「Design in Tech Report 2018 を読み解く」#02 THE GUILD勉強会 書き起こしレポート(後編)

「Design in Tech Report 2018 を読み解く」(中編)はいかがでしたか?
今回は、最終回。質疑応答でのKey Conceptとなったインクルーシブデザインと、デザイナーに求められるライティング能力についてのお話を中心にお届けします。これを読みきって、Design in Tech Report 2018の理解を深めましょう!

過去2回の書き起こしレポートはこちらです↓
「Design in Tech Report 2018 を読み解く」 書き起こしレポート(前編)
「Design in Tech Report 2018 を読み解く」 書き起こしレポート(中編)

Twitterでは「#theguild_study」のハッシュタグで当日の雰囲気を味わえます!Togetterのつぶやきのまとめも一緒にご覧ください。

深津:
今回のレポートは割と抽象的な部分が多かったです。その中で特に一番重要なところは、先ほどのクラシカルな部分とコンピュテーショナルデザインな部分の「チェンジするのか」「オーバーレイするのか」「シフトするのか」色々とあると思いますが、そこの大きな流れの中で「僕らは何をチョイスするのか?」のようなことが1番大きかったと思います。質疑応答でそこの部分を聞きたい方もいれば、逆に今日語っていない他の部分で「ここの意味わからなかったのでどんな風に考えたらいいのかを知りたい!」という方もいると思うので、積極的に質問していただきたいと思います。

Twitterからの質問

デザインの定義とは?

こばかな:
最初深津さんが言っていた話に近いと思うんですが、質問です。デザイナーの境界領域がどんどん広い分野に溶けていって一言では言い表せなくなっています。デザインはなにをもってデザインと言えるのでしょうか?問題解決することがデザインなのでしょうか。それとも人を動かすことですか?

深津:
Design in Tech Reportの話というか自分がどう理解しているかでいいんですか?

こばかな:
それでいいと思います。

深津:
そういう意味だと僕は、デザインは「抽象」なのか「定着」なのかはあまり気にしていません。どちらかというとルールメイキングかストラクチャーメイキングのようなことができる人がデザイナーという風に理解しています。仕組み、ルールの法則、構造などと言い方は色々とあると思います。要は「なんでこれってこうなってるんだっけ?」というのを作れる人か、あるいは「なんでこれが起きるとこうなるんだっけ?」みたいなところが作れるというのがデザインの一番の根っ子であって、それをビジネスモデルにするかグラフィックにするかCGにするかと言ったことはそれぞれの人の手業の職能の部分なのかなという風に考えています。

こばかな:
確かにその〇〇デザインというのがすごく多いと思うんですが、それらの共通点はやはり今、深津さんが言っていた部分ですよね。

深津:
見て、分析して、噛み砕いて、再現可能な仕組みにして吐き出すみたいなところで、どのように吐き出すかは人によるというような感じなのかなと理解しています。

松田:
再現可能な状態にするというのはすごく同意ですね。再現できることだけだとアウトプットとしては完成しないと思うので、そこが多分、〇〇デザイナーと名前が増えていく所以なのかなという風に個人的には理解しています。

佐々木:
最近、組織デザインなどと色々と出てきています。やはりなんとなくクリエイティブみたいなところは必ず関わってくるのかなと思っています。いわゆるビジネスをどう大きくしていくかというところで今までそのプロトコルであった1960年代以降くらいにできたテイラーイズムみたいなところが100年ぐらい経ってだんだん通用しなくなってきています。新しい何かを作る必要があるという空気があります。組織も作り変えないといけない、プロセスも作り変えないといけない、プロダクトも人事もサービスも・・みたいな感じになってきているので、そこのところをどうクリエイティブに作っていくか、ということで〇〇デザインが増えてきていて、それを全部デザインと表現してもいいんじゃないかと思っています。

デザイナーのキャリアって?

こばかな:
もう1つTwitterからデザイナーのキャリアに関する話です。デザイナーがデータやビジネスを学ぶという話がよくあると思いますが、むしろ若いうちはデータやビジネス・エンジニアリングを先に学び強力なバックボーンを形成してからデザインを学ぶという戦略もあると思います。どちらが良いのでしょうか?

