Baltoインタビュー vol. 1

KDDI株式会社
バリュー事業本部
新規ビジネス推進本部 担当部長
岡 昌樹さん

KDDI株式会社では、2017年2月にリニューアルした『auサービスTOP』アプリの開発でProttBaltoを活用していただいています。今回は、両サービスをどのように活用したのか伺ってきました。

「とりあえずauサービスTOP」を目指して始まったリニューアルプロジェクト

 まずバリュー事業本部のUI/UXの改善プロセスは、コンセプトの設計、ソリューションの設計、リリース・計測・改善という3つのステップに分かれています。ガラケーの時代は携帯を開き、EZwebボタンを押せばKDDIのサービスにすぐ辿り着ける接点を持っていたのですが時代がスマートフォンに移行していくにつれて、スマホのホーム画面がユーザーの起点となり、ユーザーにより選ばれるサービスを作っていく事が以前にも増して、大切になりました。

ユーザーに選んで頂くためにはユーザーインタビューを通して、本質的なユーザーのニーズを把握する。そこで出た課題をデザインに落とし込み、デザインマネジメントをしてリリースするプロセスに変えていっている段階です。大きな組織の中でHCD(Human Centered Design)のプロセスを導入しながら進めたことが、今回の新たな試みだったかな、と思っています。

——今回のリニューアルはどのような経緯で行われたのでしょうか?

 『auサービスTOP』はもともと、1,500万人以上に使われている『auスマートパス』というサービスのアプリだったんです。それを2016年4月に『auスマートパス』、『auサービスTOP』の2つに分離したことで誕生したアプリになっています。

その経緯に関しては、当時、『auスマートパス』はクーポンや会員特典コンテンツのほかに、ニュースなども見られるアプリになっていたのですが、会員特典情報が目的のユーザーと、ニュースが目的のユーザーとの動線や情報ががごちゃごちゃになってしまっていたんです。

そうした状況を踏まえ、きちんとユーザーごとに最適なコンテンツを届けられるようにしよう、ということで会員特典が得られる『auスマートパス』、ニュースなどが見られる『auサービスTOP』という2つのアプリに分離することにしました。

そうして、『auサービスTOP』になってから約1年くらい運用を続けていたのですが、『auスマートパス』は会員特典が強力なコンテンツになっていたこともあり、分離してからはMAUやDAUの成長が鈍化していく状態が続いていて……。そこをもう一度立て直そう、と。

当時はポイントガチャやニュースがメインに表示されていて、その下にauのオススメコンテンツを編集して掲載していたのですが、全然見られていなくて。auのサービスを届けたいのに、ユーザーに届いていない状況にあったので、そこをいかに見てもらえる状態にするか。『auサービスTOP』はアイコンからも分かるように、「auの各コンテンツへの入り口」というコンセプトを実現するべく、リニューアルを進めていくことにしました。

——どのような体制でリニューアルを進めていったのでしょうか?

 『auサービスTOP』は各部を横断して物事を進めなければいけなかったので、本部長をプロジェクトオーナーに据えることで、社内の調整事を早く進めていけるようにしました。

その下に、UX統括責任者である自分と企画メンバーが3〜4人、システムディレクションのメンバー2人、開発・デザインは他社のパートナーにお願いする、という体制で進めていきました。

プロジェクトを進めていくにあたって、個人的にリニューアルと名のつくプロジェクトは失敗するものだと思っていまして(笑)。このプロジェクトに関しては、何も考えずに『auサービスTOP』を立ち上げるようになってほしいと思い、“とりあえずauサービスTOP”というプロジェクト名にし、全メンバーに認識を徹底させていきました。

ユーザーインタビュー→UI改善を徹底的に繰り返す

——リニューアルはどのように進めていったのでしょうか?

 まずは定性的なユーザーの行動観察とユーザーインタビューをやりました。そこで行ったことはシンプルで、日々の使い方を再現してもらう。これを徹底的に行い、サービスを使う理由、コンテンツをどのように見ているのかどうかを探っていきました。

実際にユーザーのインタビュー・行動観察をやっていて面白かったのは、au WALLETのプリペイドカードの残高表示機能を残すかどうかです。ユーザーインタビュー前は、あまりクリックされていなかったので、機能から削除していいのかなと思っていたのですが、ユーザーインタビューをしてみたら使い方がイメージしたものとは違っていて。

コンビニなどで支払いをするときにプリペイドカードの残高が足りていないと恥ずかしいから、タップはしないけど残高機能で確認できないと困る、というユーザーが想像以上に多くいました。最初のデザインプロトタイプでは機能として落としたのですが、ユーザーインタビューを行ってから復活させました。

このように今ある使い方を観察した後、今度はProttで新しいUIを見てもらい、同じ行動ができるかどうかを再現してもらいました。とにかく探せないものがないか、普段の行動ができなくなるものがないかを確認しました。ほとんどのプロトタイプをユーザーに見せながら、確認を進めました。

——事前に何パターンも用意してテストしたのか、それともフェーズごとに回数を重ねていったのか、どちらでしょうか?

