ユーザーの本質的ニーズに辿り着くために必要な3つの視点とは?

サービスデザインに関わっている方は、ユーザーの本質的ニーズを知るためにどの様な方法を取っていますか?

今回は「ユーザーの本質的ニーズに辿り着くために必要な3つの視点」をテーマにお話させて頂きます。

結論、3つの視点とはユーザーモデリングの3階層である属性層と行為層と価値層のことであり、この3つの視点を意識して分析することでユーザーの本質的ニーズに辿り着くことができます。

(属性層)がどんな体験(行為層)をすることでどういう価値(価値層)を得ているか、の視点で分析することで、ユーザーの利用文脈をより深く理解できるようになります。属性層、行為層、価値層の順番で分析していき、最後の価値層まで分析できれば、それはつまりユーザーの本質的ニーズに辿り着いているということになります。

では、詳しく説明していきます。

ユーザーモデリングとは?

ユーザーモデリングとは、ユーザーの課題や価値観を分析をするために、ユーザー調査結果のデータをモデル化(構造化)するフェーズになります。
ここで、各種デザインプロセスにおけるユーザーモデリングフェーズの位置付けを見ていきましょう。

ISO 9241-210

「利用の状況の把握と明示」あたりがユーザーモデリングのフェーズになります。

参考:HCDのプロセスと手法

UX5階層モデル

「戦略」の「ユーザーの需要(ニーズ)」がユーザーモデリングのフェーズになります。


参考:ユーザーエクスペリエンスの要素(Jesse James Garrett)

d.schoolのデザインプロセス

「EMPATHIZE」と「DEFINE」あたりがユーザーモデリングのフェーズになります。


参考:d.school

デザインスプリント

「理解」がユーザーモデリングのフェーズになります。

参考:Goodpatch Blog


上でご紹介した各種プロセスを見てもわかる通り、ユーザーモデリングのフェーズはプロセスの初期フェーズにおいて非常に重要なフェーズであり、十分な分析ができていないと後のフェーズが意味のないものになってしまう可能性があります。そうならないためにも、正しくユーザーモデリングを進めていく必要があります。

ユーザーモデリングの3階層について

以下、ユーザーモデリングの3階層における概念図になります。

参考:UXデザインの理論・プロセス・手法の体系とポイント | 安藤 昌也

属性層、行為層、価値層からなる階層構造を持っています。冒頭でも述べましたが、誰(属性層)がどんな体験(行為層)をすることでどういう価値(価値層)を得ているかという全体像を可視化することで、ユーザーに対する深い理解を得られるようになります。分析する上で必要なインプットがあり、分析結果としてのアウトプットが存在します。

分析する上で必要なインプットとは、ユーザーリサーチのフェーズで得られる情報になります。Goodpatchでは、アンケート、半構造化インタビュー、コンテクスチュアル・インクワイアリー、AIm法などの手法でユーザーリサーチを行うことが多くなっています。

では、各階層について順番に説明していきます。

属性層

ユーザーの属性を表したもので、ペルソナをイメージすればすぐ理解できるかと思います。

ここでは、ペルソナ法を用いてペルソナを作成することを目標にするとよいと思います。ペルソナは少なくともメインペルソナとサブペルソナの2つは用意することをおすすめします。Goodpatchでは、2つの軸を定めてユーザーを4象限に分類し、その中から3から4のペルソナを用意することが多いです。

Goodpatchで作成するペルソナのフォーマット例

次に、ペルソナごとの行為層を明らかにしていく流れになります。

行為層

属性層で明らかになったペルソナごとに、対象となる製品やサービスの利用文脈を明らかにするものになります。行為を時間軸に沿って表すことが多く、カスタマージャーニーマップ(AsIs)をイメージすればこちらもすぐ理解できるかと思います。

ここでは、カスタマージャーニーマップ(AsIs)を完成させることを目標にするとよいと思います。時系列に沿って表す必要があるため、リサーチフェーズでは過去から現在までを振り返るようなインタビュー設計ができることが望ましいです。Goodpatchでは、各プロジェクトごとに様々なカスタマージャーニーマップを作成していますが、一般的には、「プロセス」「タッチポイント」「行動内容」「ユーザー課題」「感情曲線」といった項目で分析できれば良いかと思います。