深津:
ケースバイケースだとは思います。個人的には同時にやるのが一番やりやすいとは思いますが、キャリアとしてはみんなが思っているほどエンジニアがデザイナーになることは難しくないと思っています。エンジニアから、あるいは数学系からデザイナーにくる人はもっと増えると良いのではないかと思っています。特にエンジニアのなかのオブジェクト思考やモデリングなどができる人は、デザイナーになる素養がすごくあると感じています。結局先ほど言ったルールを抽象化して再構成してというところが、デザイン仕事の半分以上です。そういう業務モデリングできる人でもオブジェクトモデリングできる人がすごくデザインの勉強をしたら、すぐにデザインしやすくなるのでそっちから入るのもありなんじゃないかなとは思います。逆に自分でやっていて普段思うことは、デザイナーにプログラミングを教えることは結構難しいです。なぜかというと、今デザイナーとして自分で手を動かして具体的に物を定着させることができる人が、1〜2年間現状のスキルでできるアウトプットを我慢して数字の羅列のような抽象な世界に身を置くことにストレスを感じやすいです。その壁をなまじっかモノがしっかり作れる分だけ、一旦二、三歩戻って数年我慢するようなことをデザイナーがすることは結構覚悟がいるなと。個人的にはちょっとデザイン系の人にプログラミングを教えたことで、これをどうやって解決すれば良いだろうというのも一つのチャレンジではないかなと思います。

こばかな:
お二人はどうですか?

松田:
どうでしょうね。あまり一般化して言えないような気がします。悩んでしまいますがたぶん仕組みというか、まあ深津さんは仕組みと言っているんですけれども、レシピというか再現性というのを記述するトレーニングというのはやはり情報系やエンジニアリングサイドでの訓練というのが非常に多いなと思います。でも、それもデザインの対象によって変わってくるので一般化できない感じがしますね。

佐々木:
たまにキャリアの相談を受けることもあるんですが、そう言ったときに私は必ず「大人の言うことは聞いちゃダメだよ」と言う風に言っています。結局誰に聞いてもその人が歩んできたキャリアを正当化する形でしかアドバイスできないことってあると思うので、今、ご質問された方への回答としては「この三人が言うことは聞かない方が良い」と言うことはあると思います。(笑)
あと1つあるとすると、ビジネス側からデザインに入るのは結構大変です。なぜなら価値観レベルで相反するところがあると思うからです。私が行ったデザインスクールは、デザイナー半分ビジネスマン半分のような感じでしたが、ビジネス側から来た人で順応に苦労している人がいました。まだ何も分析しないのにみんなでプロトタイピングを作り始めるとか、「いやもうちょっと考えてからやろうよ」とかそう言う感じになってしまうし、リサーチもn数とか関係なくてデザインリサーチみたいにデータじゃなくてストーリーを取りに行くといったようなそう言うところで今までやって来たことが通用しない。なので一回捨てないと学べないみたいな人が多い印象があって、結構大変なんじゃないかと思っています。スキルを身につける手前で価値観レベルで合わない人が結構いたなと言う印象があります。真面目にビジネスをやっていた人は結構大変で、コンサルティングファームから来た人などは苦労してそうな感じがありました。

深津:
体系的に学ぶことが結構大変なんです。
デザインやクリエイティブサイドの人がビジネスを効率よく勉強すると言う意味だと、いきなり全部体系的に学ぶと言うよりは、自分に都合のいいところから使い始めて慣れたらバンバン使うみたいなやり方のほうがいいと思います。

例えば、データ分析でもABテストは、定規や分度技などと一緒で、自分の意思の元に使う画材のように捉えると良いと思います。
画材はあればまっすぐな線が引けくらいの心持ちで使ってみるのが良いのではないでしょうか。
デザインができる人って、あるものを組み合わせて何かをするみたいなことが得意だと思うので、いきなり抽象的なことをやるより、できるところだけいいとこどりしてやっているうちに、なんとなくできるようになるのだと思います。
体系的に学ぶよりはこういったやり方のほうがやりやすいし、自分の強みを生かせるのではないかなと感じています。