 パターンは1種類だけです。それを数十人のヘビーユーザーに使ってもらい、リリースの1カ月前くらいにはベータ版でのユーザーテストも行っています。

——開発・デザインを外部の他社パートナーにお願いしているということで、デザインリサーチからプロトタイピング検証をセッティングするのは大変だと思うのですが、そこはどのように進めていったのでしょうか?

 最初から「ユーザーテストやります」というのを伝えていました。そもそも、ユーザーがコアに感じている体験を提供できなくなっていたら、リリースしないという話をし、ユーザーに受け入れてもらうのためにはリサーチもするし、ユーザーテストもする、ということは理解してもらっていました。実際にユーザーテストのとき、他者パートナーに来てもらって、その場で意思決定を行っていました。

——その場で判断していく感じだったんですね。

 そうですね。デザインレビュー自体もProttで行なっていて、いろんな画面があがってくる度にProttにあげてもらい、コメントをつけてフィードバックする。それを永遠に繰り返していましたね。

Baltoによって芽生え始めた、フィードバック文化

——実際にアプリを拝見していて、ローディングのアニメーションなど、インタラクションにもこだわっているなど感じたのですが、開発に入ってからはどのように進めていったのでしょうか?

 開発に入ってからは、2週間くらいに1回、最後の方は3日に1回くらいの頻度でデプロイしながら、Baltoでフィードバックすることを徹底的にやっていましたね。Baltoがちょうど正式リリースを迎えるタイミングで利用していたため、β版のサービスが止まってしまった時には泣きそうになりました(笑)。

グッドパッチメンバー 大変申し訳ありませんでした・・!(笑)

岡 リリースの2週間前にUIはいじらない、機能は追加しないという意思決定をして、そこからはパフォーマンスのチューニングを行いました。例えば、スピナーの出すタイミングまで細かく指示したのですが、やっぱりスクリーンショットや動画と合わせてフィードバックできるBaltoがないとイメージが全然伝わらなかったですね……。ベータ版が終了したときに、改めてBaltoの存在の大きさを知りました。

——もともとフィードバックの文化はあったのでしょうか?

岡 それまではフィードバックはExcelかRedmineで行っていたので、フィードバックをするにもスクショを撮って、PCに送って、それをRedmineに貼り付けて……と、一苦労だったんですよ。それ故にフィードバックも口頭になっていましたし。そういう意味では、フィードバック文化はなかったですね。Baltoを導入することでフィードバックすることがラクになったし、ライトなものになったな、と思います。

最初はProttも苦手な人は使っていなかったんですけど、自分はPCでスマホサービスを見るのが嫌で、同じ画像解像度で見ないとデザインレビューにならないと思っていることもあって、「Prott以外では見ません」と言った結果、みんな使い始めるようになりましたね。

Prott-screen

(↑実際のProttの画面)

——プロトタイプから開発のフェーズに移っていく中で、Baltoを使い始めていただいたと思うのですが、きっかけを教えていただけますか?

 フィードバックが面倒くさいと思っていた中、御社のPrott2周年イベントでBaltoの存在を知って、次の週には「これを使いたい」と言って、導入することになりました。

——そうだったんですね。プロジェクトの中だと、どのようなタイミングで使い始めましたか?

 ニュースをざっと見れるようになった機能が出てきた後くらいから使い始めたので、開発の真ん中より少し手前だったと思います。今となっては最初から使いたいですね。

——どのようなところに一番価値を感じましたか?

 実機で出来るのは、すごく良いですね。自分はWi-Fiではなく4Gの状態で使う、寝る前に使うなど、すごくリアルなシチュエーションで使うようにしていて、そういう意味では気になったところがあったら実機ですぐフィードバックできる。開発者目線ではなく、ユーザー目線になれるのは良いですね。またアイデアを生む、という意味でも役に立っているな、と思います。

Balto-screen

(↑実際のBaltoの画面)

——プロセスにもこだわって開発されたと思うのですが、リリース後のユーザーの反応はいかがでしたか?

 おかげさまでiOSはユーザーレビューが良くなっていまして、評価の数がすごく増えたんですよ。もちろん、多少は以前の方が良いと言う人もいるのですが、それでも「見やすくなった」「使いやすくなった」という声はありますし、数値的にも滞在時間が伸びたり、クリック数も増えたりしています。

——最後に、今後の展望がありましたらお願いします。

 今回は自分が全体設計をやってしまった部分があったので、プロセスは一人の力ではなく多くの力を使いたいな、と思っています。一人のアイデアから発散するものよりも、複数人で考えたアイデアをどう活かすか、はチャレンジしていきたいです。

サービスについては、今後も引き続き、“とりあえずauサービスTOP”を目指していきます。そのためには、「そこに行けば何かある」と思ってもらえるように、人それぞれに適切なコンテンツの出し分けなどを行っていきたいですね。