ボードゲームデザインから学ぶ「楽しませるUX」

「ボードゲーム」と聞いて、みなさんはどのようなものを想像しますか?

「将棋」「囲碁」「チェス」あたりは、かなり多くの人が経験したことのある代表的なボードゲームではないでしょうか?今回取り上げる巷で盛り上がりつつある「ボードゲーム」の定義としては、主に複数人で机を囲んでカードやボードなどの道具を使って遊ぶ、アナログなゲーム全般のことを指しています。

ボードゲームは、チームで物作りをしている皆さんにとって、より良いチームの雰囲気や関係性を作るためのきっかけにもなりますし、楽しみながらユーザー視点での物作りをスピーディーに行う体験もできます。ぜひこの記事で少しでもご興味を持っていただければ嬉しいです。

ボードゲームの歴史

古くは、サイコロ遊びや「セネト」と呼ばれる古代エジブトの王族が遊んだボードゲームなどに端を発し、先ほどの「囲碁」や「チェス」のようなゲームが各地で誕生しました。その後、「トランプ」や「オセロ」そして近年では「UNO」「モノポリー」「カタン」のような、世界中で楽しまれているボードゲームが生まれてきています。

現在、世界では1年で1000タイトル以上の新作が生まれ、都内30ヶ所、全国では300ヶ所以上のボードゲームが遊べる「ボードゲームカフェ」が出店し、世界中でボードゲームへの注目度が高まってきています。

参考:jellyjellyCafe @渋谷   

何で今ボードゲーム?

私自身も、学生時代からボードゲーム制作をし続けてきた中で、クリエイター・プレイヤーとして、世の中が着実にボードゲームへの関心を高めてきたことを肌で感じています。

ボードゲームが身近に感じられるようになってきた理由は大きく3つあると考えます。

1. 求められるシーンが増えてきたこと

全ての理由が相互に関連して起きているムーブメントだとは思いますが、ボードゲームの広がりが生まれた1つの理由として、会社・学校・地域などさまざまな場で、チームとして物事に取り組まねばならないシーンが増えていることが考えられます。

不確かで多様性のある社会で、スムーズなチーム作り、コミュニケーションの活性化、クリエイティビティの醸成、チームのアウトプットクオリティの向上手段として、ワークショップの中に取り込まれたり、テーマに沿ったオリジナルのボードゲームを使ったワークショップがあったり、一般的な「遊びや娯楽」のシーン以外でも「ボードゲーム」に出会う機会が増えてきています。

参考:カレイドソリューションズ(オリジナルのゲームで企業研修を提供している会社)   

2. 作るハードルが下がってきたこと

次に、クリエイティブツールやコミュニケーションツールの進化・普及によって、ゲームを作りたいと思ったらすぐに仲間と繋がり、ディスカッションし、データを共有してプロダクトをつくるという流れが高速で進められるようになってきています。

さらに、クラウドファンディングはまとまった制作資金の獲得方法として効果的であり、すでに国内外の多くの事例が見られます。

Dubai Race

Stonehenge and the Sun

個人のクリエイターのレベルが上がってきていると同時に、デザイン会社が参入してきたり、インディーズデザイナー達も起業しています。また、既存のデジタルゲーム会社が事業としてボードゲームを作り始めていく中で、より多くの人に楽しんでもらうために遊びの体験の質と共に見た目や質感の良さも含めたクオリティの向上が進み、ボードゲーム初心者でも楽しめるものがドンドン増えてきています。

3. 手にとれる場所が増えたこと

魅力的なボードゲームが多く生まれてきている今、必要なのはそのゲームを「手にとって楽しめる場」です。早くからボードゲームを専門的に扱ってきた「すごろくや」では、ほとんどの商品を店内で試遊することができます。また、休日には親子向けのワークショップを開くなどしてボードゲームの楽しさを広げる活動も行われています。

そして前述した通り、飲食をしながらボードゲームを楽しめるカフェ、バーなども増えてきており、「今日帰りにボドゲして帰ろう!」や「今日のチーム会はボードゲームカフェでやろう!」と言った会話が同僚の間でも生まれるようになりました。

東急ハンズやロフト、ドンキホーテなどの量販店でも取り扱いが増えてきていますので、ぜひ立ち寄って見てください。パッケージの好みで買っても面白いですよ。

注目ゲームクリエイター&ゲーム

ボードゲーム好きや初心者の方でも知っているクリエイターや、知る人ぞ知るクリエイターやゲームをご紹介します。

Oink Games

https://oinkgms.com/jp/

ボードゲーム業界の雄。コンスタントに出し続ける全てのゲームにおいて、ゲームデザイン、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、コピーのセンスなど、一線を画すものがあります。oinkゲームスの登場でボードゲームマーケットのデザインレベルが一気に上がったのは間違いないでしょう。