松田:
その人にもよると思うんですが、一番早くアウトプットを出せる方向からやっていったほうが良いのではないかと思います。抽象の方に行って具体の方に戻らない期間って結構学びが少なくなるはずなので、デザインから行ってもいいし、テクノロジーから行ってもいいと思うんですが、一番出力の回数を増やせる方向が良いのかなと思っています。

深津:
例えば、ABテストがあるせいで、自分のクリエーションが否定されるようなことは少しネガティブな捉え方ですよね。
やはりそれらは道具だと割り切って、ABテストが流行ったおかげで「自分の作りたいものを2つ勝手に作って納品できるようになったぞ!」くらいの気分でいたほうが良いと思います。
好きなものを2つ作ったから、あとはクライアントが好きなものを選んでくれるみたいな心持ちで。
結局AかBどちらか1個にして、片方が否定されるとか考えてしまうからなかなか難しくなってしまうのだと思います。ABテストなどは、そう言うデザイナーをジャッジするツールじゃなくて、単純にデザイナーのための画材などのツールの一種だと思った方がやりやすいんじゃないかなと思います。

デザイナーの職名(肩書き)とは?


こばかな:
肩書きについて質問です。世の中のデザインの認識が揃っていない問題もありつつ、ビジネスデザイナーやデザインエンジニアなどいろいろありますがどのような組み合わせが最適解でしょうか。CXOは肩書きなので職種ではないけど、experienceはわかりやすい単語なのかなと思いました。肩書きよくわからない問題ですかね。

深津:
noteの場合は、最初に株式会社ピースオブケイク代表の加藤さんから「CXO、CDO、CCOのどれがいいですか?」みたいなざっくりとした感じで、どれでも選んでいいよみたいな話を受けました。
「CXO」を選んだことに深い意味はなく、あえてCDOを選ばなかったのは、Dを選んだ場合、プロダクトに対する色とプロダクトの最高責任者であるところの色がものすごく強くなってしまうと思ったからです。

noteのようなサービスの場合、プロダクトの外側にユーザーさんがいて、コミュニティの設計やそもそもブログやnoteを書くって楽しいよねみたいなand的な設計も含むので、Dよりももう少し幅のある言葉の方が良いなと思ってXを選んだ経緯がありました。
なので明確ではないがゆえに便利で使っていますと言うところがあります。それでも〇〇デザイナーというのが増えすぎていてよくわからないですよね。

松田:
〇〇デザイナーというのも増えるところまで増えたらいいのではと思います。ちなみにTakramだと〇〇デザイナーと名乗ることは自己申告制なので自由に名乗っているんです。

深津:
最終的にデザインデザイナーが増えればと言う風に思っています。(笑)

佐々木:
僕は増やしている一人ですが、ビジネスデザイナーって本当にいい加減だなと言うところがあります。(笑)
何をやっているかを自分で紹介するのはすごく難しいのですが、もともと海外ではデザインストラテジストと言う職業の方がいて、その職種をしばらく名乗っていました。しかし、すごくわかりづらいと言うクレームを社内外から受けまして、それでビジネスデザイナーにしてみました。
そこでわかりやすさと正確性の反比例みたいなところがあって、ふわっとは伝わるけど、結局ビジネスデザイナーが何をやっているかわからないよねと言うところは変わらなかったりします。自分でもビジネスデザイナーとは名乗っているけど、最適解ではないなと思いながら名乗っていますね。

深津:
僕は、デザイナーという言葉より「テクノクラート」を流行らせたかったんですが、全然流行らない。(笑)「デザインクラート」みたいなものを作る方が楽しそうなんですけど。

松田:
それ流行らなさそうですね。(笑)

深津:
テクノクラートはなんて言ったらいいんですかね。
技術技官のような技術エキスパートと言ったような意味だと思うんですけれども。
デザインテクノクラート、あるいはデザインクラートのような言い方が流行ってくれる方がデザイナーよりももう少し輪郭がはっきりしているんじゃないかなと思います。