Goodpatchで作成するカスタマージャーニーマップのフォーマット例

AsIsのカスタマージャーニーマップからは、主に現状の利用文脈における課題が抽出されることになります。ここで抽出された課題に対して解決策を検討しても良いですが、ユーザーの言っていることに応えただけ、顕在化しているニーズに応えただけになります。それでも十分ユーザーの課題を解決策しているので製品・サービスとしては改善することになりますが、本質的なニーズを捉えてユーザーが想像もしていなかった新たな体験を生み出すことがUXデザイナーの使命であり、目指すところであると私は考えています。

それでは、最後に本質的ニーズを分析する価値層について見ていきましょう。

価値層

ペルソナやカスタマージャーニーマップという手法がかなり一般的になったため、属性層と行為層は比較的意識できていると思いますが、重要なのはそれらの先にある価値層と言えます。価値層とは、ユーザーがその行為に対して抱いている価値観を表す層になります。ユーザーは普段、行為に対して「こういう価値があるから行動しています」とハッキリ言えるほど言語化できていないことが多く、その行為の背景にある価値を我々専門家が分析することでよりユーザーを深く理解できるようになります。

価値を抽出する手法としては、KA法(価値分析法)や上位・下位分析法といったものがあります。基本的な考え方としては、その行為に対して「なぜそうしよう、したいと思ったのか?」をラダーアップしていくことにより、本質的ニーズを分析する考え方になります。

私がプロジェクトを進める場合は、KA法による価値マップを作成することを目標に進めます。ここで、実際の案件で作成した価値マップを紹介しますとこちらのようなものになります。

実例:KA法による価値マップ(詳細はお見せできませんが、このようなものになります)

黄色のカードには「出来事」「ユーザーの心の声」「背景にある価値」が記載されています。ユーザーリサーチフェーズや、これまでのユーザーモデリングフェーズでのアウトプットから情報(出来事)を断片化し、それぞれに対して心の声と背景にある価値を記載してくことになります。
黄色のカードをKJ法で分類し、それぞれのグループに対しての価値を赤いカードに記載します。
最後に赤のカード同士のつながりや関係性を分析することになります。この実例では、対象ペルソナ3人分の価値がマッピングされています。

これにより、ユーザーが本質的に求めている価値をその関係性も含めて俯瞰して確認することができます。より多くの数の価値を感じられているユーザーはLTV(Life Time Value)も長く、その製品・サービスに満足していると言えるでしょう。0→1の案件の場合は、これらの価値を提供するためのアイデア(コンテンツ)を発想していくことになります。リニューアル案件の場合は、これらの価値が現在正しい手段(コンテンツ)で提供できているかといった視点でコンテンツの整理を進めていくことになります。また、デザイン方向性の提案時にはこれら価値をキーワードとしてデザイン提案していくことになります。この先のフェーズを進める上で非常な重要なプロセスと言えます。

なぜ価値層が大事なのか?ということに繰り返しになりますが答えておきますと、価値層=本質的ニーズであり、こういう価値を提供するためにはどういう手段があるだろうかとアイデア発想することで、ユーザーが想像もしていなかった新たな体験を生み出すことが可能になります。行為層までの分析ですと、やはり目に見えている課題に対しての解決策までになりやすいので、ぜひ価値層まで分析することをおすすめします。

まとめ

今回ご紹介したユーザーモデリングの3階層を意識し価値層を明らかにすることで、ユーザーの本質的ニーズを知ることができるようになります。
その本質的ニーズに応えるためにはどういう体験が提供できれば良いのか、という視点で製品・サービスを提供することができれば、世の中により良いものが増えていくでしょう。
みなさんもユーザーを分析する際は、ユーザーモデリングの3階層を意識してみてはいかがでしょうか。

最後に、Goodpatchでは企業のデザインパートナーとして、サービス設計の根本からユーザーが実際に利用するものを届けるところまで関わらさせていただいています。ご興味ある企業様は、お気軽に弊社までお声がけいただけますと幸いです。

ABOUTこの記事をかいた人

北村 篤志

2016年3月Goodpatchにジョイン。マネージャーとして組織デザインに取り組みつつ、自らもUXデザイナーとして様々なプロジェクトに携わる。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。