹底的に、ユーザーの体験を良くするための設計をした
  • 提供価値を絞り込み、無駄を削ぎ落とした
  • ユーザーを観察し、本質的な課題を特定した

創業からデザイナーが経営に深く関わることが、事業やサービスに良い影響をもたらすのかもしれません。

これからもビジネスとデザインの動向については様々な形でシェアしていくので、楽しみにしていてくださいね!