佐々木:
そうかもしれないですね。面白いですね。

会場からの質問「インクルーシブデザインとは?」

Q:
2018年版の最後の方にインクルーシブデザインが取り上げられていたと思うんですが、その部分についてトップランナーでやられている皆さんにお伺いしたいです。
インクルーシブデザインは最近日本でも出てきた単語かと思うんですが、ネットのアクセスが変わってきたとか中国だと、いまだにネットへのアクセス環境が整っていなかったりなどの例がレポートの中にもありました。
しかし、アメリカのようにそもそも中立ではなくなってきているような、インクルーシブと言ったときにさらに広い意味でいろいろなことを考えないといけないんじゃないかなという状態になってきている気がしています。
テクノロジー的にはWeb分野が急速に発展している中で、これから日本は人口が減っていってプロダクトを作るときに世界のことも考えていく必要があると思います。その際に皆さんはどのような感じでモノを作り、人が使いやすいものづくりをされていくのかなというのを聞かせていただきたいです。
今、AIが進んできてこれから人のことを考えていく部分が専門性として成り立つのか。それともセルフラーニングを担っていくのかという点を今、実際にプロジェクトにされたりしていているのかということを聞いてみたいです。

深津:
僕は少しAIとインクルーシブはまた違うと思っているので、インクルーシブの話からどのようにしましょうか。

佐々木:
ここにもAIとインクルーシブのことが書かれているんですが、ちょっと質問にストレートにお答えできなさそうで先に申し訳ないと思います。
まず、AIを作っている人やアリゴリズムを作っている人が白人男性ばっかりだということは結構前から言われている問題があります。教科学習をするなりアリゴリズムを作るのですが、どうしてもその人の価値観というのが作るものに反映されているということが起きてしまいます。
それがAIのようなすごく影響力の大きいものを作るときには、問題になるのではないかということは言われています。それもあってダイバーシティーというのが大事だということが言われていますね。

この前、マエダさんに教えてもらった面白い話があります。
SNSやSlackなどには、顔アイコンあるじゃないですか?

アイコンを入れるのは普通だと思うんですが、あれが実は差別を助長しているという実験結果があったりします。つまりこれは僕も含めて、男性が無意識のうちにやってしまっていることもあると思います。

実験結果によると、女性はアイコンに女性であるとビジュアルとして表明することによって、無意識的・意識的になんとなく少し下に見られているとか、リクルーティングの場合は男性が選ばれやすいなどそういったバイアスが無意識にあるようです。
そういう意味でインクルーシブを阻害するものは、自分が全くそのつもりがない無意識下で、差別やバイアスをかけてしまっていたというケースもあり得ます。
マジョリティである人が、より自覚的になる必要があるというのがマエダさんのメッセージかなと思います。

深津:
ちなみに前提で確認したいんですが、会場でインクルーシブデザインをそもそもどういう意味だかわからない方いらっしゃいますか?まずその紹介からしましょう。インクルーシブデザインのインクルーシブといえばインクルード、含めるの品詞ですよね。なので、インクルーシブデザインというのはざっくり言えば、色々含んでいるデザインというような意味です。

佐々木:
解説すると、2000年代序盤からイギリスで出てきた考え方です。
ユニバーサルデザインとよく同一視されるんですが、大きな違いが3つあります。1つ目がユニバーサルデザインはガイドラインを守るようなニュアンスで、ある種そのゴールの確認的に使われがちです。
インクルーシブデザインはユニバーサルデザインとは逆で、スタート地点的に使われます。まず一番排除されている人のアスピレーション・願望や思いなどを大事にして、そのインクルーシブデザイン的な考え方をベースにその人のためにサービスやものを作ろうということです。
それからデザインfor One / Extend for Manyのような標語があるんですが、まずその人のために作って、他の人に拡張していくという考え方です。
あとは障がい者の定義も様々ですが、身体的な障がいだけでなく、ネットが繋がらないなどの社会的障がい者のために作られているものもあります。

深津:
Googleなどはこのような問題を解決するインクルーシブデザインとして、アフリカで飛行機・気球をあげたり、インドでは汽車の上にWi-Fiを搭載したりしていますね。