オススメ:海底探険

itten

http://www.itten-games.com/

ボードゲームの巨大な市場であるドイツでみとめられた実力派。シンプルかつ美しく世界観を表現することを得意とされています。国内のクリエイターでは比較的珍しく、海外市場も視野に入れたトータルデザインがなされています。

オススメ:TOKYO HIGHWAY

xaquinel

 

http://xaquinel.com/

個人的にとても好きなチームです。ゲームの視点が独特なのに、誰でも楽しめる敷居の低さはお見事としか言えません。

オススメ:狩歌

daitai

http://daitai.tokyo/

「あそび」のあるゲームを作るチーム。ユーザーの遊び心、クリエイティブマインドが入ることで、予想もしない楽しさを生むようなゲーム作りを目指しています。

オススメ:じゃれ本

 

さらに最近では、デジタルクリエイティブを生かしたゲームの提案も増加しており、他では類を見ない取り組みとして注目度の高いクリエイター・ゲームもご紹介します。

ブルーパドル

https://blue-puddle.com

元カヤックの方が立ち上げたデジタルコンテンツ企画制作会社。デジタルコンテンツ制作のノウハウを生かした、斬新な切り口で新しいボードゲームの可能性を示しています。

オススメ:アナログデジタルボドゲ

gift10industry

https://gift10industry.myshopify.com/

視覚障害の方とも一緒に楽しめるゲーム「ダッタカモ文明の謎」でその名を知らしめ、VR、AR、そしてswitch向けのタイトルまで、デジタルとアナログの良いところどりをした新しい「あそび」を提案し続ける会社。

オススメ:モニャイの仮面(Mask of Moai)

ボードゲームデザインとUXデザイン

デザインの文脈の中でも、特にUXデザインという観点からボードゲームのデザインについて考えてみます。ボードゲームは「プレイヤーの気持ちの変化をデザインする」非常に優れたUXデザインであると感じます。Goodpatchも実践するデザインプロセスとも呼応する部分は多く、特により早くデザイナーのイメージを共有するために用いる「プロトタイピング」との共通性が見られます。

紙とペンで、できるだけ早いタイミングでプロトタイプを作り、テストプレイと修正を重ねることで、作り手の独りよがりにならない「きちんと楽しさを感じてもらえる流れ」を作ることができます。

最終的なアウトプットはデジタル、アナログで異なるかもしれませんが、ユーザーがより楽しい、より気持ち良いと感じる物作りの進め方として絶対に必要な過程です。

実際にあるゲームをデザインした際の話をします。ボードのデザインとユーザーのアクションの整合性を検証するために、4×4のボード上でキューブを転がすアクションを想定し、キューブとボードを試作してみました。結果、パッケージに張り付いたボードであれば問題なくキューブを転がすことができたのですが、ボードだけにしてしまうと、重さが足りずにボードが回転してしまうことが解りました。パッケージデザインやサイズなど、コスト面ばかりを気にして頭の中の想定で作ってしまうと、本来実現したい遊びや気持ち良さが損なわれてしまいかねないということを如実に感じた出来事でした。

ボードゲームはまず自分が楽しいと感じるものを起点に作り始めることが多いのですが、「自分も一人のユーザーである」という視点を持ち、自分の記憶や気持ちを探り「自分マーケティング」をして行く中で、面白いと思うテーマや遊び方のざっくりとしたビジョンを描きアウトプットしていきます。

個人的にはこの過程がとても楽しいので、ぜひ自分が楽しいと思うゲームを考えて見てください。クリエイティブな企画立案の役に立つかもしれません。

ゲームプレイとゲームメイクのススメ

Goodpatchにはゲームサークルがあり、そこでボードゲームを遊んで社員の交流を図ったり、新しいユニット(課)メンバー同士で、アイスブレイクやコミュニケーションの活性化を目的に、ボードゲームを使ってチームビルディングを行っているケースもあります。


また、「ゲーム」を作ること自体が、社会の現状やそこで行われているコミュニケーションを「楽しみながらいつのまにか学べる」経験となるため、社会課題を解決するビジネスやサービスのデザインを志している皆様に、ボードゲームを遊ぶこと、そして創ることもお勧めいたします。

「楽しい」がさまざな活動の源泉になることは間違いないと思っています。

ボードゲームを遊びながら、社会の中に「楽しさ」をデザインできる人が増えてくれたらいいなって思います。

参考図書
ボードゲーム デザイナー ガイドブック 〜ボードゲーム デザイナーを目指す人への実践的なアドバイス

ABOUTこの記事をかいた人

ShimadaKenichi

Design Divisionのプロジェクトマネージャー。家庭用のゲームプランナーから新規事業担当を経て現職へ。「楽しい」を社会に入れていけるよう、日々楽しんでます。普段は、ボードゲーム作りやDIYを好む二児の父。
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