佐々木:
外国に行って、言葉がわからないというのも社会的障がいの一つということですね。

深津:
インクルーシブデザインというのは、こぼれ落ちないデザイン。人がこぼれ落ちないデザインみたいなことですね。

佐々木:
人をセーフティネット的に救うという側面もありつつ、逆にその人を中心にしてものを作っていこうということですね。
あとはしたたかな側面もあって、TAM(Total Addressable Market)リーチ可能なビジネスのマーケットが、インクルーシブデザインをすることで広がるだろうということですね。ビジネス的な利益にも繋がると。

深津:
Design in Tech Reportにおけるジョン・マエダさんのメッセージの一つとして「デザインはお金になる」というものがあります。
インクルーシブデザインはビジネス的な市場拡大のために有効であるということです。
そのメッセージは、合理的に動く企業やグローバルカンパニーにとっては一番ささるので、インクルーシブデザインをそういった企業に働きかければ、他のみんなもインクルーシブデザインをやるよねという風になりますよね。

佐々木:
マイクロソフト・IBM・Airbnbもインクルーシブデザインのガイドラインを出しましたね。業界のトップランナーたちがこれに目をつけて、これをベースにビジネス的な仕組みを作り始めています。

深津:
なぜインクルーシブデザインがビジネスに繋がるのかっていうと、要はそこがこぼれ落ちた市場だからということです。
アフリカの人がみんなインターネットアクセスできないということは、彼らがインターネットにアクセスできればすごく広告などのビジネスがスケールするということでFacebookとGoogleが無線Wi-Fi提供競争をしていたりというのがインクルーシブ社会です。ビジネスにつながれば、勝手に社会が良くなるというデザイン設計なのかなと理解しています。
僕は基本的にはインクルーシブデザインに賛成なんですが、インクルーシブデザインのなかで少し自分の中で答えが出てないというかよくわからないところがあります。
インクルーシブデザインというのは結局、究極的には個々のサービスが全員達成しなければいけないものなのかというところに自分は割と疑問があるんです。

2つ理由があって、1つは体力の問題。GoogleやFacebookはインクルーシブデザインできるかもしれませんが、社員5人の小さなスタートアップの会社だと「インクルーシブデザインやるべきなの?」みたいな。インクルーシブデザインを道義的にはやるべきなんだけど、やっていて会社の資金がショートしちゃったり、会社がスケールしなくなってしまった時にそれでもインクルーシブデザインはやらなければいけない責務なのか、それとも最初はごめんなさいしてても10年かけて大きな会社になってそれからやればいいのかみたいに、体力的な部分でどこまでインクルーシブデザインをやるべきなのかということです。
2つ目は「総体としてインクルーシブデザインが達成できていればいいのかどうか?」ということです。これはまだあまり議論されていない価値観だと思うんですけれども、社会がインクルーシブデザイン、要はみんながこぼれ落ちないというものが必要とした時に、SNSなどのあるべき姿が問われると思うんです。例えば、目の見える人用の電子リーダーがあって、目の見えない人用の電子リーダーがあるとします。あった時に目の見える人に最適化された電子リーダーと目の見えない人に最適化された電子リーダーが1台ずつある方が実は幸せなのではないか。目の見える人も目の見えない人も使える中途半端な電子リーダー1個でインクルーシブデザインですというのは本当に正しい答えなのか。それとも総体として達成されていればそれぞれ特化している方がみんな幸せなんじゃないかというようなことですね。

個別にはインクルーシブではないが、総体としてはインクルーシブが達成されると言った場合はどうなんだろうという。今の社会の雰囲気でいうと、全部でそれぞれインクルーシブであるというのがなんとなく時代の雰囲気なのかなと思っています。
僕だけではあまり答えが出ていないので、そこがどうなっていくのかがすごく知りたいです。

松田:
身体的なところだと設計的にインターフェイスの裏側が同じように動きそうな気がします。そっちの方がサービスのモデルとして収益性が高いのであればそっちに動いて全然問題ないのではないかなと思いました。

深津:
あとはわかりやすい例でいうとトイレなどもそうですよね。
トイレをインクルーシブデザインにしていいんだっけみたいな。男の子用トイレと女の子用トイレ、あるいはLGBT用トイレの3つある方が、男の子も女の子も LGBTも全員が入れるトイレが1個あるよりも幸せなのではないかとか。
それはLGBTも1個にまとめるのも悪いから、最終的に5個くらいの様々なトイレになるのが幸せなのか。
どういう風にまとめられるのがみんなにとって1番幸せなのかは、もっと議論された方がいいのかなと思います。

松田:
それは面白い思考実験ですね。

佐々木:
今、インクルーシブデザインを提唱している企業は、大きい企業ばっかりですよね。IBM・マイクロソフト・Facebook。先ほどTAMの話をしたんですが、要は自分たちがアドレスできるマーケットはほぼ抑え切りつつある企業が言いはじめているということが象徴的かなと思っています。なので TAMを広げるしかないという観点でインクルーシブを狙いに行くというところ。そういうビジネス的な判断が多いにあるのではないかなと思います。

深津:
AIは学習ソースに縛られるから先ほど言ったように、特定の自分のことをBとかCとか言い出したり、特定の民族、特定の文化に染まるみたいなことはデータのサンプル次第では全然起きうることだと思うので、今後、ここはAIのソースで頑張るみたいなことが必要になってくるでしょうね。

デザイナーに求められているライティングとは?

Q:
ライティングの重要度が将来のデザイナーに重要になってきているとありました。
それがなぜ重要なのかをもう少し深掘りして教えていただきたいです。

深津:
端的にいうのであれば、写真は強いんだが、写真だけだと統一したメッセージが届かないからなのではないかと思います。メッセージをコントロールするところを総合的にするとしたら文字も一緒にやらなければいけないというところでのライティングかなと。

佐々木:
これは実務からの実感としてなんですが、日々Takramでは新しいコンセプトを作る仕事をしているんですけれども、言葉を作る力ってすごく大事になってきているのは日々感じます。

その理由は2つあって、1つは今起きているトレンドなどの挙手的な話と、足元の話があると思います。
これから新しいものを作って行くという前提においては、今までにない言葉でまとめるすごい造語力が大事になってきていると思います。これはリサーチの見過ごされたポイントでもあると思うんですが、分析して何かわかった時に、それに自分なりにタグやラベリングをつけることでプロジェクトがドライブされることがすごく多いなと実感としてあります。

もう1つは新しいコンセプトを作る時に、「これがコンセプトです」と明確に伝えられることです。
先ほど深津さんもおっしゃっていたように写真だけでなく、それが何を意味しているのかということを言葉で示すことで、その言葉がある種、先導役になってチームや人、組織を引っ張って行くと思います。
なので私たちも言葉をたくさん作ってます。

松田:
似た観点だと思うんですが、Takramのロンドンのディレクターのマイルズの場合、移動中に10分くらいで書いた言葉がプロジェクトとして3ヶ月くらいで実現していくみたいなことがあるんです。そういう能力を持っている人は少ないと思います。
クライアントのイメージしている要望を出力する時に、一番早いのは言葉だと思っています。それは例えばプロトタイプを作ることでコンセプトはこうなんですというより具体的に伝えることができるんですが、それは作り手側と作ったものの成果という両方を記述するのが言葉なので速度という観点からもライティングは必要になってくるかなと思います。

まとめ

深津:
今日はDesign in Tech Report 2018の全体の中で、特に1番大きなメッセージだったクラシックデザインという今までのデザインとデザイン思考、あとコンピュテーショナルデザインという新しく生まれた軸の中で変化するのかオーバーレイするのか拡張するのか。必要とされるスキルがどんどん変わってきている。あるいは横断的になってきているという中で「僕らはどんな風に生きていけばいいんでしょうか?」と言ったことがメインのテーマでした。

そこの拡張の話として、インクルーシブデザインの話なども出たんですが、自分個人としてはやはり何かやろうとしたらば、今までここ5年でずっと見てて変わっている人と変わっていない人を見比べて思ったこととして、変わっている人は、わからないなりにとりあえず手を出して痛い目に遭っていても2、3回チャレンジするということをしてきていると思いました。
ルールや環境がどう変わろうがとりあえず、なにか自分の得意な仕様にこもるのではなくて、1日でもいいから訳のわからないものに手を出して、そのTakramさんが言っていた1個の点に対して第2の点を作ってとりあえずエッジを作るというところをいろいろとやってみる。

そのエッジがどこかということはそれぞれ人によって違っていて良いと思いますし、それが最後組み合わされば3人4人揃えば3角形や5角形になってくると思います。ですので、そういうことをやって行くと良いのじゃないかと個人的に思いますし、自分もやっていかなければいけないなと思っています。

松田:
別の分野に移動する時にはテクニックがあるはずです。それが今Takramでやっているところで片方で成功しながら片方で失敗するみたいな。それで短距離で成功まで行くというよりかは長距離で長いことチャレンジできるような仕組みでやって行くことが働き方というか2つ目の位置を作る意味では結構重要なのかなと思いますというのが僕のメッセージです。

佐々木:
Design in Tech Report 2015年版を初めて見たときから「これはすごく広まる価値があるレポートだ」と思ったこともあって、2018年版から翻訳をしています。
日本語においても英語でされているくらいの同じような議論が広がるといいなと思って翻訳版も作りましたたし、Podcastも収録してきました。なので、今回このような形でイベントができたことを個人的に嬉しく思っています。

今日機会をいただいた深津さんとスポンサーのDMMの方にすごく「ありがとう」と言いたいです。ありがとうございました。
それと、マエダさんと先日Podcastを収録したんですけれども、Design in Tech Report 2018を見ていてもわかるんですが2018年版が総集編みたいな感じなんですね。この前お話ししたらもう疲れたからやりたくないと言ったことをお話しされていて、「2019年版も制作してほしい」というメッセージは僕の方からも伝えたんですが、皆様ももしマエダさんとやり取りする機会があれば、「もう来年も楽しみにしてるよ」のようなメッセージをぜひ発していただければと思います。(笑)

深津:
最後に2個お願いがあります。
1個はこのDesign in Tech Reportにもあるようにデザイナーがこれから更に複合的になっていくということと合わせて、これからもっと経営にコミットしていけるようにならないととか、ビジネスにコミットしていけるようにならないとというのがあります。
最近だとTakramの田川さんも参加されている研究会が特許庁さんと一緒に発表した「デザイン経営」宣言のように、やはりデザイナーが更にどうやってビジネスやサービスを作る時に貢献して行くかというところでこれからもっと議論が深まっていくといいなと思っています。
今回の勉強会のハッシュタグもそうですし、noteなどを使って長文を書いてくれる方がいたらすごく嬉しいとは思うんですが、そういう書ける方がいたらぜひもっと自分の意見とか考えを書いてくださったり、職場の中でもトークして見たりとか偉い人とランチする時に、そういうことを話してみたり色々な人がDesign in Tech Reportや「デザイン経営」宣言のことを話し合って、「僕たちはどういうことをやっていけばいいのだろう」ということをどんどんと意見交換していけたら良いと思います。ぜひチャレンジしてみてください。


過去3回にわたって、「Design in Tech Report 2018 を読み解く」#02 THE GUILD勉強会の内容をお届けしました。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

更に多様になっている現代社会で、デザインの捉えられ方が変化し、デザインが世の中に与えていく影響も更に大きくなっています。この記事を読んでくださったあなたも私たちと一緒にデザインを通して、いろいろなことに挑戦して、より良い世の中をデザインしていきましょう!
以上、「Design in Tech Report 2018 を読み解く」#02 THE GUILD勉強会 書き起こしレポートでした!

「Design in Tech Report 2018 を読み解く」#02 THE GUILD勉強会 書き起こしレポート(前編)

「Design in Tech Report 2018 を読み解く」#02 THE GUILD勉強会 書き起こしレポート(中編)

ABOUTこの記事をかいた人

Daichi

福岡県出身。23歳。米国大学から英国の大学に転校後、今秋から再び、米国ペンシルベニア州立大学に編入予定で、ビジネス(マーケティング)とホスピタリティーを学びます!
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